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命の誕生に立ち会える感動とともに

私は医師として最新医療に携わっています。それは少子化の進む日本において、なくてはならない分野、生殖補助医療です。生殖補助医療には、配偶子(卵と精子)や受精卵(胚)を体外で取り扱う高度不妊治療があります。それを行うには非常に高度な医療技術が必要になります。

本来であれば卵管・子宮内で起きる受精そして発育および胚盤胞まで、体外で育て子宮にお返しする培養という工程を、最大限に質がいい状態で行う必要があります。日々、ああでもないこうでもないと、医療機器も医療技術も高みを目指して進歩を続けています。

この高度不妊治療によって1978年に、イギリスで世界初の高度不妊治療児が産まれました。日本では1983年に初めての高度不妊治療児が誕生しています。少子高齢化が進む日本では、1990年代以降、不妊治療の需要が急速に増加し、それに伴って高度不妊治療の実施件数も増えていきました。2000年代には、毎年数万人規模で高度不妊治療児が誕生するようになり、もはや「特別な存在」ではなくなりました。

2019年には日本での高度不妊治療による出生数が5万人を超え、全出生数のおよそ15人に1人が高度不妊治療児という時代になっています。また2010年、ロバート・G・エドワーズ博士は高度不妊治療技術を開発したことで、ノーベル生理学・医学賞を受賞しました。

高度不妊治療には体外受精と顕微授精があります。体外受精は経腟超音波下に卵巣から採取した卵子を体外で精子と受精させて、2〜6日間体外で培養してできた胚盤胞を子宮に返す方法で、より自然な受精に近いといえます。現在は機器分析によって、精液所見をコンピュータで客観的に検査することが可能になりました。特に精子の運動の質は観察者によって評価が分かれやすいため、機械に客観的に判断させることでより正確な精子の分析が可能です。さらに、機器分析によって精子の直線速度・曲線速度・頭部振幅・頭部振動数などより細かな運動の質が解析できます。そして、精子DNA断片化解析装置(フローサイトメーター)によって精子頭部に存在するDNA断片化の割合が分かるようになりました。断片化が高い場合では、受精率、胚発生率、妊娠率が低下したり、流産や子の異常の頻度が高くなったりすることが報告されています。また男性の不妊に関わらず、加齢に応じてDNA断片化が増加することがわかっており、健康状態の判断にもなります。

顕微授精は顕微鏡下で、生殖補助医療胚培養士が1つの精子を直接1つの卵子に注入して受精させる方法です。今では卵子の紡錘体を傷つけることなく穿刺し、高倍率観察で形態が良好な精子を選んで顕微授精の実施ができるようになりました。これはとても重要なことです。また卵子の成熟を確認し、現在では卵子細胞膜を吸引することなくパルスを使用して破り、卵細胞質内に精子を注入します。これにより卵子に与えるダメージを小さく抑えることができるようになったのです。

これまで赤ちゃんを希望しても精子の数が極端に少ないことや、精子の運動能力が低いことによる男性不妊、卵管障害や子宮内膜症や原因不明不妊と言った従来の不妊治療で妊娠に至らなかった方でも、高度不妊治療によって妊娠の可能性をもたらしました。これは素晴らしい技術革新ことです。これから先も、さらに進歩していくことになると思うので、いつかは99%の不妊治療の成功が望めるようになる日も訪れるかもしれません。

しかし、いくら医療機器が進歩してもそれを扱う人間が使いこなせなくては意味がありません。生殖医療専門医、生殖補助医療胚培養士、看護師や臨床心理士といった高度不妊治療に直接関わる医療従事者だけではなく、不妊の原因解明、新たな治療法の開発や医療機器の開発に携わる研究者の努力やつながりがあってこそ、生命を育むための高度な医療が生まれているのだと考えます。

命の誕生に立ち会える感動、そして御両親の笑顔が見られる喜びは何物にも代えられないものです。奇跡的な生命の恵み、尊い生命の始まり、そして未来への希望が、我々の責任感のある仕事へとつながっていることを考えると、人は支え支えられて生きているのだと改めて実感しています。

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