「おじいちゃんとおばあちゃんがいる暮らし」
ヨウ君の家には、お父さんとお母さんとおじいちゃんとおばあちゃんがいる。あと、妹のみっちゃんと、雑種犬のタロウもいる大家族。
でも僕の家には、お父さんとお母さんとお姉ちゃんがいるだけなので、おじいちゃんとおばあちゃんと一緒に暮らすというのが、どういうことなのかがわからない。
「ヨウ君。昨日の宿題、難しかったよね~」
小学三年生の僕は、三年生に上がってから宿題のレベルが一気に上がったように感じている。
「そうだね。でも、すぐに解けたよ」
それは、ヨウ君も同じだったはずなのに、そんなことを言うから、僕気になっちゃった。
「どうしてすぐに解けたの? 解き方がわかったの?」
「ううん、僕にはわからなかったけど、おじいちゃんが教えてくれたの」
「おじいちゃんが?」
僕の家にはいない、おじいちゃんの名前を言われて、僕は驚いてしまった。
「おじいちゃんって、小学三年生の問題がわかるの?」
僕の家にはおじいちゃんはいないけど、電車を乗り継いだ先の家にはおじいちゃんがいる。だから、おじいちゃんがどんな人なのかを知らないわけではないんだ。
でも…
僕の知っているおじいちゃんは、勉強ができる人のようには見えなかった。もちろん、おじいちゃんとおばあちゃんの家に宿題を持っていったことがないから、本当にできないのかどうかはわからないけど。
時間は過ぎて、クリスマスの日になった。12月25日は学校へ行くと、クラスメイトとどんなプレゼントをサンタさんから貰ったのかの話で、いつも盛り上がっている。
「ヨウ君! ヨウ君のところには、サンタさんは何を届けてくれた?」
「僕のところはね、カードゲームと双眼鏡だったよ」
「え?え?どういうこと?」
「何が?」
ヨウ君は首をかしげているけど、僕も同じように首をかしげた。
「だってサンタさんは、1人につき1つのプレゼントを持ってくるものじゃないの?僕のところは毎年1つだよ」
「そうなの?でも、僕のところは毎年2つくるよ」
「えー!?」
僕は驚いて、他のクラスメイトにも聞いてみたけど、何とサンタさんは人によって違うみたいで、プレゼントを2つ置いている家とプレゼントを1つしか置かない家があるみたい。
どうしてなんだろう?
そして、冬休み。僕はヨウ君のおじいちゃんとおばあちゃんのことも気になったし、ヨウ君の家に遊びに行くことにしたんだ。
「こらー!!ヨウ!!」
すると、家の外にいても聞こえるぐらいの大きな声が聞こえてきた。
僕は怖くなって、インターフォンが押せなくなってしまったんだ。
「おや、ヨウ君のお友だちかい?」
優しくて、ふんわりとした声が聞こえて振り向いてみると、そこにはおばあちゃんがいた。
「あ、はい…でも、あの……」
僕はどう言っていいのかわからなくなり、チラッとヨウ君の家を見る。
「いつも言ってるでしょ!あんたって子は!!」
また家の中から、大声が聞こえてくる。
ヨウ君が何をしでかしたのかはわからないけど、お母さんはかなり怒っている。
僕もお母さんに怒られることがあるからわかるんだけど、お母さんは一度怒り出したらしばらくは怖いままって言うことが多いんだ。だからきっと、しばらくはこの怒鳴り声が聞こえてくると思う。
「おやおや、賑やかだねぇ」
だけどおばあちゃんは、怖がることなく楽しそうに言っている。それが僕にはすごく不思議だった。
「ちょっと待っててね、ぼうや」
おばあちゃんは優しくそう言うと、怒鳴り声の聞こえる家の中に入っていく。僕はこんな優しそうなおばあちゃんを1人で行かせて大丈夫なのかなとも思ったけど、僕にはただ見守るしかできなかったんだ。
そして5分も経たないうちに、ヨウ君が一人で家から出てきた。泣いているかなとも心配したけど、ヨウ君の顔は晴れやかなものだった。
「行こう!」
「えっ?」
ヨウ君は僕の手を引いて、走り出した。僕には何がどうなっているのか、さっぱりわからなかった。
公園に着くとヨウ君は、あいていたブランコに座った。僕も隣のブランコに座った。僕は不思議に思っていることを聞いてみることにした。
「ねぇヨウ君。すっごい怒られていたみたいだったけど、僕と遊んでいて大丈夫なの?」
「うん、全然平気!」
「どうして?」
「うーん、どうしてって言われても」
ヨウ君は、それがまるでいつものことだからと言わんばかりの顔で首をかしげる。
「あっ、そうだ。おばあちゃんに会ったんだろ?」
「え?うん、会ったけど…」
「僕がいつもお母さんに怒られていると、おばあちゃんが間に入ってくれるんだ。それで、お母さんも怒るのをやめるんだよ」
僕はその話に驚いた。あんな優しそうなおばあちゃんが間に入って、お母さんの怒りを鎮めることができるなんて。
「それに、おばあちゃんも、おじいちゃんもそうなんだけど、お母さんの怒りを鎮めてくれた後で、こっそり僕に、何で怒られたのかはわかっているか?って質問をしてくるんだ」
「何で怒られたのか?」
「うん、だから僕は怒られている最中からいつもそれを考えるようになったんだ」
そう言うヨウ君は、同じ小学三年生なのに、少しだけ大人びて見えた。
おじいちゃんとおばあちゃんが、もし僕の家にいたら、僕もそんな風になれたのかな。僕はちょっとだけ、ヨウ君が羨ましくなった。
