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中国の飲食チェーン店研究~プロローグ【美食大国の「勝者」たち】

「中国は美食の国だ。」

そう聞くと、多くの人は路地裏の知る人ぞ知る小さな店や屋台、腕利きの料理人が腕を振るう高級レストランを思い浮かべるでしょう。私の中国通の知人や友人も、「中国に食べに行く」と言えば、大抵そうした店を目指します。

しかし、2009年から現在まで、出張や旅行で71回中国を訪れてきた私が、今もっとも注目しているのは飲食チェーン店です。

「チェーン店なんて、味が画一的で面白くないのでは?」

そう感じる人もいるかもしれません。しかし、それは日本の飲食チェーンのイメージを、そのまま当てはめているからではないでしょうか。

中国は14億人の胃袋を抱える、世界有数の美食大国です。日本の約25倍の広大な国土は地域ごとに食文化が外国並みに大きく異なり、飲食チェーン店が仕掛けるご当地料理は他の地域の人にとっては未知の味を知るきっかけとなっています。また、朝から外食もあたりまえのこの国では人々の味覚にも非常に厳しいものがあり、美味しさは当たり前、それだけではあっという間に淘汰されます。そんな熾烈な競争の中で、全国に数百、あるいは千店規模まで店舗を広げるチェーン店は、味はもちろん、価格、サービス、店舗デザイン、オペレーション、ブランド体験まで含めて、多くの人に支持され続けた「勝者」なのです。

例えば、酸味と辛味が絶妙に調和した重慶発祥の郷土料理「酸菜魚」。この一品を看板商品に据えて急成長したのが「太二」です。料理自体は決して特別なものではありません。しかし安定した大衆受けする味の再現性に加え、洗練された店舗デザインやブランド戦略によって、数百店舗規模の人気チェーンへと成長しました。

マンガ風のキャッチーな看板が目を惹く

更に2010年後半以降、この美食大国では最低限味のハードルをクリアした上で、一歩踏み込んで、「どこで、どのように食べるか」という体験にも価値を見い出す時代に移行してきました。

例えば、古民家や近代産業遺産を美しく再生した空間で知られるカフェチェーン「一尺花园」。そこには単なるカフェではなく、建築や景観を含めた特別な体験があります。空間そのものが目的地となるような世界観は、ブルーボトルコーヒーやスターバックスとは一線を画す魅力を生み出し、地域再開発の目玉として誘致されるようにすらなっているようです。

旧赤レンガ工場の中での寛ぎを提供する一尺花园红窑店(上海市)

中国の飲食チェーンは、料理、空間、デザイン、サービス、ブランド戦略、そのすべてに、日本で知られるKFC、マクドナルド、デニーズようなアメリカ系飲食チェーンとも、日本の飲食チェーンとも異なる進化を遂げています。そして興味深いのは、その進化の方向性が、日本人である私にも驚くほどしっくりくるということです。

中国の飲食チェーン店は、日本の凝り固まった中華料理観の外側にある知らなかった数多くの魅力的な料理と、中国人のみならず日本人も歓迎する飲食サービスの形を気軽に経験できる体験できる場なのです。

70回以上中国に行き、何度も飲食チェーン店で食べ、美味しい、楽しいを感じた私はそれぞれの店がどんな店なのか調べてみたくなりました。このマガジンは、その、隣国の巨大飲食チェーンの企業情報及びブランドフィロソフィーを、主に「百度百科」と飲食チェーンデータベース「窄门餐眼」の情報を日本語訳にする事により、1企業ずつ調べて、その結果を投稿して日本の皆さんに日本語で紹介していこうとするものです。

第1回は私が最も注目する「一尺花园」の企業情報をお届けする予定です。


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