呼吸がつくる「ウエスト」と「お通じ」の話。【後編】#2
呼吸がつくる「ウエスト」と「お通じ」の話。【後編】です。
【前編】はこちら。
先に【前編】をご一読いただくと、よりわかりやすいかと思いますが、【後編】から読んでもご理解いただけるよう心掛けて、書き進めたいと思います。
【前編】では、主に「細いウエストのつくりかた」をお話したのに対し、【後編】では、その「細いウエストがどう健康に関与するか」についてお伝えしています。
ご興味にあわせてお読みになってくださいね。
ではまず、こちらをご覧ください。

わたしたちのお腹のなか──内臓の様子をデフォルメしたイラストです。
左が、本来のお腹の状態。
ウエストがほどよくくびれ、内臓が定位置に収まっています。
対して右は、ウエストを形成するはずの骨盤上部が大きく開いてしまっているため、ひろがった空間に、すべての内臓が「ごちゃっ」と押し込まれています。
たとえていうなら、いろいろなおもちゃが無造作に放り込まれた「おもちゃ箱状態」です。
そもそも、お腹のなかには、内臓を置いておくための「棚」が存在するわけではありません。
胃や肝臓、腸などの内臓が定位置に収まっていられるのは、その周囲の筋肉や腹膜、靭帯等に支えられているから。同時に、内臓同士、支えあい、重なりあっているから。
ですから、骨盤がひろがり、お腹の空間そのものが必要以上に大きくなってしまうと、内臓は側面の支えを失い、お互いを寄せ合い、支えあうことができなくなります。
結果、腹腔の「おもちゃ箱状態」が常態化してしまう、というわけです。
たとえば、「おもちゃ箱」の底のほうでは膀胱が、他の臓器の重みで押しつぶされます。すると、排尿に影響がでたり、膀胱炎が誘発されたり。
同様に子宮が圧迫されれば、生理に問題がでたり、婦人科系の疾患が起こったりします。
「おもちゃ箱」の上のほうに位置する臓器にも影響がでます。
胃下垂は、本来はウエストより高い位置に収まっていた胃が、だらーんと、ときにおへそより低い位置まで垂れさがる症状です。
肋骨に収まっているはずの肝臓が、大きく下方にはみだす肝下垂も起こります。
大腸も同様です。
イラストAを再掲しますが、本来左の絵のように位置するはずの大腸が、右のような状態になったら……内容物がうまく流れていかないことは、容易に想像がつきますよね。
おまけに肛門につながる直腸は、「おもちゃ箱」のいちばん底にありますから、他の臓器に押しつぶされやすく、出口は簡単にふさがれてしまいます。
記事のタイトルにもした「ウエスト」と「お通じ」の間には、こんなにもわかりやすい相関関係があったわけです。

開いてしまった骨盤が便秘を誘発するように、さまざまな内臓の不調の原因が、臓器が「押しつぶされている」、あるいは「下垂している」という単純な理由によるものである可能性は、実は、決して低くありません。
物理的に圧迫されるのみならず、脊椎から各臓器に伸びている神経が極端に引っ張られ、それが機能しづらくなる……ということが起きているからです。
また、骨盤まわりの筋肉が内側から圧迫されたり引っ張られたりするので、腰に負担がかかり、腰痛の隠れた原因にもなります。
内臓を下垂させない。
これは、健康維持のための最も基本的な心構えのひとつ、といえます。
【前編】では、そのための「くびれたウエストのつくりかた」について記述しましたが、こちらでは、より物理的に、手っ取り早く内臓を持ちあげちゃう方法をひとつ、ご紹介しますね。
ワーク時の体勢から、「滑り台のワーク」と呼びたいと思います。
以下、その方法です。
* * * *
*滑り台のワーク*
①仰向けに寝転んで膝を立て、鼠径部と恥骨のあたりに手を差し込む。

手を刀にみたて、イラストB右の点線aからbまでをしっかり「切っていく」感覚で、満遍なくほぐしてあげてください。
↓ ↓ ↓ ↓
②その体勢からお尻を持ちあげる。

自分の体で「滑り台」をつくるイメージで、膝と肩ができるだけ一直線になるように、お尻の位置をキープしてください。
両手は、鼠径部の点線ラインにしっかり押しあて、大きく息を吸い込みます
↓ ↓ ↓ ↓
③息を吐きながら、両手をcからdに向かって滑らせる。

滑らせる手にはしっかり圧をかけ、その両手に内臓が押しあげられていくのを感じながら、肋骨方向へ移動させてください。
呼氣のとき、横隔膜はイラストD右のようにみぞおちに向けて大きくくぼみ、そこにスペースが生まれます。
その「くぼみ」に内臓を押し込むイメージで、両手にしっかり圧をかけてあげてくださいね。
横隔膜のくぼみに押し込む……というのが大事なポイントなので、息を止めずに、必ず呼吸と連動させて行うようにしてください。
この動作を何度か繰り返し、内臓がなんとなくでも肋骨に寄ってきたなあと感じたところで、お尻をゆっくり床におろしてください。
鼠径部に沿ってもういちど手を差し込んでみると、ワークを始めたときより、その部分がやわらかく感じられるのではないかと思います。
本来、鼠径部付近には内臓はありません。
けれど、腹腔が「おもちゃ箱状態」になると、骨盤の底ぎりぎりまで内臓が詰め込まれることになり……鼠径部に手を差し込んだときにも「手応え」が生まれます。
この「手応え」は、本来は必要のないもの。
「滑り台のワーク」で詰まった内臓を上へ上へと押し戻し、鼠径部付近が「からっぽ」になった感覚を、ぜひつかんでみてくださいね。
* * * *
さて、もうひとつ、内臓を持ちあげるという視点から注目しておきたい臓器があります。
副腎です。
副腎は、腎臓の上に、ちょこんと帽子のようにのった小さな臓器です。
副腎の下の腎臓は、血液中の老廃物を濾過して尿をつくる、周知のとおりの大事な臓器。
握りこぶし大の豆型の臓器で、「背中側にある」と説明されることも多いため、本当に背中にあるのだと思われている方もときどきいらっしゃるのですが、実際には、ちゃんと腹腔に収まっています(背骨より後ろに内臓は存在しませんからね!)。
腹腔の高い位置、横隔膜にもほど近い位置にあるため、その動きに直接刺激を受けやすい臓器でもあります。
わたしの記事をずっと読んでくださっている方にはお馴染みかと思うのですが、横隔膜というのは、呼吸で大きく形をかえる筋肉です。
過去記事では、横隔膜の動きをくらげに見立てたイラストを載せたこともありますので、それをこちらにも再掲しますね(「くらげの瞑想と、わたしの創造する陰陽の世界」より)。

この「くらげ」は、肋骨の下端にぐるっと付着し、立体的にみても、まさにくらげのようにドームの形を形成している筋肉です。腹腔の天井ともえいます。
副腎・腎臓は、このドームの中に、そして胃や肝臓の後ろ側に位置しているので前からはみえないのですが、ここではその動きがわかりやすいように、副腎・腎臓だけを上の横隔膜のイラストに描き加えてみますね。

横隔膜という「天井」に押されるように、副腎・腎臓が上下に移動するのがおわかりいただけるでしょうか。
そもそも、呼吸で形をかえる横隔膜の動きは、各臓器に対し、上から指圧することに似たマッサージ効果を持っています。
なかでも、横隔膜に近い位置にあり、腎臓の上にちょこんとのった小さな副腎は、その影響を最も受けやすい臓器のひとつです。
副腎は、生命維持に必要なホルモンを分泌する臓器です。
小さいけれど、大変重要な役割を担っていて、その働きをひとことで説明するのは難しいのですが……よく知られたホルモンの名前を挙げるとすれば、副腎皮質ホルモンを分泌する器官でもあります。
副腎皮質ホルモン。
その言葉から、外用薬や内服薬として使われるステロイド剤を連想する方も多いかと思います。
薬として処方される副腎皮質ホルモン(ステロイド)は、副腎で生成される副腎皮質ホルモンをモデルに、化学合成された薬剤です。
ですから、副腎で生成されるものを「天然の副腎皮質ホルモン」、ステロイド剤を「人工の副腎皮質ホルモン」といって差し支えないかと思います。
さまざまな症状の緩和に用いられるステロイド剤ですが、周知のとおり、副作用を伴うものでもあります。
この記事で、そのことに詳しく言及するつもりはありません。ただ、薬として処方されるステロイド剤が持つ抗炎症作用、免疫抑制作用は、もともと、人の体に天然に備わった副腎由来の働きであることを、あらためてご認識いただけたらと思うのです。
そして、他の臓器と同様、骨盤が開きっぱなしになると、副腎・腎臓も、本来の位置から大きく下垂し、「おもちゃ箱」に放り込まれることになります。
横隔膜の「指圧効果」も届かず、機能は低下し、結果、ホルモンの分泌にも問題が生じやすくなる──その仕組みをご理解ただけたらと思うのです。
さて、ここでちょっと、イメージをしてみてください。
もしも、あなた自身が内臓だったら……と。
どの臓器でもいいのです。
副腎でも、肝臓でも、子宮でも、大腸でも。
そして、他の臓器と一緒に、大きな箱の中に「ぐちゃっ」と放り込まれた自分を想像してみてください。
息はしづらく、不自然な体勢のまま固定されて動けない。
隣の臓器に押されて、そこに痛みを感じるかもしれないし、上にのった臓器からかかる圧は、日増しに強くなっていくかもしれない。
いつしか、それがあたりまえになった日常から──ある日、ふわっと解放されたら。
身のまわりに程よい空間ができ、十分に息がつけて、隅々まで自分の自由に動かすことができたら。
何からも圧迫されず、本来の自分の空間と形を、取り戻すことができたら。
たぶん、それまでよりずっと快適に、自由に、自身の力を発揮できるようになります。
わたしたちの体内で、内臓は本当によく働いています。
押しつぶされても、身動きがとれなくても、そのときそのときにできる最大限の力を発揮しようと、内臓たちは日々頑張ってくれているのだと思います。
その内臓たちのために、わたしたち自身にできること。
そのひとつが、内臓の下垂を防ぎ、くびれたウエストを保つことであるなら──それは決して難しいことではありません。
もし、くびれたウエストをつくるなんて無理……と感じてしまうとしたら、それこそが幻想です。
体の仕組みは、きちんとウエストが生まれるようにできています。
「滑り台のワーク」、そして【前編】でご紹介した呼吸法を、その幻想を手放すためのヒントとしていただけるなら──これほど嬉しいことはありません。
完璧でなくてもいいんです。
少しずつ、少しずつ、持ちあげていけばいいんです。
内臓たちの健康は、わたしたち自身の健やかさに直結します。
内臓たちの喜びは、わたしたち自身に喜びを届けます。
内臓たちの幸せは……わたしたちの幸せです。
それを忘れず、過ごしていきたいな!
最後に、記事をふたつ、ご紹介させてください。
ひとつめは、Tomominさんのご投稿。
タイトルにもある通り、その場でウエストが7㎝細くなりました!
Tomominさんは、実は二度目の「姿勢の配達」だったのですが、一度目の姿勢指導のあと、姿勢をほめられる機会が増えた……と、嬉しいお話も届けてくださいました。
一度目以上に、姿勢や呼吸のコツをしっかり受けとってくださって、マイナス7㎝をキープすべく、日々励んでくださっているとのことです。
ふたつめはkarinさんの記事。
昨年末に「姿勢の配達」を受けとってくださり……その直後のお体の変化について書いてくださった記事を、【前編】で引用させてもらいました。
こちらは、それから数か月が経過した、ごく最近の記事。
一年に一度の定期健診で、去年よりウエストが5㎝細くなったそうです。
指導直後に絞られたウエストが、呼吸法を習慣にすることですっかり定着したご様子。
「論より証拠」を、こうして記事にしてくださることに、心から感謝します!
↓「姿勢の配達屋さん」の概要はこちらです。
↓姿勢や健康に関する記事を、こちらにまとめています。
