[海外就職]#8 求人票の見方
前回の記事では、海外テック企業の求人が出る裏側について、エンジニア目線で考えてみました。
求人が出るタイミングは、会社のフェーズや優先順位、予算、退職者の補充など、いろいろな事情とつながっています。
今回は、その続きとして、求人票の読み方について書いてみます。ここで書く内容はソフトウェアエンジニアを前提としていますが、会計系や税務系など他の専門職にも当てはまる内容だと思っています。
まず簡単に自己紹介すると、自分は日本の大学を卒業した後、ヨーロッパのとある大学院に進学し、そのまま現地でソフトウェアエンジニアとして就職しました。 現在もヨーロッパに住んでおり、アメリカ発の企業でソフトウェアエンジニアとして働いています。この note では、海外大学院や海外就職を考えている方や関連する情報を集めている方に役立つ情報を発信しています。この記事がいいなと思ったら他の記事も読んでもらえると嬉しいです。
海外就活をしていると、どうしても「応募できそうか」「条件を満たしているか」だけを見てしまいがちです。
しかし、求人票を少し丁寧に読むと、その会社がどのような人を探しているのか、どのくらい経験のある人を想定しているのか、どの領域に人を入れようとしているのかが少しずつ見えてきます。自分も就職活動をしていた当時はそこまで深く読めていたわけではありませんが、実際に海外テック企業で数年働いてから求人票を見てみると、読み取れることは思っていたより多いなと感じています。
自分の立ち位置を整理する
海外就職を考えるとき、まず分けて考えた方がいいのは、すでに海外にいる人と、日本から海外就職を狙う人です。
すでに海外大学院に通っていたり、現地で働く権利があったりして、ビザや就労許可の問題が大きくない場合は、興味がある企業にどんどん応募してよいと思います。
一方で、就労許可の問題がある場合や、日本から直接海外就職を狙う場合は、少し見方を変える必要があります。
その場合は、単に面白そうな会社ではなく、ビザスポンサーに慣れていそうな会社かどうかを見ることも大事になります。
自分の経験上、世界的にサービスを展開している企業や、複数国に拠点を持つグローバル企業は、このあたりのノウハウを持っている可能性が比較的高いです。すでに複数国から人を採用していたり、移民手続きに詳しい外部パートナーと連携していたりすることもあります。
海外就職では、能力があれば必ず採用されるわけではありません。会社側が興味を持ってくれたとしても、ビザや就労許可の手続きが難しければ、選考が前に進まないこともあります。
そのため、求人票に「ビザスポンサーはしない」と明記されている場合は、どれだけ魅力的な企業でも、基本的には次を探した方がよいと思います。そこで粘るよりも、自分を採用するための手続きを進められる会社に時間を使った方が、海外就職の可能性は高くなるはずです。
職種名とシニアリティを見る
自分が求人票を見るとき、最初にフィルターに使うのが職種名です。
自分の場合は、ソフトウェアエンジニアとして働きたいという軸がありました。なので、Software Engineer、Software Developer、Backend Engineer、など、自分の目指す方向と近いポジションかどうかをまず見ていました。
ここで気をつけたいのは、海外で働くためなら何でもいいと考えすぎないことです。
たとえば、自分がソフトウェアエンジニアとして働きたいのに、日本語サポートエンジニアのようなポジションに応募する場合、後でミスマッチが起きる可能性があります。
もちろん、それをきっかけに海外企業に入るという考え方もあると思います。ただ、自分の観測範囲では、一度入社した後に大きく職種を変えるのは、そこまで簡単ではないように見えます。
それよりも、日本にいる段階で外資系企業やメガベンチャー、魅力的なサービスを開発しているスタートアップなどで開発経験を積んで履歴書を作る方が、長期的には良い場合もあると思います。
次に見るのは、シニアリティです。
同じ Software Engineer でも、さまざまなレベルがあり、それぞれのレベルでは求められることが異なります。
Senior、Staff、Principal などが付いている場合は、単にコードを書く力だけでなく、設計、他チームとの調整、プロジェクトのリード、意思決定への関与などが求められることが多いです。
求人票を見るときは、職種名だけでなく、「この会社はどのレベルの人に、どのくらいの責任を期待しているのか」を読みたいです。
ただ、シニアリティは職種ほど大切ではないと感じています。上のポジションに挑戦するのは問題ないですが、自分の安売りすることだけないように注意したいです。
必須条件は全部満たしていなくてもよい
求人票を見ると、必須条件と歓迎条件が書かれています。
ここで、自分は必須条件をすべて満たす必要はないと考えています。もちろん、明らかに足りない場合やミスマッチがある場合は別です。
ただ、必須条件に書かれている技術を一つひとつ完全に満たしていないからといって、すぐに諦める必要はないと思います。
たとえば、バックエンドエンジニアの求人に Python、MySQL、AWS と書かれていたとします。
この場合、自分なら Python の経験がしっかりあれば応募を検討します。
理由は、バックエンドエンジニアとしてAWS やMySQLの細かい設定が必要となる場面は少なく、採用側は似たような経験があればあまり気にしていないと考えられるからです。
他にも最低経験年数5年と書いてあっても、3,4年あれば応募資格は十分にあると思います。
大事なのは、必須条件の中でも本当に重要な要件を見極めることです。
事業内容と会社のフェーズを見る
求人票を見るときは、技術だけでなく、事業内容や業務内容も見たいところです。
ソフトウェアエンジニアとして働く場合、毎日向き合うのはコードだけではありません。ユーザー、プロダクト、ビジネス上の制約、チームの優先順位、他チームとの調整など、いろいろなものと向き合うことになります。
そのときに、事業内容にまったく興味が持てなかったり、衰退している企業だったりすると、長く働くのは結構しんどいと思います。
もちろん、最初からその業界に強い情熱がある必要はありません。ただ、求人票や会社説明を読んで、このプロダクトは面白そうか、この領域の知識を身につけたいと思えるか、といった基本的なチェックは行いたいところです。
もう一つ大事なのが、会社のフェーズと自分の人生のフェーズです。
大企業で経験を積んで、強い履歴書を作りたいフェーズもあると思います。すでに一定の経験やブランドがある人にとっては、次はスタートアップや急成長企業で、大きな裁量や株式のアップサイドを狙いたいフェーズもあるかもしれません。
一方で、家族との時間を大切にしたい、生活の安定を重視したい、無理なく長く働きたいというフェーズであれば、大きな企業や働き方が比較的安定している会社を選ぶ方が合っていることもあると思います。
これは、どちらが良い悪いという話ではありません。
大事なのは、会社のフェーズと自分の人生のフェーズが合っているかです。
スタートアップや急成長企業では、スピードが速く、曖昧なことも多く、かなり働く必要がある場面もあります。それを面白いと感じる人もいますが、子育てや家族の事情、健康、生活の安定を重視したい時期と重なると、かなり大変になるかもしれません。
求人票だけで会社のすべてが分かるわけではありません。ただ、募集しているポジション、求められる責任範囲、会社やチームの説明から、ある程度の雰囲気は見えてきます。
まとめ
求人票をどれだけ読んでも、実際の仕事のすべてが分かるわけではありません。面接で話してみないと分からないことも多いです。
ただ、求人票を丁寧に読むことで、明らかなミスマッチを避けたり、自分の経験をどう伝えるべきかを考えたりすることはできます。
求人票は、足切り表ではなく、会社と自分の接点を探す資料です。
完璧に条件を満たす求人だけを待っていると、なかなか前に進めません。少し足りない部分があっても、募集内容と自分の経験と自分の将来像がある程度重なっているなら、応募してみてもよいと思います。
次回は、日本でよく話題になる大企業 vs 中小企業について、海外のIT業界ではどうなのかをまとめたいと思います。
