【洋楽解説×平和学 No.026】Earthrise: The Rainforest Album 〜 1992年のアルバムが繋いだ20年の旅

🎸番外編:アルバム紹介
1992年、バンクーバーにいた若い私は、一枚のCDを手に取りました。
「Earthrise: The Rainforest Album」——地球の出。熱帯雨林のアルバム。
ジャケットを見て、タイトルを見て、ピンときた。中に何が入っているかもよく確かめぬまま、買ってしまいました(笑)。
リオサミットのことは知らなかった。Earth Love Fundのことも知らなかった。ただ「これだ」という直感だけで。
今考えれば、運命としか言いようがない——買うべくして買ったのだと思います。
それから20年後の2012年、私はブラジル・リオデジャネイロにいました。
このアルバムが生まれた背景
「Earthrise: The Rainforest Album」は1992年6月1日、国連地球サミット(リオサミット)の公式アルバムとして発売されました。
制作したのはEarth Love Fund(ELF)——熱帯雨林保護のために1989年に設立されたイギリスの団体です。ヴァージン・レコード創業者リチャード・ブランソンの協力を得て、1989年にまず「Spirit of the Forest」というチャリティシングルを制作。その流れから、1992年のリオサミットに合わせてこのアルバムが生まれました。
・国連地球サミット(リオサミット)とは: 1992年6月、ブラジル・リオデジャネイロで開催された国連環境開発会議。178カ国が参加し、気候変動枠組条約、生物多様性条約などが採択されました。「持続可能な開発」という概念が世界的に広まったのも、この会議がきっかけです。
・アルバムのコンセプト: 収益は全てEarth Love Fundの熱帯雨林保護活動に寄付されました。ジャケットには「このアルバムを購入することで、あなたも熱帯雨林のコミュニティを支援し、意識を高め、将来の世代のために熱帯雨林を守るプロジェクトに貢献しています」と記されています。
・「Earthrise(地球の出)」というタイトル: 1968年、アポロ8号の宇宙飛行士ウィリアム・アンダースが撮影した「地球の出」の写真——月の地平線から昇る青い地球。その写真が現代の環境運動の象徴となりました。「宇宙から見た地球は一つだ」というメッセージが、このタイトルに込められています。
収録アーティストと曲目
U2、Julian Lennon、Eurythmics、Paul McCartney、Paul Simon、Elton John、R.E.M.、Artists United for Nature、Sting、Seal、Peter Gabriel & Kate Bush、Steve Winwood、Dire Straits、Spirit of the Forest、Genesis、Queen——16組のアーティストが、それぞれの代表曲をこのアルバムのために提供しました。
ジャンルも世代も国籍も超えた顔ぶれ——しかし全員が「地球のために」という一点で繋がっています。
このシリーズでは、16曲それぞれの背景・歌詞・平和学的な意味を一曲ずつ解説していきます。
なお、このアルバムは発売国ごとにバージョンが少し異なっているようですが、ここでは私が購入したカナダ版を解説していきます。
1992年から2012年へ——私とEarthriseの20年
バンクーバーでジャケ買いした時、私はリオサミットのことを何も知らなかった。ただ直感で手に取ったこのアルバムが、自分の人生の方向性と完全に一致していた——今考えれば、買うべくして買ったのだと思います。
その年の12月、私は初めてコスタリカの熱帯雨林に足を踏み入れました。Earthriseを聴きながら想像していた「圧倒的な自然の密度」を、初めて体で感じた瞬間でした。
そして2012年。
リオ+20——1992年のリオサミットから20周年を記念した「国連持続可能な開発会議」が、再びブラジル・リオデジャネイロで開催されました。私はその会議に参加しました。
本セッションへの参加許可の手続きが間に合わず、メインの会議室には入れなかった——しかしサイドイベントで、核廃絶に関するセッションをファシリテートしました。
そこで一人のブラジル人男性と出会いました。工場で労働被曝した労働者でした。彼の手は被曝の影響で膨れ上がっていた。
彼は前年に起きた福島第一原発の事故を引き合いに出して、日本人である私に向かってこう言いました——「連帯します」。
胸が詰まりました。こちらこそ、と返すしかなかった。
そのセッションには、モンゴル、カナダ、フランス——様々な国から人々が集まっていました。核の問題は、国境を超えた問題として、世界中の人々を繋いでいた。
1992年、リオサミットも知らずにバンクーバーでこのアルバムをジャケ買いした若者が、20年後にリオの地でそういう人々と出会っていた——Earthriseというアルバムが繋いだ、私の20年の旅です。
Earthriseを「アルバムとして」聴くこと
このシリーズを読む皆さんに、一つお願いがあります。
できれば、このアルバムを「アルバムとして」通して聴いてください。
U2の「まだ見つけていない」という問いかけから始まり、Julian Lennon、Eurythmics、Paul McCartney、Paul Simon、Elton John、R.E.M.と続いて、Artists United for Natureの「Yes We Can」で転換し、Sting、Seal、Peter Gabriel & Kate Bush、Steve Winwood、Dire Straitsと続いて、Spirit of the Forestで森の原点に戻り、Genesisの躍動感の後に、Queenが静かに問いかけます——「Is This the World We Created?(これが私たちの作った世界なのか?)」
曲順には意図があります。問いかけ、絶望、寄り添い、疲れ、転換、そして最後の問い——その流れを通して聴くことで、このアルバムが伝えようとしていることが、体に届いてきます。
本の一章だけを切り取って読んでほしくないように、アルバムも一曲だけで聴いてほしくない。Earthriseは、最初から最後まで通して聴いて初めて完成する、一つの「物語」です。
さあ、1992年のリオサミットの年に生まれたこのアルバムの旅を、一緒に始めましょう。
※明日から、無料記事として毎日1曲ずつアルバム順に投稿します。一定期間が経ったのち有料にする予定ですので、お見逃しなく!
📌 この連載【洋楽解説×平和学】について——初めての方はこちらの記事をどうぞ。
