迷子の放送と、帽子を脱ぐ娘 ― ケジミン家観察日記⑦ ―
【前回までのあらすじ】
小6の娘は、少し前から弟のスパイ活動をしている。
学校の下校中、弟が長ズボンの下に半ズボンを履いていることを、ちゃんと報告してきた。
↓↓↓その記事はこちら↓↓↓
先日、家から少し離れた大きなショッピングモールに行った。
いなくなった。
娘が、いなくなった。
いつものことだ。
シールを探しに、ひとりでどこかへ行く。
キッズケータイに電話しても、返信はない。
1時間、探した。
見つからなかった。
妻がスタッフに頼んだ。
「迷子のお知らせをお願いしたいんですが」
私はまた別のエリアを探していた。
「迷子のお知らせをしております。紫の帽子をかぶった――」
少し遠くに、紫の帽子をかぶった娘の後ろ姿が見えた。
ホッとした。
足が動いた。
その次の瞬間。
放送がまた流れた。
「迷子を探しております。紫の帽子をかぶった――」
娘が、スッと帽子をぬいだ。
背中を向けたまま、帽子を背中に隠した。
このスパイ野郎。
弟の監視で培われた実力を、こんな場所で発揮するな。
その後、捕まえた。
怒る気力もなく、なんだか笑ってしまった。
娘は怖い顔をしていた。
「なんで帽子脱いだの?」
「……暗かったから」
暗くない。
ホッとした気持ちよりも、
迷子の放送の緊張感を、今も少し思い出す。
うちの娘は、少し自由すぎるのかもしれない。
でも、たぶん大丈夫だ。
スパイの訓練は、ちゃんとできている。
韓国出身、日本在住16年。
なんとか流れ着いて父になった。
上の娘はわりと穏やか。
下の息子は、毎日ちょっと濃い。
