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【読書】企業家としての国家 -イノベーション力で官は民に劣るという神話

復刻版

出版情報

  • タイトル:企業家としての国家 -イノベーション力で官は民に劣るという神話

  • 著者:マリアナ・マッツカート

  • 翻訳:大村昭人

  • 出版社 ‏ : ‎ ‎ 薬事日報社

  • 発売日 ‏ : ‎ 2015/9/2

  • 単行本 ‏ : ‎ 443ページ

復刻版 出版情報

iPhoneの技術はほどんど米政府が開発した技術

 本書は2013年に出版された『The Entrepreneurial State』の翻訳で2015年に出版された。私は2015年出版のものを読んだのだが、結論から言うと、あまり肯定的な印象を受けなかった。もしかしたら、復刻版を読めばまた違う印象を受けたのかもしれない。解説を積極財政派の論客の一人である室伏謙一が書いているからだ。あるいは同じ著者 マリアナ・マッツカートの書籍『国家の逆襲』であれば、また違う印象を受けたのかもしれない。
 尊敬する元大学教授 Kazさんが『国家の逆襲』について肯定的な感想を書いておられるからだ。

(私はKazさんの一読者に過ぎない。Kazさんは2004年に起きた国立大学の独立行政法人化について、当時の当事者として日本の将来を揺るがす大失政であったと憂慮しておられる。Kazさんは一大学教授としてこの決定に参画することも意見することも何の機会も与えられなかった。この件に関しては何度かKazさんの記事を紹介させていただいていた)。

 あまり肯定的な印象を受けていない本の記事を書くのはどうかなぁ、と思ったのだが、これも読書の記録としておこうと考えて書いてみた。
 そういうのがお好きでない方は、離脱してください〜🙇‍♀️💦。

マリアナ・マッツカートの論旨

著者 マリアナ・マッツカートの論旨は単純だ(→はマッツカートによる論旨の展開。➡︎は私の感想など)。

  • イノベーションが起きるのは小さなガレージからであり、ベンチャー企業がイノベーションを起こす、というのは神話である

    • この神話の後には「だから政府は口を出すな。政府が放っておいてくれれば民間企業だけで勝手にイノベーションが進む」という新自由主義の考え方が続く

      • → イノベーションが起きても、その技術の量産化や普及には莫大にコストがかかる。新自由主義に染まった民間企業はそういった面倒ごとに投資したがらない

  • イノベーションを起こしているのは、実際には国家である。

    • DARPA、AT&T社のベル研究所、ゼロックス社のパロアルト研究所などを中心としたシリコンバレーでコンピューターイノベーションが起きた。それをiPhoneは上手に組み込んだ。CPU,DRAM,HDD,LCDなどのコンピューターの基盤技術やHTTPやHTMLなどインターネットに必要なプロトコルや言語…など技術が今日のインターネットであり、Siriなどに結実している(p196-p197)国家の力で実現したiPhone(p183-p227)。

    • イノベーションにはリスクがつきもの。失敗がつきものである。しかも革新的な核心技術になればなるほど、投資額は大きくなる。そのリスクを取れるのは巨大組織である国家なのだ。

  • ではイノベーション エコシステム(イノベーションが次々起こるサイクルを生み出す仕組み)はどのようなものであるのが、公平サステナブルなのか?

    • → 税金で開発費が賄われ、国家が投資したのに、国民にその利益が還元されていない。これで公平と言えるのか?次なるイノベーションを起こすのに十分な還元がなされているのか?

    • → 本書ではこの問いは提起されているだけである。

本書に手放しで肯定できない理由

 本書の論旨は、至極真っ当であり、なんら反論するところは、ない。だが、著者はある程度うまくいった例として、中国におけるグリーンエネルギーと米国における新薬開発を挙げている。

 うーん。中国のグリーンエネルギーはウイグルの人々を搾取した太陽光パネルでできており、それを世界中に、そして日本にバラマキ、特に日本では環境破壊が行われているのだ。農家や林業は赤字を余儀なくされ、太陽光設置にYESと言わざるを得ない経済状況を作った上で。地球温暖化もウソである、という言説もあるのだ。
 そして新薬開発。これってファウチの組織CDC米国疾病予防管理センター)の悪行の上に成り立っているのだ。567を世界中で経験させられ、米上院公聴会で567💉の真実が明らかになりつつある今、本書を手放しで「良し」と肯定的に評価することは私にはできかねる

 論旨は正しい。だが、国家は何にどのように投資するのか?それを事後、どのように評価するのか?

 それは、国家が債権市場なり、株式市場で投資することよりも、ずっと大事なこと、だ。ましてや大学がファンドを作って投資する…!?本来大学そのものが将来の人材への投資なのではないか?それを株式運用の投資で賄う??
 何かがおかしい気がするのだが…。

 一つの回答は、共通の道徳観であり、共同体意識なのではないか、と考えている(単なる素人の意見ですが…)。もう一つは実業への投資ということもキーワードになりうるのでは、と思う(虚業ではない)。どうだろう?

おわりに

 人間は間違いもするものだ。
 だからこそ、国家による開発には道徳観や共同体意識は不可欠だ(と、力強くいってしまおう)。また公平な経済分配を目指すのであれば、実業への投資という視点も不可欠だと私は思う。

 それも含めて、本書は「物事の半分」のみが書かれている。という印象が拭えない。だが、別の著作や別の版であれば、何かもっと納得感のあるものがあるのかもしれない。
 いずれにせよ、論旨自体は納得感があるし、情報も満載である。ご興味のある方は本書を手に取って、損はない。あるいはご自身のイノベーション観を育てていく一助にするのも一興かもしれない(みなさん、そこまで時間はないか…💦)。




引用内、引用外に関わらず、太字、並字の区別は、本稿作者がつけました。
文中数字については、引用内、引用外に関わらず、漢数字、ローマ数字は、その時々で読みやすいと判断した方を本稿作者の判断で使用しています。
また、文言の間違い、表現のわかりやすさなど、随時訂正しています。ご了承ください。

おまけ:さらに見識を広げたり知識を深めたい方のために

ちょっと検索して気持ちに引っかかったものを載せてみます。
私もまだ読んでいない本もありますが、もしお役に立つようであればご参考までに。

マリアナ・マッツカートの著作

中野剛志の著作

 マリアナ・マッツカートのイノベーション論は、シュンペーターのイノベーション論の流れを汲むという。というわけで、下記も参考として挙げておく。

Kazさんの記事

 記事本文でも書いたがKazさんは元国立大学理系教授。国立大学の独立法人化を深く憂いておられる。そのKazさんによる関連記事。
以前紹介させていただいた時と同じ文言で恐縮だが、ここでも再度ご紹介させていただく。

 日本半導体産業の衰退の理不尽さ…

 さらにKazさんの国立大学の惨状を伝える記事。「もっと具体的な例は、電子ジャーナル費用で財政破綻しそうな各国立大学の図書館です。次の、私のnote記事2つも、是非、国民の皆様に広く読んでいただきたいです」。

「これらを読んでいただくと、今、国立大学、特に地方の国立大学が、国策により危急存亡の瀬戸際に立たされていることがご理解いただけると思います」。…こんなことを元国立大学理系教授に言わせてはいけない。これはどう考えても、政治が道を誤っている。泣いちゃいそうだ…😢。

国立大学理系教授であったKazさんの偽らざる記録。

独立行政法人化は間違い

元地方衛生研究所に勤務されていた方の意見
地方衛生研究所の地方独立行政法人化は間違い

元東大総長・文相の悔恨。遅いよ。

米上院公聴会

 こういう責任逃れをしているからこそ、梅電元大統領は「予防的恩赦」を与えたのではないか?

 ポスト内の動画を見てください。

西洋の敗北


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