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ただの気分の落ち込みと「うつ」の違い

こんにちは!

ゴールデンウイークも半ば。日常が近づいてきましたね。

休んだしがんばるぞ、といった気持ちになれれば一番ですが、会社や学校に行きたくないな、といったいわゆる「五月病」っぽくなっていませんか?

前回も五月病による抑うつ傾向について、論文から考えてみました。

医療関係だと当たり前にうつ病うつ病と言っていますが、ここでふと疑問が。

誰でも気分が落ち込むことくらいあるけど、それと『うつ病』って何が違う?

改めて考えると難しいですね。

今回は、医療職の新人さんや、うつ病の入り口に立っている初心者の方に向けて、「気分障害(うつ病・双極性障害)」のキホンを解説します。

教科書的な知識と、最近の現場のリアルをセットでお届けします!

1. 「ただの落ち込み」と「うつ病」の境界線

誰だって、仕事でミスをしたり失恋したりすれば、ドーンと落ち込みます。それは自然な反応ですね。

では、うつ病とはどのような違いがあるのでしょうか。 心理学・医学の世界では、以下のポイントで「病気としてのうつ」かどうかを考えます。

  • 期間:一時的ではなく、2週間以上ほぼ毎日続いているか?

  • 程度:日常生活(仕事、食事、お風呂など)に支障が出ているか?

  • 回復力:好きなことをしても、全く気分が晴れないか?

教科書(DSM-5など)では、これらが一定の基準を満たすと「うつ病性障害」と診断されます。

2. 気分障害の全体像:大きく分けて2つ!

気分障害は、感情の波が「普通の範囲」を超えてしまい、自分ではコントロールできなくなる状態です。

大きく分けると、この2つになります。

  1. うつ病性障害(いわゆる、うつ病):ずっと深い谷底にいるような状態。単極性うつともいわれます。大体100人に対し6~8人程度です。けっこう多いですね。

  2. 双極性障害(躁うつ病):沈む「うつ」と、上がりすぎる「躁(そう)」を繰り返す状態。これは有病率が0.4~0.7%なので、100人いたら1人いるかいないかです。

ちなみに単極性の躁病ですが、これはほとんどいないそうなので除外しています。私が精神科で10年近く働いていたときも診断がついた方は見たことはありませんでした。

ここで大事なのは、「双極性障害の人に、うつ病の薬だけを出すと逆効果になる(躁転してしまう)ことがある」という点です。

だから、最初の見極めがすごく重要なんです(見極めはお医者さんの仕事ですが)。

3. 【うつ病】のリアル:最近増えている「非定型」って?

教科書的な「うつ病」のイメージ

  • ずっと気分が落ち込んでいる。

  • 何に対しても興味がわかない。

  • 食欲がない、眠れない。

現状のリアル:非定型(新型)うつ病の増加

最近、現場でよく話題になるのが「非定型うつ病」です。新型うつ病のほうが耳に馴染みがあるでしょうか。
五月病と混同されやすいのですが、以下のような特徴があります。

  • 気分反応性:仕事は辛くて動けないけれど、友達からの誘いや楽しいイベントの時は元気になる。

  • 過食・過眠:食べすぎてしまったり、泥のように10時間以上眠り続けたりする。

  • 鉛様麻痺:腕や足が鉛のように重くて動けない。

「楽しそうにしている時もあるから、甘えじゃないの?」と迷うかもしれませんが、これも現代的なうつの形。

周囲からの誤解にさらされやすく、本人も自分を責めてしまいがちです。

4. 【双極性障害】のリアル:躁状態は「本人が困っていない」

双極性障害の難しいところは、「躁(そう)状態」の時、本人は最高に気分が良いので「病気だ」と思っていないことです。

  • 躁状態のサイン:寝なくても元気、おしゃべりが止まらない、高額な買い物をしまくる。

現場では、うつ状態で受診された方が、実は過去に躁状態を経験していた…というケースがよくあります。

過去の「絶好調すぎて失敗した時期」がなかったか、丁寧に聞き取ることがポイントです。

入院中にうつ状態から急激に気分が上がりすぎてしまう(躁転)患者さんも度々います。

躁状態の患者さんとの会話はすごく弾む(ように見える)ので、不安でいっぱいの新人医療職にはありがたい存在だったりします。
ただし、あくまで症状なので、きちんと医療職側が適切なライン引きをしてあげなければなりませんね。

5. 睡眠はメンタルヘルスの「生命線」

資料にもあった通り、気分障害と「睡眠」は密接に関係しています。

  • 入眠困難(寝付けない)

  • 中途覚醒(夜中に目が覚める)

  • 早朝覚醒(朝早く目が覚めて絶望感に襲われる)

教科書的には「まずは薬でしっかり眠れるようにする」のが定石ですが、最近ではスマホやアプリを使った「睡眠ログ」で生活リズムを可視化するアプローチも増えています。

スマートウオッチを使うと、仮に眠れていなくても、「体が休めている」というのが分かるのでちょっと落ち着きます。

これも以前に記事にしていますので、未読の方はこちら。

「眠れないことへの恐怖心」を取り除く認知行動療法も、現場ではとても重要視されています。

まとめ:自分の「現在地」を知ることから始めよう

教科書的な知識はもちろん大事です。知識があるだけで、得体の知れない不安は少しだけ軽くなります。

もし今、あなたが「これって五月病?それともうつ?」と悩んでいるなら、まずは現状把握から始めてみてください。

  • 2週間以上、しんどさが続いていませんか?

  • 夜、ぐっすり眠れていますか?

おかしいな、とおもったらまずは専門家に相談していきましょう。精神疾患は自分で治そうとしてもなかなかうまくいかないです。

新人医療職のみなさんも、基本の知識を持ちつつ、患者さんの話を丁寧に聞けば、「いつもと違うな、もしかしたら症状なのかな?」と思える場面がきっと出てくると思います。

先輩のように、どんどん仕事をこなしていくのが格好よく見えるし大事かもしれません。
一方で、時間に余裕のある新人のうちにゆっくり患者さんの話を聞いて、変化に気付ける経験を積んでおくと、今後も立派な武器になりますよ。

さて、今回は心理学というか精神医学でしたね。心理系の話は無料マガジンにまとめてあるので、よければそちらもご一読ください。

今後も一緒に学んでいきましょう!

それではまた別の記事で。

📚 参考文献・出典

  • 世界保健機関(WHO): 『ICF(国際生活機能分類)生活機能モデル』(2001年版)

  • アメリカ精神医学会(APA): 『DSM-5 精神疾患の診断・統計マニュアル』(2013年)

  • 日本睡眠学会・厚生労働省: 『健康づくりのための睡眠指針』(2014年 / 2022年改訂版検討資料)

  • Beck, A. T. et al.: 『BDI (Beck Depression Inventory) うつ病自己評価尺度』(1961, 1996)

  • Radloff, L. S.: 『CES-D (Center for Epidemiologic Studies Depression Scale)』(1977)

  • 土井 由利子 ほか: 「睡眠障害の現状と対策」に関する報告 (2012)

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