見出し画像

眠れる梃子を彫り起こせ

2025年06月12日 38日目
石切り場で大理石に向き合ったミケランジェロは「天使を見たので、その周りを彫った」と呟いたという。
僕らが見るのは白い塊だが、彼には内部で身じろぎする“天使”が透けていた。

アルキメデスが「支点さえあれば地球も動く」と豪語したのと同じで、要は〈在るもの〉をどう“梃子”に変えるかの話だ。


さて永田町。
支持率が落ち込む石破首相は、衆院解散という一枚岩に手を付けず、ひたすら鑿の角度を測っている。
党内から「いつ振り下ろす?」と野次られても、首相は石材を温存し、選挙という巨大てこを最大効率で使える“旨みの熟成”を待つ腹づもりらしい。
政権与党の常套手段ではあるが、長く寝かせすぎれば風味は飛ぶ。

視線を海峡の向こうへ移せば、韓国の李在明大統領が「コリア・ディスカウント」を是正すると宣言した。
家族型財閥が抱え込んできた内部留保や研究所、その人脈までも“風通し”という名の鑿で外気に晒し、株価という彫像を一気に浮かび上がらせようとする。
市場は早くも彫像の輪郭に色めき立ち、コスピは弾みを増した。

ところが我が国のジェンダー格差指数は、世界118位でG7の最下位。
人類の半分を占める才能という大理石が、いまだ未着手の原石として放置されている。
政治と経済の現場での女性登用は、鑿どころか下絵さえ引かれていない状態だ。
世界は支点を“女性活躍”に置くことで株価もGDPも持ち上げているのに、日本だけが石の存在自体に気づかないふりをしているように見える。


リソース活用の妙とレバレッジの最大化。
石破首相は“権限”の出力を温存しながら投下タイミングを図る。
韓国は眠っていた“透明性”を支点に企業価値を跳ね上げる。
日本社会は“女性”という最強のてこを棚の奥に放置している。
資源の大小より、梃子として組む構図の巧拙が明暗を分ける。

マーケティングの現場でも同じ匂いがする。
広告費を増やすより、顧客レビューを磨く方がレバレッジは効きやすい。
無料トライアルを延長するより、オンボーディングのUXを研ぎ澄ませた方がLTVは跳ねる。
つまり〈眠っている資源〉を〈てこ〉に変える工程こそが、ブランドの真骨頂だ。


再び美術へ。
ブランクーシは未完成の楕円形マーブルに『Sleeping Muse』と名付け、滑らかな面からまどろむ顔を浮かび上がらせた。
マーケターにも同じ作法が要る。
粗いブロックに潜む価値を透視し、最小の削りで最大の造形を浮かび上がらせる――リソースが乏しいスタートアップほど、その技は死活的になる。

総じて、日本のジェンダー格差は石材が眠る典型的な“パリンプセスト”だ。羊皮紙を重ね書きして古い知を消した修道士のように、人類は長い間女性の潜在力に無意識で墨を塗ってきた。
だがすでに下層には黄金の写本が刻まれている。
墨を剝がし、光を当てれば、組織全体が持ち上がる支点はそこにある。

マーケ屋もまた、商品・サービス・ブランド・企業が抱える“潜在の彫像”を探る鑿を磨くべきだ。


御年68歳の男性宰相が女性登用の少ない政権を延命させようとしている。
そんな滑稽に見える白い塊の中に、もしかするとまだ名づけられていない天使が潜んでいないだろうか?


出典:
・石破首相、衆参同日選を見送りへ(朝日新聞)/2025年06月12日
・South Korean investors bet new president can end “Korea discount”(フィナンシャルタイムズ)/2025年06月12日
・男女平等指数、日本は118位でG7最下位(朝日新聞)/2025年06月12日

いいなと思ったら応援しよう!

マーケ屋のひとりごと よろしければ応援お願いします! いただいたチップはクリエイターとしての活動費に使わせていただきます!