【読書記録】北村薫さんの本[円紫さんと私]シリーズ
また絵本から離れていってます(笑)
というのも読みたい本がシリーズとなっていて、それがまた既刊モノなので全巻読めてしまうのです。
今回のシリーズは、
この本を読んだのがきっかけでした。
女子大生の”私”の日常に起きる謎を、落語家・春桜亭円紫師匠に問いその答えを得るというシリーズ。
1990年頃のものなので、全6巻図書館(一部書庫)に揃ってるのです。
次作の『夜の蝉』は割と早くに借りて読んでいたのですが、3作目の『秋の花』はずーっと貸出中で(これもちょっと謎)、しびれを切らして予約。
4作目~最終巻まで最近一気読みしたので、noteに備忘録を。
2⃣『夜の蝉』は短編が3つ。
朧夜の底(親友の一人のバイト先での謎)
六月の花嫁(もう一人の親友の秘密事)
夜の蝉(姉の恋と、姉妹の和解)
今回も日常の謎ながら、人間の底にある感情を表す3話。
円紫さんの言葉をかりるなら、
「どうしてもいえないことは誰にでもある。言えることと言えないことの割合がその人らしさを作るのでしょう」と。
謎解きは面白いし、今回は更に親友や姉との話で”私”のキャラだけでなく彼女たちの心、日常、成長が感じられる作品でした。この作品で第44回日本推理作家協会賞を受賞され、覆面作家だった北村さんは素顔を公開することになったそうです。
3⃣『秋の花』は、8章立ての長編でした。
”私”の母校である女子高3年生が文化祭の前日屋上から転落死する。生徒会の後輩にもあたるしかもご近所の子。
”私”の家のポストに教科書のコピーが入っていた事からその謎を解いていくのですが…。
<運命の悪意>天の采配は時に残酷。
私は日頃から十分注意しなきゃいけない適当なタイプの人間。読んでいて身の引き締まる思いをしたのは言うまでもないのですが、常に最悪の事態を想定し丁寧に日常を送る人であってもなのですよね…。
北村さんの文章は、辛く苦しい真実を目の当たりにした時、そして起こってしまった後どう生きるかを問いかけ、そっと優しく生き抜くヒントを与えてくれているように思います。
シュウカイドウ(秋海棠)というピンクの花、初めて知りました。別名・断腸花。人を想って泣く涙が落ち、そこから生えたという断腸の想いの花。
献辞は「母にー」です。
4⃣『六の宮の姫君』も、9章立ての長編。
大学4回生となった”私”は、1⃣『空飛ぶ馬』の初めに登場した”近世文学の加茂先生“からアルバイトの話を持ちかけられ、卒論に使うワープロ(ここがまた時代を感じるけど)も欲しかったため出版社で人生初のアルバイトをする事に。
卒論のテーマ芥川龍之介とも若い頃に会った事がある文壇の長老作家から、短編『六の宮の姫君』についての話を聞く。
読み応えあった~(ついていけなかったけど笑)。
芥川だけに、もうすごくたくさんの文献が引かれている。作品だけでなく、親交のある作家たちのエッセイや全集の一部などを挙げ、芥川作品を読むよりも芥川その人を知ることが出来たかもしれません。
このシリーズを読み始めて思っていたことだけれど、文学部(国文科)の方たちってこんなにも本を読むのですか!いや凄いな。次から次へ関係ある作品を調べ貪り読む主人公”私”。探究が止まらないのはやはりスキだからだなぁ~としみじみ感じました。
今回は円紫さんの出番は殆どなく、謎解きは”私”の探究心と努力によって自ら紐解かれた、因縁と友のお話でした。(芥川賞と直木賞の由来に納得もしました)芥川龍之介の作品、やっぱりちゃんと読んでみようか。
芥川龍之介自身の知識量も凄かったと本に書かれていましたが、この作品を書かれた北村さんも凄いはずですよね。
いつもの正ちゃんとのやり取りも楽しく、献辞の「友にー」に納得。
5⃣『朝霧』は、短編3つ。
山眠る(訂正のある原稿の謎、校長先生の想い)
走り来るもの(ショート・ショートの結末)
朝霧(忠臣蔵と祖父の日記の暗号)
無事に卒論を提出した"私"はバイト先の出版社へ就職、2年が経つ。初めて担当する「落語に関する本」の執筆を円紫さんにお願いする。
「走り来るもの」中に登場したリドルストーリー(フランク・R・ストックトンの「女か虎か」)は代表的な作品なんですね。明確な答えや結末を与えず読者に委ねるのは、後の2編「山眠る」「朝霧」のお話でも採用され、ラストにしみじみとその余韻が味わえます。
今作は俳句や和歌もお話の基軸となっていて、毎回円紫さんが話してくれる古典落語もうまく引合いとなりますが、その辺の知識もない私にはなかなか謎解きとはいきません(まぁそれでなくても難しいのですが笑)。
「お考えなさい」と、円紫さんも”私”に答えをすんなり渡してはくれませんが、自ら謎を解いた”私”に成長を感じました。次作でその謎解きが終わるのかと思うと、ちょっぴり寂しさも。
創元社から出版された本書。
「北村さんのこと」と語る戸川編集長は、著者と30年の付き合いであったとか。
「読者を戸惑わせるような飛躍のこと。また、心情(今回なら作中に出てくる俳句に込められた想い)が理解できれば事の真相が分かる、北村さんのはそういうミステリ」に分かり身が過ぎる!
また私も素敵だなと思ったこの言葉も、編集に携わっている人の中でも理解している人は少ないのに本質を言い当てていると記されていました。
北村さんの優しく丁寧な仕事を思わずにはいられません。
損すると分かっていても出すべき本がある。
本屋が稼ぐっていうのは売れない本のためで、社員のためじゃない。
1億入ったら「あぁ、これで損がで出来る」と思うのが、本屋さん。
献辞は「明日にー」。
6⃣『太宰治の辞書』も短編が3つでした。
花火(本の旅① ピエール・ロチ「日本印象記」と芥川「舞踏会」からのロココ)
女生徒(本の旅② ロココからの太宰「女生徒」と『有明淑(しず)の日記』)
太宰治の辞書(さらに本の旅 円紫さんからの問題)
時は過ぎ、前作で社会人(編集者)となった”私”も40代半ば?共働きで家も建ち、息子は中学生野球部員の、働くお母さんになっていた!
新潮社のロビーで見掛けた復刻本から、仕事ではなく個人的に学生の時のような本の探究を巡っての話を、久しぶりに円紫さんに話すが、探究の旅は終わっていなかった。
最後は、太宰!
この本の旅によって更に文豪のことについて、また辞書についての知識まで得ることが出来るという。先日BSフジの『あの本、読みました?』でも辞書の編集員さんが出演されていて、日常で絶えず言葉探しをしていると聞いたところ。ロココという言葉一つで、昔からの編集員のその仕事ぶりを想像できました。
前作の本屋さんの本質については、本作の文中に営業視点の記述もあり、理想論とも、一概には言えないことも触れていました。その気持ちが大切なんでしょうね。真摯。
献辞は「本にー」。
シリーズの”謎解き”は共通しているのですが作品それぞれに大きなテーマがあり、単にミステリを読んで面白い以上の充実感満足感です。
シリーズの巻を追うごとに成長していく”私”も感じられ、好きなことへの探究心好奇心が日常を彩っていることを改めて思います。また、このシリーズを読むと落語や文豪の作品への興味も湧いてきますね(私には未読のものがたくさんあり過ぎて、実際読める気がしないけれど笑)
前作の「北村さんのこと」で戸川編集長が語ったシリーズで度々感じていた飛躍。ここで何故こんな話が出てくるのか?と思いますが、後から不思議と結びついているのだから、円紫さんの謎解きと同様、北村薫さんという作家の技量、知識量、偉大さをそして時代や歳月も感じました。
ここまで読んで下さった方。長くなってしまった私の個人的備忘録にお付き合いいただきありがとうございました。
追記:たくさんの方に読んでいただきスキありがとうございます。嬉しいです。北村さん💓の方がたくさんいらっしゃると思うとまた嬉しい。マガジンにも追加して下さりありがとうございました。
