人は間違える。だからこそ定量的な評価が重要
ある日のリハビリ室。
3歳のAくんは、にこにこしながら歩行練習に取り組んでいました。
ふと見ると、前回よりもバランスが良くなったように見えます。
「Aくん、すごい!バランスが安定してきたね。」
そんなふうに感じた私は、嬉しくなりました。
しかし、後から歩行時のバランス能力を評価してみると、数値は前回とほとんど変わっていなかったのです。
このとき、改めて思いました。
「人は間違える。だからこそ、定量的な評価が必要だ」と。
主観だけでは見誤ることがある
私たちは、子どもの様子を直感的に「良くなった」「まだ不安定」と感じることがあります。
この感覚は経験に裏打ちされた貴重なものです。
しかし――
その場の雰囲気に流されていないか?
一度持った印象に引きずられていないか?
私たちは常に、無意識のバイアスにさらされています。
だからこそ、「定量的なデータ」というもう一つの目を持つことが大切なのです。
定量的評価は「成長の証拠」を可視化する
定量的評価とは、動作や能力を数値やスコアで客観的に記録することです。
たとえば――
6分間歩行距離
片脚立位保持時間
GMFMスコア(Gross Motor Function Measure)
TCMSスコア(Trunk Control Measurement Scale)
これらを記録していけば、
「6分間歩行距離が150メートルから210メートルに伸びた」
「TCMSスコアが20点から28点に改善した」
といった、感覚だけでは気づきにくい変化も明確に把握できます。
また、保護者や医師に説明するときにも、
「体力がついてきました」だけでなく
「歩行距離が40%伸びました」という客観的データを示すことで、
信頼感と説得力がぐっと高まります。
どこから始める?定量評価の取り入れ方
すべてを数値化しようとすると負担が増えてしまいます。
まずは、次のような場面に絞って取り入れてみましょう。
目標設定に関わる動作(座位保持、立位保持、歩行など)
経過観察が必要な動作(移乗、起き上がりなど)
新しい介入の効果を検証したいとき
例:週に一度だけ6分間歩行距離を測る、月に一度だけGMFMスコアを確認する。
このように、小さく、無理なく続けることがポイントです。
まとめ
人は誰でも間違える生き物です。
だからこそ、私たち自身の感覚を信じながらも、
データという客観的な道しるべを持ち続けることが大切です。
あなたの経験と、あなたが記録するデータ。
その両方を生かして、子どもたちの成長を、もっと確かに支えていきましょう。
