『合魂‼』第3話 【創作大賞2024・漫画原作部門応募作】
「なんすかこれ⁉」「これは⁉」「何事だし⁉」「どういうことだ⁉」
4人の声が重なる。一呼吸おいて姫乃が答える。
「……グループ通話だ。一斉に喋られても困る……が、貴様らの疑問は分かる。一体どういう状況なのかということだろう?」
「は、はい!」
「昨夕の体育館での合魂で貴様らの魂力がそれなりに高いことが分かった」
「そ、それが何か?」
「魂力を探知・調査する方法はいくつかある……経緯までは分からないが、貴様らの魂力は既にこの学園都市に大体知れ渡っている。よって、貴様らは標的になった」
「ひょ、標的⁉」
「何をごちゃごちゃと話してやがる!」
「どわっ⁉」
男子が再び斬りかかってきたため、超慈は慌ててかわしながら尋ねる。
「なんでそうなるんですか⁉」
「相手の魂力を吸収し、自己の魂力を高めるためだ」
「ええっ⁉」
「『合魂部』の入部説明会を勝ち抜いた貴様らは恰好の的だ」
「ま、まだ入部するって決めたわけじゃないですよ!」
「それはもはや大した問題ではない。魂力を高め、魂道具を発現させた時点で、奴らにとっては無視出来ない存在になっている」
「奴らって⁉」
「例えば……今貴様らを襲っている連中だ」
「おらっ!」
「ぐっ⁉」
別方向から別の男子が斬りかかってきたが、超慈はこれもなんとかかわす。
「ちっ!」
「増えた⁉ 一人じゃないのか⁉」
「……見たところ、奴の配下どものようだな」
「はい⁉」
「使っている魂道具は……ふむ、『魂火煮弁刀(こんびにべんとう)』か……」
「ええっ⁉」
「なるほど、ちょうど昼食時だな……」
「ま、待って下さい!」
「なんだ?」
「も、もしかして部長さん、見える場所にいらっしゃいます?」
「まあ、貴様らをそこに誘導したようなものだからな……」
「ど、どこにいるんですか⁉」
「ばっちり見える場所……とだけ言っておこうか」
「そ、そんな⁉」
「ほら、よそ見をしている場合じゃないぞ」
「⁉ うおっと⁉」
また別の方向から男子が斬りかかってくる。超慈はこれもかわす。
「避ける一方ではどうしようもないぞ」
「し、しかし!」
「今、貴様らは一つの岐路に立っている……このまま訳も分からず、そいつらに魂力を吸い取られるか、それとも合魂部に入部し、魂力の高みを極めるか……さあ、前者と後者、どっちを選ぶ?」
「そ、そんなの決まっているでしょう!」
姫乃の問いかけに4人が揃って答える。
「前者だ!」「「「後者!」」」
「⁉ あ、あれ⁉」
「……優月超慈、貴様だけ違うようだが……?」
「い、いや、後者です! あの、あれです、前後逆だったんです!」
「なんだそれは……まあいい、全員、高みを極めるつもりがあるのだな」
「は、はい!」
「うむ! その意気やよし!」
4人の返答に姫乃は満足気に頷く。超慈が小声で呟く。
「正直意味分からねえけど……」
「言ったそばからよそ見をするな」
「! よっと!」
「反応が良いな……」
超慈の様子を見て、姫乃は感心したように呟く。超慈が声を上げる。
「き、気のせいか敵が多くなっているような!」
「気のせいではない。広場中が敵だと思え」
「ぶ、部長、見てないで加勢して下さいよ!」
「……ゲームの序盤から強キャラを使用出来たら興醒めだろう」
「じ、自分のことを強キャラ扱いっすか……って、序盤⁉」
「そうだ、これはいわば操作方法を確認するチュートリアルだ」
「チュ、チュートリアル⁉」
「ただし! 敵キャラはガチでくるチュートリアルだ」
「それってチュートリアルって言わないでしょう⁉」
超慈が再び声を上げる。姫乃が淡々と話す。
「防戦一方だな、そろそろ仕掛けろ。今この広場は合魂のバトルフィールドと化している。周囲からは見えんし、一般人は迷い込んでこない、その点は安心しろ」
「そ、それもそうなんですが!」
「うん? まだなにかあるか?」
「魂道具の発現方法が分からないのですが!」
「なんだ、そんなことか」
「そんなって! 大事なことですよ!」
「集中力を研ぎ澄まし、自身のイメージを膨らませろ……」
「集中力……イメージ……」
超慈は姫乃の言葉を反芻する。姫乃が声を上げる。
「そして思いのままに叫ぶのだ!」
「魂~道~具!」「よっ!」「はっ!」「ふん……」
「あ、あれ……?」
超慈は周囲の様子を見て首を捻る。姫乃は笑いをこらえながら話す。
「べ、別にそこまで叫ぶ必要はないぞ、こ、魂~道~具!って……」
「ええっ⁉」
超慈の顔が真っ赤になる。
「と、とにかく4人とも発現には成功したな……」
「え? うおっ!」
「周囲を確認している余裕はないぞ! まずは自らに迫ってくる相手を倒せ!」
「くっ!」
「一人ではかわされる! 同時にかかれ!」
周囲の男子からはそのような声が聞こえてきて、超慈に向かって二人同時に斬りかかってきたが、超慈は二本の刀で受け止める。姫乃が感心する。
「優月超慈、魂道具は『魂択刀』。外見からすると少々意外だが、運動能力がそれなりに高く、なおかつセンスもある。細身ながらもあの力強さ……それぞれ片手で一人ずつの攻撃を受け止めている……興味深いな」
「ぐぐ……えい!」
超慈は二人同時の攻撃を鍔迫り合いの末、弾き返してみせる。姫乃が頷く。
「昨夕も体格で勝る相手のパワーある攻撃を耐えきったからな……これは思っているより違うロールかもしれん……」
「せい!」
「どはっ!」
「がはっ!」
「お持ち還りだ!」
反撃に出た超慈が襲ってきた男子たちの魂力を吸い取る。姫乃が告げる。
「まずはお見事……ただ、まだ敵は大勢いるぞ。気を抜かないように」
「は、はい!」
「さて、他の三人だが……紅一点、鬼龍瑠衣、魂道具は……」
姫乃が見たところ、瑠衣は白く光る小刀を構えて相手と向かい合っている。
「はっ!」
「あれは……『魂白刀(こんぱくとう)』か、応用形ではあるが、まさか小刀とはな……あれではリーチの面で大分不利になりそうだが……!」
「!」
「きゃ!」
「わっ!」
瑠衣は素早い動きで相手の懐に入り込み、次々と相手の魂を吸い取っていく。
「なるほど……多少のリーチの不利はスピードと体術で補うと……本人はどうも忍べているつもりのようで全然忍べてないのが気になるが……まあ、それは良い」
「はっ! はっ!」
「ヒット&アウェイ戦法が取れるな……トリッキーな役回りかと思ったが、案外違う形で戦わせるのも面白いかもしれん」
姫乃は納得したように頷くと他の2人に目を向ける。
「礼沢亜門、魂道具は……」
「はっ!」
亜門は刃先が長くしなった独特な形状の刀を振るい、周囲の敵を薙ぎ払う。
「あれは……『魂旋刀(こんせんとう)』か。蛇腹剣のような形状をしているな、あれならばある程度離れた相手に対しても有効な攻撃を出来るか……」
「それっ!」
「ぎゃあ!」
「ぐはっ!」
亜門が刀を操作すると、長く伸びていた刃が一気に縮み、巻き込まれる形となった者たちの魂が吸い取られていく。姫乃が感心する。
「なるほど、刃の伸縮が自由自在か。これは厄介だな……。しかし、コンセントということは……まあ、それは後でも良い。最後は……」
姫乃は残った1人に視線を移す。
「うおおっ!」
「威勢が良いな、外國仁、魂道具は……」
仁は先端部分が黄色く太くなっている二本の棒を手元で器用にくるくると回して、相手を翻弄している。
「うむ? あれは……新体操で使う『魂棒(こんぼう)』か。あいつは体格的になにかスポーツでもやっているとは思ったが、新体操とは……意外だったな」
「ほっ! ほっ!」
「ぐえっ!」
「どはっ!」
仁は体勢を低くして、棒を上に投げ飛ばす。思わぬ攻撃を喰らった者たちの魂が次々と吸い取られていく。姫乃が頷く。
「相手が虚を突かれて露骨に戸惑っているな。予測が難しいからな、無理もない……」
「はあ……はあ……片付きましたよ?」
超慈が乱れた息を整えながら、姫乃に問う。姫乃が答える。
「思っていたよりは4人とも戦えていたな。ひょっとして中学で合魂経験者か?」
「こんなのやる中学、普通ないでしょう……」
「冗談だ。よくやったな、と言いたいところだが……貴様ら全然連携がなっとらんな。それでは今後苦労するぞ?」
「そんなこと言われても! 今日初めて互いの魂道具を見たんですよ⁉」
「初対面の者とも呼吸を合わせる必要が生じるぞ、合魂を舐めるなよ?」
「俺の知っている合コンじゃない! ⁉」
「おらあ!」
「!」
大柄な男が4人に刀を持って襲い掛かってくる。小さい規模だが火が巻き起こる。4人は驚きながらもかわす。姫乃が淡々と話す。
「まだ残っていたか……言ってみればボスキャラだな。そいつを倒さんとチュートリアルクリアとはならんぞ」
「ひ、火が出ましたよ⁉」
「値段の高い、質の良い魂火煮弁刀を使っているのだろう」
「そ、そういうものなんですか⁉」
「そういうものだ……今の動き一つとってみても、これまでの雑兵とは一味違う。連携を取らんと、現在の貴様らではどうにもならんぞ?」
「そ、そうは言っても!」
「声が苦しげだな、魂力を一気に消費して消耗したか、基本的体力をもっとつけんとな。だが、これくらいは切り抜けてもらわんと話にならん。相手は待ってくれんぞ」
「これで仕留める!」
大柄な男が刀を振りかざす。超慈が舌打ちする。
「ちっ! 体が思うように……」
「『充電』!」
「⁉」
亜門が刀を地面に突き立てると、周囲に振動が伝わる。亜門が叫ぶ。
「これで魂力が多少戻ったはずだ!」
「ああ、動ける!」
「むっ⁉」
前に踏み出した超慈が男の刀を受け止める。仁が魂棒を投げる。
「それ! 『回転投げ』!」
「うおっ⁉」
二本の回転する魂棒を両肩に喰らった男がのけ反る。超慈が瑠衣に声をかける。
「任せた!」
「任された! 『パフパフ』!」
「ぐはあっ!」
空中に身軽に舞った瑠衣の攻撃により魂を吸い取られた男が崩れ落ちる。
「即興だが、良い連携だったな。期待出来るかもしれん……」
姫乃が笑みを浮かべつつ呟く。
