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アカデミー賞2026 感想|作品賞・脚本賞・助演女優賞を語り尽くす——PTAの初オスカーと罪人たちの16ノミネート

「シネマ先生とトックの映画漫談」は、全ての映画を観た男シネマ先生(55)と、映画をもっと好きになりたい大学生トック(19)が、二人で映画を語るAI×人間ハイブリッド型のレビューブログです。今回は第98回アカデミー賞を記念した特別回。いつもの一本じっくりレビューとは違う、授賞式を観た直後の感想戦をお届けします。


シネマ先生 ── 55歳、元映画評論家。毎年オスカーの夜はそわそわするらしい。映画のことなら何でも知っているが、今年の助演女優賞は読めなかった。

トック(あだ名) ── 19歳、大学生。映画は好きだが詳しくはない。人生初のオスカーをリアルタイムで観て、先生に感想を持ってきた。


トックの初オスカー——コナン・オブライエンが灰になった夜


トック「先生、初めて観ました。オスカー。ちゃんとリアルタイムで」
先生「……ほう」
トック「いや、まだ全然まとまってないんですけど」
先生「いい。今日はまとまらなくていい」
トック「じゃあ言っていいですか。コナン・オブライエン、途中で灰になりました」
先生「……何の話だ?」
トック「短編ドキュメンタリー賞のとこで急にジミー・キンメルが出てきて、『コナンが陽の光に当たって灰になったので私が引き継ぎます』って。罪人たちのヴァンパイアと掛けてるんですよね?」
先生「唐突だな君は。しかし、まあ、だろうな。歴代司会者同士のああいうやり合いは、オスカーの楽しいところだ」
トック「僕、初めてだったんで、あれが普通なのかと思いました」
先生「普通ではない。だが毎年、何かしら起きる」


脚本賞:『罪人たち』ライアン・クーグラーの止まらない熱量


トック「で、脚本賞の話していいですか」
先生「ああ、罪人たちだったな」
トック「ライアン・クーグラー監督のスピーチがすごくて。なんかもう、喋る喋る。あの熱量ってなんなんですかね」
先生「クーグラーは昔からああいう人だ。フルートベール駅での頃からインタビューでも止まらなくてな。書きたいこと、伝えたいことが溢れている人が書いた脚本だから、罪人たちはああいう映画になったんだろう」
トック「ホラーで、時代劇で、音楽映画で、全部入ってるじゃないですか。普通あんなに詰め込んだら破綻しません?」
先生「する、普通は。だがあの脚本は音楽が背骨になっている。ジュークジョイントで音が鳴り始めた瞬間から、ジャンルの壁が全部消えているんだ」
トック「……先生、ちょっと楽しそうですね」
先生「楽しいからな。良い脚本の話をして楽しくないわけがない」


なかの人:クーグラー監督のスピーチ、なんか親近感ありました。カリフォルニア出身だから話止まんねーよって、私も大阪人なんで分かります。


先生「……急に来たな」
トック「なかの人、毎年オスカー観てるんですか?」
先生「どうなんだろうな。まあ、話の続きをしよう」


作品賞:ポール・トーマス・アンダーソン、30年越しの初オスカー


トック「はい。作品賞、ワン・バトル・アフター・アナザーでしたね」
先生「ああ。ポール・トーマス・アンダーソンに初めてのオスカーだ。監督賞とのダブル受賞だな」
トック「僕、事前に予想してたんですけど、正直、罪人たちに獲ってほしかったんですよ。16ノミネートで、ホラーで、音楽があって。あっちの方が好きだったから」
先生「……ああ。その気持ちはわかる」
先生「私はどちらの作品にも敬意がある。ただ──罪人たちが作品賞を獲る夜を見てみたかったな、という気持ちは、少しある」
トック「ですよね!」
先生「ただな、PTAが壇上に立ったとき……正直、少しぐっときた」
トック「え?」
先生「30年近くやってきて、ブギーナイツ、マグノリア、ゼア・ウィル・ビー・ブラッド。何度もノミネートされて、そのたびに獲れなかった男がようやく手にしたんだ。あの瞬間は……ああ、よかったな、と思った」
トック「先生……」
先生「いや、すまない、話を戻そう。……あと、ちょっと言いたいことがあったんだろう?」
トック「あ、はい。ワン・バトル・アフター・アナザー、2時間50分あるじゃないですか。僕、正直、途中でちょっと長いなって思ったんですよ。それが作品賞って言われると、なんか……うまく言えないんですけど、自分の感覚とオスカーの感覚がずれてるのかなって」
先生「……ずれてるんじゃない。それは別のものなんだ」
トック「別のもの?」
先生「君が映画館で感じた『長い』は、君の体感だ。それは嘘じゃない。一方でアカデミーがあの映画を選んだのは、体感とは別の基準がある。どっちが正しいという話じゃない」
トック「……そう言ってもらえると、ちょっと楽になります」
先生「自分の感覚を疑う必要はない。ただ、別の物差しがあることを知っておくのは悪くない」


助演女優賞:エイミー・マディガン75歳の初受賞——「脚の毛剃らなくてよかった」


トック「あ、話飛んでいいですか」
先生「どこへでも」
トック「助演女優賞のエイミー・マディガン。あの人すごくないですか」
先生「すごかった。75歳で初のオスカーだ」
トック「しかもスピーチで開口一番、『今日は脚の毛剃らなくてよかったわ! ズボン履いてるし!』って」
先生「あれは私も声を出して笑った。あの歳であの舞台に初めて立って、第一声があれだからな。──ウェポンズのあの魔女おばあちゃんそのままだった」トック「そうなんですよ! しかもあの人、旦那さんがエド・ハリスなんですよね。エド・ハリス、4回ノミネートされて一度も獲れてないのに、奥さんが先に獲っちゃった」
先生「まあ、夫婦のことだから何とも言えないが。ただ──カメラがエド・ハリスを抜いたとき、泣いていたな」
トック「はい。あれは、よかったです」
先生「……ああ。何十年もやってきて、報われる夜がある。それも自分じゃなくて、隣にいる人間が報われる夜が。ああいうのを見せられると、な……」
トック「あと、ホラー映画からの受賞って、もうそんなに珍しくなくなってきたんですかね」
先生「まだ珍しい。ゲット・アウトが道を開けて、罪人たちが16ノミネートまで持ってきて、そしてこの助演女優賞だ。少しずつではある。ただ──75歳の新人がホラーで獲る夜、というのは、なかなか痛快だ」


なかの人:マディガンのこと、勝手に「アメリカの林家パー子みたいな魔女おばあちゃん」って呼んでました。


先生「……嫌いじゃないな、その例え」


その他もろもろ


トック「あと気になったの何個かあって。フランケンシュタイン、美術賞と衣装デザイン賞とメイクアップ&ヘアスタイリング賞、技術系ぜんぶ獲りましたね」
先生「デル・トロはああいう作品を撮るために生まれてきた人だからな。あの美術にオスカーを出さなかったら、何に出すんだという話だ」
トック「にしてもNetflix強くないですか?KPOPデーモンハンターズがアニメ賞獲ってるし、ドキュメンタリーも獲ってるし」
先生「まあ、そういう時代だな」
トック「あ、そうだ。F1が音響賞獲ったじゃないですか。あれ、IMAXで観た人にしかわからないってめちゃくちゃ言われてて」
先生「まあ、それはそうだろうな」
トック「それでいいんですかね? IMAXで観てない人には関係ない賞ってことですか?」
先生「関係ないということはないが──映画館の座席が震える体験に賞を出している、というのは確かだ。配信では届かないものが、まだある」
トック「……なるほど」


アカデミー賞について


トック「…………」
先生「……どうした?」
トック「いや、ちょっと黙って考えてたんですけど。僕、今日初めてオスカーをちゃんと観て、一個思ったことがあって」
先生「聞こう」
トック「僕はいつも映画を一本ずつ観てたんですよ。でもオスカーって、一晩で何十本もの映画を並べるじゃないですか。並べると、見えるものがある」
先生「…………」
トック「さっき作品賞のとこで、今の世の中にはこっちの映画が必要、って言ったじゃないですか。あれ、一本だけ観てたら絶対出てこない感想だったと思うんです。罪人たちとワン・バトル・アフター・アナザーが並んでたから、初めて見えた」
先生「……その年の映画産業が、自分たちをどう見たいかの表明なんだ、オスカーは。今年は、抵抗の物語を自分たちに与えたかったんだろう」
トック「……それ、僕が言ったことと同じですか?」
先生「似ているが、少し違う。君は映画の話をしていた。私はアカデミーの話をしている」
トック「……そっか」
先生「だが──君の話の方が、いい話だったかもしれないな」


トック「先生、一個だけ」
先生「なんだ」
トック「ワン・バトル・アフター・アナザー、ちゃんと一緒に観たいです」
先生「……ああ。観よう」


なかの人のひと言

というわけで、特別回ワンバト映画漫談、やります。こうご期待。
初めてアカデミー賞に合わせてリアルタイムで記事を書きました。先生とトックが観た同じ授賞式を、私も同じ時間に観れれば良かったのですが、そんなわけもなく、休憩時間で結果を確認し、気になったスピーチを観ていました。来年はリアルタイムで一緒に観れたらいいなと思います。それではまた。

「本編漫談で深く語っています → 『パルプ・フィクション』考察(#04)——タランティーノの時系列が問いかけるもの」
「映画を語る原点 → AIと人間が本気で映画を語る理由——このブログについて」

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