[海外就職]#9 大手vsスタートアップ

前回の記事では、海外テック企業の求人票の読み方について書きました。

今回は、日本でもよく議論される「大企業か、スタートアップか」というテーマについて、海外テック企業で働く立場から個人的な見解を書いてみたいと思います。

まず簡単に自己紹介すると、自分は日本の大学を卒業した後、ヨーロッパのとある大学院に進学し、そのまま現地でソフトウェアエンジニアとして就職しました。 現在もヨーロッパに住んでおり、アメリカ発の企業でソフトウェアエンジニアとして働いています。この note では、海外大学院や海外就職を考えている方や関連する情報を集めている方に役立つ情報を発信しています。この記事がいいなと思ったら他の記事も読んでもらえると嬉しいです。

スタートアップには、大きな裁量を持って働けることや、株式報酬によって大きなリターンを得られる可能性があります。

その一方で、自分はキャリアの早い段階では、まずある程度名前の知られた企業を目指す方が合理的だと考えています。

理由は、大企業の方が安定しているからではありません。むしろ、大規模なレイオフが行われるときには、従業員数の多い大企業の方が、早い段階で大きな影響を受けることもあります。

それでも有名な企業を勧めたいのは、そこで得た経歴や人間関係が、その後のキャリアを有利に進めるための土台になるからです。

スタートアップには分かりやすい魅力がある

大企業とスタートアップを比較するとき、スタートアップの魅力としてよく挙げられるのは、主に次の二つです。

  • 裁量の大きさ

  • 株式報酬による大きなリターン

組織が小さい企業では、一人が担当する範囲が広くなりやすく、若いうちから重要な機能やプロジェクトを任されることがあります。

自分の仕事が会社の成長に直接つながっている感覚を持ちやすく、企業が大きくなっていく過程を当事者として経験できることは、スタートアップならではの魅力です。

また、株式報酬も大きな魅力です。

会社が急成長すれば、入社時にもらった株に大きな価値がつくことがあります。給与だけでは得られないほどのリターンを狙えることは、スタートアップで働く大きな理由の一つです。

ただし、最初の海外就職先として考えた場合、本当にスタートアップを優先するべきかについては、慎重に考えた方がよいと思っています。

その魅力を得られる企業かは分からない

スタートアップには大きな魅力がある一方で、そのメリットを本当に得られるかどうかは、会社によって大きく異なります。

例えば、担当範囲が広ければ、それだけでよい経験になるわけではありません。

成長が止まっている組織や、やる気のない組織で大きな裁量を持っても、単に一人で多くの「作業」を抱えるだけになることがあります。

重要なのは、裁量があるかどうかではなく、その裁量を使って価値のある経験を積めるかどうかです。

金銭的なリターンについても同じです。

株式報酬に大きな価値が生まれるのは、会社がその後も成長を続けた場合です。

しかし、入社前の段階で、ましてや初めての海外就職で、どの企業が将来大きく成長するのかを正確に見極めるのは簡単ではありません。

現在は売上や利用者数が伸びていても、競争環境、資金調達、市場の変化によって状況は大きく変わります。将来性があるように見えた企業でも、数年後には成長が止まっている可能性があります。

スタートアップの魅力は大きいです。しかし、その魅力を実際に得られる企業を、外から正確に見分けること自体が難しいのです。

だからこそ、一度有名企業で働く

もし上にあげたメリットを本当に享受したのであれば、むしろキャリアの早い段階で、一度ある程度名前の知られた企業で働くことを勧めたいと思っています。

ここでいう有名企業は、いわゆるFAANGやMANGOSのような巨大テック企業だけではありません。

多くの人が知っているサービスを運営している企業や、業界内で一定の評価を得ている企業も含まれます。

有名企業で働く最初のメリットは、転職市場で自分を見つけてもらいやすくなることです。

採用する側が候補者を探す際、前職の企業名は分かりやすい判断材料になります。その企業の選考を通過したことや、一定規模のサービスや組織で働いた経験があることを、短時間で想像しやすいからです。

有名企業にいるからといって、必ずしも本人の能力が高いとは限りません。

それでも、採用する側がまだ会ったことのない候補者を探すとき、企業名が最初の信用として機能することは十分にあります。

自分もある程度名前の知られている企業で働いているため、他社のリクルーターから転職の誘いのメッセージを受け取ることがあります。

一方で、あまり知られていないスタートアップで働いている人の中には、そうした連絡をほとんど受け取らないという人もいます。

本人の実力とは別に、どこで働いているかによって、外から見つけてもらいやすさには差が出ます。

有名企業は会社の外にもコミュニティを作る

有名企業で働く価値は、履歴書に会社名を書けることだけではありません。

海外テック企業では転職が多いため、同じ会社で働いていた人たちが退職した後も、企業の外に人間関係が残ります。

5年も経たずに転職することは珍しくなく、3年程度でも比較的長く働いたと感じられることがあります。

そのため、元同僚が別の会社へ移り、そこでさらに以前の同僚を採用するということが普通に起こります。

例えば、マネージャーやディレクタークラスの人が急成長中のスタートアップへ転職し、過去に一緒に働いていた人へ声をかけます。その結果、成長しているスタートアップに、特定の有名企業の出身者が多く集まることがあります。

採用する側にとっても、まったく知らない候補者より、一度一緒に働いた人の方が声をかけやすいはずです。

つまり、有名企業に入ることは、その会社のブランドを経歴に加えるだけではなく、転職市場の中にあるコミュニティへ入ることでもあります。

伸びるスタートアップに近づきやすくなる

伸びるスタートアップを、外から見分けることは簡単ではありません。

しかし、その会社へ移った元同僚や知人から直接声をかけてもらえれば、求人票を外から眺めるだけの場合よりも、多くの情報を得られます。

会社の成長状況、経営陣の考え方、チームの雰囲気、実際に任される仕事など、公開情報だけでは分からない話を聞ける可能性があります。

もちろん、知人から誘われた会社が必ず成功するわけではありません。

それでも、信頼できる人が実際に中で働いており、その人から声をかけてもらえることは、数多くあるスタートアップの中から候補を絞るうえで大きな手がかりになります。

最初から自分でスタートアップを選ぶより、一度有名企業に入り、そこから有望なスタートアップへ移る方が、情報の面でも人間関係の面でも有利です。

最初の一社を当てる必要もなくなる

有名企業での経歴や人間関係があれば、スタートアップへ移った後も、次の選択肢を作りやすくなります。

実際に入社してみたものの、会社の成長が止まったり、仕事内容が自分に合わなかったりすることはあります。

その場合、最初に選んだ一社に固執する必要はありません。

有名企業で作った信用や人間関係が残っていれば、別のスタートアップへ移ったり、再び規模の大きな企業へ戻ったりしやすくなります。

自分に合わないと感じたら次の会社へ移り、より可能性がある企業へ挑戦する。最初から急成長する企業を当てようとするよりも、そのような選択をできる状態を作ることの方が重要です。

一度有名企業で働くことは、スタートアップへの挑戦を諦めることではありません。

むしろ、大きく伸びるスタートアップへ挑戦するための準備です。

大企業に残っても、スタートアップへ移ってもよい

もちろん、有名企業に入った後、必ずスタートアップへ転職する必要はありません。

大企業に残り、比較的整った環境の中で専門性を高めていくのもよい選択です。

一方で、より大きな裁量や株式報酬を求めたくなったら、後からスタートアップへ移ることもできます。

大企業を選ぶことと、スタートアップへ挑戦することは、反対の選択ではありません。

まず有名企業でブランドと人間関係を作る。

そのまま残るのか、スタートアップへ移るのかは、後から決めればよいのです。

特に最初の海外就職では、この順番の方が合理的だと自分は考えています。

まとめ

今回は、日本でもよく議論される「大企業か、スタートアップか」というテーマについて、自分の考えを書きました。

スタートアップには、裁量の大きさや、株式報酬による大きなリターンという魅力がある一方で、そのメリットを得られる企業を、初めての海外就職で正確に見極めるのは難しいです。

そのため、自分はまずある程度名前の知られた企業で働くことを勧めます。

有名企業での経歴は、転職市場での信用になります。そこで作った経歴や人間関係は急成長するスタートアップや別の有名企業に移るきっかけになります。


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