【ショート&推し活】 夜空を磨く仕事
―― short story ――
少女は見上げる。
今日も夜空を。
雲で隠れて見えない日は、手を伸ばして左右に動かす。
ただ、顔を見たい。
その一心で。
「社長~!」
「……あ?」
舞った書類の向こうで、社長の眉間が動いた。
「失礼します!……あっ」
報告に来た男の顔色が、みるみる悪くなる。
「あ?」
青筋が立つ。
青ざめる。
「しゃ、しゃ、社長!こ、こ、工事が遅れておりましてっ!」
「あぁ?」
ガタンっ。
「ひぃっ……すみません!雲のやつらが排気ガスを飲み込みすぎましてっ。ベタつきがすごくて風で動かないんだそうです。……い、い、今、部長にお願いしまして、掃除屋を追加して頂きました!」
「……何人だ?」
「全員に依頼をしました!」
「……現場に行く」
小さな声。
「えっ、こちらの仕事は……?」
書類を踏む。
「今回は、月さんから結構頂いてんだ!信用問題だろうが!」
「は、は、はいぃ!」
怒号に悲鳴が続く。
部屋には舞い散る書類の山が次々と雪崩を起こす。
「まとめとけ!」
「は、は、はい!……え!」
声を置いて、事務所を出ると地上が一望できる。
上空を占めている薄い白に見えるはずの雲が、今夜は一段と黒かった。
肩で息をする。
問題の月を隠す濁った雲へ急ぐ。
モップがけをする数名の男女が目に入るが、おしゃべりだけして働かない輩が目立つ。
その中で、黙々と走り抜ける女性。
モップを洗い、また、走って、時々、冷たい水を交換する。
モップを丁寧に手洗いして、汚れを落としている。
細かい隙間も丁寧に拭いていると、
白くなり、やがて透明になって消えていく。
彼女の方に体が動く。
「社長!」
眉間が寄る。
複数人が走ってきて、取り囲んでくる。
「この汚れじゃ、割に合いませんよ」
「人、足りてないですって」
「応援はまだですか?」
声ばかりが増えていく。
……うっせぇな。対策するに決まってんだろ。
一人ごちでいると、彼女の足元が透明に光る。
見ているだけの自分の中の澱みも、消えていく気がしてしまう。
星が輝きだし、黒が白へと少しずつ変化していく。
やがて白が薄くなると、地上が見える。
窓際のベッドで月を見上げ、手を振る少女がいる。
少女と目が合うと、
彼女は淡く微笑んで、手を振り返す。
……まじで、こっち見ねぇかな。
外野はうるさいのに、
彼女の周りだけ、とても静かだった。
こちらの物語は、私の推しの銀狐職長。さんの熱い記事を読んでいて思いつきました🌿
読みながらノートに書き出していた物語です。
インスピレーションをありがとうございます。
……あれ?この記事でなんでこのお話?と思われた皆さま。
それは、COBIToにもよく分かりません。笑
素敵な方なのでよろしければ、他の記事も読みに行ってくださいね。
おすすめです☺️
お楽しみいただけましたら幸いです。
それでは、また、明日🌿
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