深く考えずに直ぐに口に出す性格の方がいらっしゃいます。
斯く言う自分自身も子供の頃、感情を制御できずに何か波風を立たせてしまう、そうした空気の読めなさが通信簿に‘落ち着きがない’みたいな評価をされたりもした事を思い出します。と言っても本人は情緒不安定の自覚は全くありません。
徐々に成長と共に社会の荒波の中で次第に精神面は矯正され、‘空気を読む’ ことが発言する重要ポイントであることに気付いていきます。
しかし、それは社会の中で歯車へと洗練されていく過程での必須に過ぎず、現代のソーシャルメディアにおける匿名も実名も関係なく、承認欲求や思いの吐露の原動力はもしかすると、成熟や達観、老成されない脆弱な精神性から起因するものではないかとふと感じる事があります。
‘空気を読む’というのはある意味、自己保存です。群衆心理に繋がる、自分は関係のない立場でいようと意図的な消極行動でもあります。
ここまでのくだりで何を思うか…ですが、不安を口にすることが悪と捉えられる、昨今の体裁的な秩序があまりにも優先された現代日本社会の一端を垣間見させられている気がしています。
実は無意識に自然に振る舞うその人の有り様から、何を考え、逆に学べるものもあるかもしれません。自分自身の器の尺がどうなのかを知る機会でもあります。
冒頭の深く考えずに口に出す行為というのは、その人が確信的でない場合、仮にその言葉がどのように相手にそして第三者に伝わり、波及していくかを考えていないとなると、恐らく脆弱な心の何か、捉えどころのない生理的な欲求が存在するのかもしれないと推察します。
逆に自然体に見せかけて狙う確信的な言動であれば、どうでしょう。
その後の波及や影響を計算することになります。
内部告発やある方向に意思表示をしたい時にその‘確信’は生まれてくると考えるのです。
得てして、そうした‘確信’は映像メディアよりも文書で残す傾向があります。
言葉という瞬発性よりも、文字による表現に理性的な説得力を感じるからです。
この理性こそ、教養の積み重ねであり、人格であり、判断能力の根拠とも言えるのです。人は誰でもこの理性がすべての拠り所になっている筈なのですが、前の節でお話しした捉えどころのない生理的な欲求と各自の理性が堪えずぶつかり合っているのでしょう。
この世において結果、さまざま可視化される現在がどこか歪にも思えるのは、これまたアップデートされた理性に拠るものなのか否か、実に分からないのも確かなのです。
【漁港口の映画館 シネマポスト 現在上映作品『ジョン・バージャーと4つの季節』(9月26日迄公開)のご紹介】

製作年 2015年
製作国 イギリス
配給 BABELO
上映時間 90分
スタッフ
監督 ティルダ・スウィントン、コリン・マッケイブ、バルテク・ヅィアドーシュ、クリストファー・ロス 製作 ティルダ・スウィントン、コリン・マッケイブ 音楽 サイモン・フィッシャー・ターナー
キャスト
ジョン・バージャー、ティルダ・スウィントン
ティルダ・スウィントンが製作を手がけ、自身が強く影響を受けたイギリスの作家ジョン・バージャーの晩年の姿に迫ったドキュメンタリー。
1950年代末のデビューから2017年に他界するまで、美術批評、詩作、戯曲、小説など多彩な分野で表現活動を展開したジョン・バージャー。ブッカー賞を受賞した小説「G.」や世界的ロングセラー「イメージ:視覚とメディア」などで知られ、近年では韓国や日本でも多くの著作が翻訳され評価が高まっている。
そんなバージャーを敬愛し、1980年代から親交を深めてきたスウィントンが、2009年にロンドンの実験的映像プロダクション「デレク・ジャーマン・ラボ」と共同で本作を企画。スウィントンと2人の子どもたち、バージャーを慕うアーティストたちが、フレンチ・アルプスの村カンシーに暮らすバージャーの元を訪ね、戦争の記憶、人間と動物、政治とアート、そして次世代への継承について対話を繰り広げる姿を、カンシーの四季に沿って編まれた4つのチャプターを通して描きだす。2016年・第66回ベルリン国際映画祭出品作品。
