【医師エッセイ】小児科医20年
20年前の私は、まだ小児科医を目指す医学生でした。ただ、当時の私は絶望感がひどくありました。なぜなら在学中に一生背負わなくてはいけない持病、1型糖尿病を患ってしまったからです。主治医や友人から医師は無理だとさんざん言われましたし、小児科医は少子化に伴い先が見えないからやめておくようにと言われ、私は途方に暮れていました。目指したいのに、目指せない。そんな悶々としたものを抱え、医大を卒業後は、高齢化社会を見越した老年病科医を目指すことにしました。自分の信念を曲げたという事です。ですが、何の因果か運命か、老年病科医のローテーションで1番目に研修を受けたのが小児科でした。そこで、私は小児科の現状を知りました。コンビニ受診、少子化と逆風吹き荒れる中でも、子どもたちのために奮闘する小児科医の先輩たち。その姿を見て、私はやはり小児科医として生きていきたいと思いました。
それから20年。私は子どもを診る医師として医師人生を続けています。ただ、医師の友人には、いまだに「小児科って厳しそう。いや厳しいだろ?」と勝手に決めつけられて、その言葉が心に刺さることもあります。他人の評価を気にしすぎなのかもしれませんが、それが私です。それに、「厳しい」からといって、そこに医師がいなくなれば、現代に生きる子どもたちは一体どうなるのでしょう。医師は誰のために存在しているのかということに目を向ければ、他人からの評価は気にならなくなるはずなのですが、私はどうもそこまで突っぱねることができません。
ただ50歳になった今、わかることもあります。それは人には色々な強さがあるという事です。頭が強い、腕っぷしが強い、そして心が強い。私が研修医の時に憧れた先輩は、心が強い先輩でした。子どもしか診られない。潰しがきかない。そんな風に、今でも陰口言われることもありますし、分かり合えるのは小児科医の仲間だけ。でも悪くありません。
私は私なりの哲学を身に着けました。
「小児科医は子どもたちのヒーローだ。私は子どもたちのために頑張っている」
先輩、そして小児科医の仲間たちと、小児科医を選んだ道を共に歩んできた20年。ともに競い合ったり、飲んで話し合ったり、論文、研究、子ども診療を続けてきました。その過去を振り返ると、やはり私はこの道を選んで正解だったと思います。これまでの人生で関わってきたみんなに、大声でありがとうと伝えたい。

