「異質」を期待し、「同質」で評価する矛盾。― 外国人材をすり潰す“期待と評価”の致命的なズレ―
※本記事は「外国人材採用を構造から整理するシリーズ」の一部です。制度解説ではなく、外国人材採用を構造から考える試みです。制度の詳細や適用可否は最新情報をご確認ください。
最初は「人手不足の解消」という切実なニーズから始まったはずの外国人材採用。しかし、面接を重ね、彼らの高い専門性や意欲に触れるうちに、企業側の期待は自然と膨らんでいきます。
「彼らなら、組織に新しい風を吹かせてくれるのではないか」 「将来のイノベーションを牽引する人材になるかもしれない」
こうした前向きな期待を持つこと自体は、本来喜ばしいものです。しかし、この「期待」の裏側で、外国人材の意欲を静かにすり潰す「評価制度との致命的なズレ」が進行していることに気づかざるを得ません。
1.「イノベーションの期待」と「同質性の評価」の矛盾
採用の入り口では「異質な強み」や「新しい視点」を大いに期待して迎え入れたはずが、いざ半年後、1年後の「評価」の時期になると、現場では大きな矛盾が生じる。
経済産業省の資料などでも指摘されている通り、従来の日本型雇用の基軸は、良くも悪くも「同質性」と「企業主導のキャリア形成」にあります。
多様な人材を受け入れてイノベーション(生産性向上)を起こしたいと願いながら、いざ彼らを評価する段になると、私たちの組織のOSは無意識のうちに「自社のやり方への適応度(=同質性)」や「横並びの年次」を評価のモノサシとして使ってしまうケースは書くなくありません。
「異質であれ」というアクセルを踏んで採用したのに、評価の場面になると「同質であれ」というブレーキをかける。この構造的な矛盾(ダブルバインド)こそが、彼らの上昇志向を押さえつけ、活躍の場を奪ってしまいます。
2. 評価制度がもたらす「同化(Assimilation)」のパラドックス
ズレを放置した結果、最悪のケースとして何が起こるのか。それは、彼らが不満を抱いて「早期離職する」ことだけではありません。
もっと恐ろしいのは、賢く適応能力の高い外国人材ほど、「この会社では、自分の専門性や異質な意見よりも、日本人と同質化することが最も評価されるのだ」と悟ってしまうことです。
ダイバーシティ&インクルージョンの学術的な研究において、組織への受け入れ度は高いものの、個性の発揮が奨励されない(評価されない)状態を「同化(Assimilation)」と呼びます。 彼らは組織で評価されるために自らの異質な強みを封印し、組織に「同化」していきます。そして数年後、現場に残るのは、イノベーションの風を吹かせるグローバル人材ではなく、ただ日本語に癖があるだけの、同質化された社員です。
私たちが無意識に運用している評価制度(モノサシ)が、せっかく採用した彼らの「牙」を自らへし折っている。これこそが、同化のパラドックスです。
まとめ:.外国人採用は「組織設計」を写す鏡
彼らの活躍を阻んでいるのは、本人の適応力不足ではありません。私たちが無意識のうちに維持し、疑うことすらしなかった「日本人向けの古いOS(同質性を重んじる評価制度)」の限界です。
そして、この「頑張っても専門性で評価されない」「同質化することが優先される」という評価制度のバグに絶望し、牙を抜かれているのは、果たして外国人材だけでしょうか。 実は、同じ仕組みのなかで、自社の優秀な若手社員や、中途採用の日本人材もまた、静かにモチベーションを落としているのではないでしょうか。
外国人材採用とは、採用活動であると同時に、自社の組織文化や評価制度の「現在地」を鮮明に映し出す、残酷な鏡でもあるのです。
次回 04 │ 自社を映し出す「鏡」になる
シリーズ 外国人材採用を「構造」でとらえ直す
01 │ 国内採用の「延長」ではない
02 │ どの「市場」のルールで戦うか
03 │「期待」と「評価」の致命的なズレ
04 │ 自社を映し出す「鏡」になる
05 │ 在留期限という「時間軸」
06 │ 日本語力という曖昧な尺度
07 │ 制度を「設計図」と見る
08 │ 構造で捉え、知見を繋ぐ
