企業型DC(確定拠出年金)の放置は大損|今すぐ見直すべき運用設定と出口戦略
「会社で確定拠出年金に入ってるらしいけど、よくわからないから触っていない」。
入社時の説明会で聞いたきり、一度もログインしたことがない。そんな人が実は多いです。
わたしの周りでも、企業型DCの運用を「元本確保型(定期預金)」のまま何年も放置している同僚が何人もいました。
これ、ものすごくもったいないんです。20年、30年と放置するだけで、退職時の受取額に数百万円の差がつくことも珍しくありません。
この記事では、企業型DCの基本から、運用商品の選び方、年齢別の配分の考え方、そして意外と知られていない出口戦略まで、まるごと解説します。
「なんとなく放置していた」という人は、この記事をきっかけに今日ログインしてみてください。たった30分の見直しで、老後の資産が大きく変わります。
そもそも企業型DCとは?──会社が掛金を出してくれる「自分年金」
企業型DC(企業型確定拠出年金)は、会社が毎月きまった額の掛金を出し、はたらく人が自分で運用する商品を選んで老後のお金をつくる制度です。
「確定拠出」という名前のとおり、出す金額はきまっていますが、もらえる金額は運用のなりゆきによって変わります。
毎月の掛金は会社がもってくれるので、自分のお給料からひかれることはありません。会社によっては「マッチング拠出」として、自分でもプラスで掛金を出せることもあります。
掛金の上限は、他の企業年金がない場合は月55,000円、ある場合は月27,500円です。
企業型DCと退職金の違い
これまでの退職金のしくみは、会社が運用をまかない、やめるときにまとまったお金をもらえるものでした。運用のリスクは会社がかぶっていたのです。
いっぽう、企業型DCでは運用のリスクをはたらく人が引きうけます。うまく運用すれば退職金より多くもらえますが、ほうっておくとほとんど増えません。
つまり「自分で運用しなければ損をする」仕組みなのです。
なぜ「放置」がダメなのか──定期預金の機会損失を計算する
おおくの企業型DCでは、はいったときのデフォルト設定が「元本確保型」の定期預金になっています。
元本確保型のりまわりは、いまほぼ0.01〜0.1%。月1万円を30年つみたてても、りそくはわずか数万円です。もとのお金360万円にたいして、ほぼふえていない状態です。
一方、全世界株式のインデックスファンドの過去30年間の平均リターンは年5〜7%程度です。
仮に月1万円を年利5%で30年間運用した場合、元本360万円が約832万円になります。定期預金との差は約470万円です。
この差は掛金が大きいほど広がります。月2万円なら約940万円の差、月3万円なら約1,410万円の差です。
「もとのお金が減るのがこわい」という気持ちはわかります。でも、20年いじょうの長い運用であれば、世界株式インデックスはこれまで一度もマイナスになったことがありません。
時間を味方につけられるDCこそ、リスクを取って運用すべきです。
運用商品の選び方──インデックスファンド1本でいい理由
企業型DCの運用ラインナップには、定期預金、ほけん、国内さいけん、国内株式、がいこく株式、バランス型ファンドなど、10〜30本ほどの商品がならんでいます。
「多すぎて選べない」という声をよく聞きますが、結論はシンプルです。
おすすめは「外国株式インデックスファンド」1本
運用期間が10年以上あるなら、外国株式(先進国株式または全世界株式)のインデックスファンドを100%にするのが最もシンプルで効果的です。
インデックスファンドとは、マーケット全体のうごきに連動する投資信託のこと。信託報酬(運用コスト)がひくく、アクティブファンドに長い目で見て勝つことがデータでしめされています。
企業型DCの商品名は会社ごとに異なりますが、「外国株式」「先進国株式」「MSCI」「全世界」などの名前が入った商品を探してください。
信託報酬は0.1〜0.3%程度のものを選びましょう。1%を超えるアクティブファンドは避けるのが無難です。
バランス型ファンドはやめたほうがいい?
「株式と債券を自動で分散してくれるバランス型ファンドはラクでいいのでは?」と思うかもしれません。
たしかにラクですが、バランス型は信託報酬が高めのものが多い。また、若いうちから債券の比率が高いと、長期リターンが大きく下がります。
40代後半以降でリスクを下げたくなったら、そのタイミングで自分で配分を変えればいい。若いうちは株式100%で攻めるのが合理的です。
「スイッチング」と「配分変更」の違い
配分変更は、今後の掛金の投資先を変えること。スイッチングは、すでに積み立てた資産の投資先を入れ替えることです。
定期預金で放置していた人は、「配分変更」と「スイッチング」の両方をやる必要があります。配分変更だけだと、過去に積み立てた分は定期預金のまま残ってしまいます。
スイッチングには手数料がかかる場合もあるので、事前にDCの管理サイトで確認してください。
年齢別の資産配分ガイド──20代と50代では戦略が違う
企業型DCの運用でたいせつなのは、年齢にあわせてリスクの取り方を変えることです。
20〜30代:株式100%で攻める
退職まで20〜30年いじょうあるこの時期は、運用できるながさが最大のつよみです。おおめに値下がりしても、時間がみかたになって回復するかのうせいが高い。
外国株式インデックス100%の配分がおすすめです。「リーマンショック級の暴落が来たらどうする?」と不安になるかもしれませんが、2008年のリーマンショック後も、5年で元の水準に戻っています。
40代:株式80%+債券20%を目安に
退職まで15〜20年。まだじゅうぶんにリスクが取れる時期ですが、すこしずつ安定した資産(国内さいけんや先進国さいけん)をまぜはじめてもいいでしょう。
株式80%、債券20%くらいの配分が一つの目安です。ただし、他に十分な資産がある人は株式100%のままでも問題ありません。
50代:出口を意識して徐々にリスクを下げる
退職まで10年をきったら、受け取りのちょくぜんに暴落がくるリスクにそなえる必要があります。
55歳いこうは株式のわりあいを50〜60%にさげ、さいけんや元本確保型をふやしていくのがよくあるパターンです。
ただし、60歳いこうも運用をつづけるという選択肢もあります。いっかつで受け取らないなら、あわてて安全な資産にうつす必要はありません。
出口戦略──「一時金」と「年金」どっちが得か
企業型DCは、原則60歳以降に受け取れます。受け取り方は3つです。
受け取り方1:一時金(一括受取)
退職所得控除がつかえるため、税金がおおはばにかるくなります。勤続30年なら1,500万円、勤続20年なら800万円までがひかぜいです。
退職金が少ない人、または退職金がない人にとっては、一時金受取が税制上もっとも有利になるケースが多いです。
受け取り方2:年金(分割受取)
5年、10年、15年、20年などの期間を選んで分割で受け取ります。公的年金等控除が使えますが、控除の枠は公的年金(厚生年金・国民年金)と合算です。
公的年金がおおい人は、DC年金をくわえると控除のわくを超えて課税されることがあるので気をつけてください。
受け取り方3:一時金+年金の併用
一部を一時金で受け取り、残りを年金で受け取る方法です。退職所得控除の枠内で一時金を受け取り、残りを年金にすれば、税負担を最小限にできます。
いちばんよい受け取り方は、退職金があるかないか、ほかの所得、もらえる年金の額によってちがいます。退職の数年まえから、シミュレーションをしておくことをつよくおすすめします。
受け取り方で手取りが数百万円変わることもあるので、ここは真剣に考えるべきポイントです。
転職・退職したときの手続き──放置するとさらに損する
企業型DCは転職や退職のときに「いかん手続き」がひつようです。この手続きをほうっておくと、「自動いかん」されて大きなそんしつが発生します。
自動移換の3つのデメリット
1つ目は、運用がストップすること。自動いかんされると、お金は現金のままどこにもとうしされない状態になります。とうぜん、リターンはゼロです。
2つ目は、手数料がかかること。自動いかんのときに4,348円、さらに毎月52円のかんり手数料がひかれつづけます。
3つ目は、加入きかんにカウントされないこと。60歳で受け取るためにはさいてい10年の加入きかんがひつようですが、自動いかんのあいだはカウントされません。
転職先に企業型DCがある場合
転職先の企業型DCに資産を移換します。転職後6カ月以内に手続きしてください。
転職先に企業型DCがない場合、またはフリーランスになる場合
iDeCo(個人型確定拠出年金)に移換するのが最善です。iDeCoなら、自分で運用商品を選んで運用を続けられます。
手続きは運営管理機関(SBI証券、楽天証券など)に口座を開設して移換申請をするだけ。放置だけは避けてください。
まとめ──今日やるべきことは「ログイン」だけ
企業型DCは、会社が掛金を出してくれる「タダで使える投資制度」です。
これを活用しないのは、毎月もらえるボーナスを受け取り拒否しているようなものです。
この記事のポイントをまとめます。
・デフォルトの定期預金のまま放置すると、数百万円の機会損失になる
・外国株式のインデックスファンドを選ぶのが最もシンプルで効果的
・若いうちは株式100%で攻め、50代から徐々にリスクを下げる
・受け取り方(一時金・年金・併用)で手取りが大きく変わる
・転職・退職時は必ず移換手続きをする(放置は最悪)
まずは今日、企業型DCの管理サイトにログインしてください。自分の資産残高と、今どの商品で運用されているかを確認する。それだけでOKです。
「知らなかった」を「知っている」に変えるだけで、老後の安心はぐっと近づきます。
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