坂本龍一の記憶と”遺したもの”
ー坂本龍一はお好きですか?ー
つきふねさんの問いかけに少し躊躇う私がいました。
いや、どちらかと言えば好き。
けど、ファンというほどではない。
世界的なアーティストなので、もはや好きとか嫌いとか、ファンとかファンでないとか、そういうことは超越した存在なので、私としては「別格」の位置付け。
そんな彼の大阪で開催されている展覧会へのお誘いを受けたのです。
だいたい坂本龍一は聞くもので、観るものではないという認識なので、展覧会と聞いてもまるでピンと来ない。
だからこそ逆にどんなものなのか気になって興味が湧き、行ってみたいと思いました。
まるで異次元の「うめきた」
直接、会場前で待ち合わせたのですが、上のHPから会場名を見逃していて、「グラングリーン内」としか見ておらず、行ってみれば案内板ぐらいはあるだろうと高をくくっていたのがいけなかった。
あとでつきふねさんに言われて確認すると「VS.」とあるではありませんか!
いやこれが会場名とは思えないって!
この一件だけでもつくづく年を感じてしまいました。
そういう事もあって私は少し遅れてしまい、暑い中待たせてしまい申し訳ないない事をしてしまいました。
大阪人である私の方が迷うという、なんとも情けない事態ですが、言い訳をさせていただくと、昨今の梅田の開発状況には地元民も追いつけていないのが現状で、特に大阪駅の北側は私たち世代がよく通っていた若い頃の面影はまるでなく、すっかり様変わりしているのです。
確かこの辺りは、電車のコンテナや機材などが置かれたただっぴろい空き地みたいなところだったと記憶しています。
今回行ってみると、まるで異次元の大阪に迷い込んだかのように、別世界が広がっていました。
大阪生まれの大阪育ちだけど、「おのぼりさん」状態です💦
ここでもまた、つきふねさんの介護は必要だったのです(笑)


イスやテーブルが置かれて憩いの場となっている。
抽象的なアートの世界

配布リーフレットによる展示コンセプトは、
「音」「時間」「記憶」であり、坂本龍一が生涯を通して探究し続けたものです。
テーマに合わせてさまざまな展示があり、大体が自然や何でもない日常の風景が切り取られ、それらがアート的に表現されているのです。
中には、よくわからないものもあったりしましたが、各部屋のBGMはヒーリングミュージックで、うっかりすると寝てしまいそうなほどのリラックス空間となっていました。

採光豊かな吹き抜けになっている。
入ってすぐに、「撮影OK」「SNS拡散OK」とあったので、遠慮なく撮ってnoteにも掲載させていただきます。
(ただし一部は撮影禁止でした。)

案内パンプレットより
1
雨や霧をイメージした
インスタレーション

パンフレットによると、
1990年、共生をテーマに21世紀へのメッセージを込めて制作されたオペラ「LIFE」からイメージされた部屋。
一歩中に入ったとたん、想像もできなかった異空間にハッとしてしまいました。
これは直方体というのでしょうか?
それが天井に等間隔に吊るされ、その中で映像が目まぐるしく変化し、床にも投影されています。
霧が立ち込めたかと思うと雨が降り、やがて激しくなるという天候の様子がそのまま真下にも映し出されているのです。
自然現象が小さな直方体の中で繰り広げられ、それが暗い部屋の中だからこそ一つ一つが迫ってくるようです。
まさに異次元をさまよっているように錯覚してしまいました。
2
愛用のグランドピアノ

演奏中はゆっくり座って聴ける。
坂本龍一愛用のグランドピアノ。
彼の演奏データがプログラムされていて、定期的に自動演奏されていました。
①aqua
②energy flower
③put your hands up
④鉄道員 Poppoya
⑤Merry Chiristmas Mr.Lawrence(戦場のメリークリスマス)
とにかく素晴らしい!
壁に映し出された映像と共に次々と流れる彼の作品に、あらためて聞き惚れてしまいました。
(動画に収めていますので、後ほど!)
3
バシェの音楽彫刻

バシェ??音楽彫刻??
なんだそれ??
正直初耳だったので、さっぱり意味がわかりませんでした。
パンフレットにも基本的なことは省かれているのを見ると、坂本龍一を知る人たちの間では当たり前のことなのかもしれません。
しかし無知な私は検索してみるしかありませんでした。
「バシェの音響彫刻」とは、ベルナール・バシェ(1917–2015)、フランソワ・バシェ(1920–2014)の兄弟によって考案された音の鳴るオブジェです。
中央のモニター映像は坂本龍一が試行錯誤しながら、それらを奏でる動画を流しています。
展示されていたものを観ると、確かに楽器なのですがデザイン的にはオブジェとして十分機能するオシャレなものでした。

これらは1970年の大阪万博の「鉄鋼館」で展示されたもの。
それぞれに日本人の名が付けられているのは、彼らがバシェの助手の一人として制作や修復に深く関わった方々だからです。
それにしてもどれもモダンでハイセンスです。
4,5
日常と追憶

暗い部屋の中で様々な大きさのモニターが並び、おそらく坂本龍一が見たであろう、ありふれた日常の風景の様々なシーンが再現されていました。
アルバム「async」の制作のために過ごしたニューヨークのスタジオや生活空間の断片的な映像の数々で、どれにも彼自身の姿はなく、あくまでも彼の視点でのものです。
坂本龍一の記憶の中に存在したはずのシーンばかりで、いずれの映像も思い出を共有させてもらっているのだと思うと、静かな感動が胸に広がるのがわかりました。
6
直筆の譜面やメモ
このコーナーは撮影禁止。
でもまさか直筆のものやプライベート写真などがあるなんて!
納められたケースは、まさにインスピレーションの宝庫と言え、彼の息遣いまで感じるような貴重な展示でした。
その他
割愛しますが、中には抽象的過ぎてよくわからない部屋もありましたが、どれも彼の頭の中の記憶を垣間見るような空間で、まさしく「坂本龍一」という一人の世界的アーティストを追憶するには十分な展示の数々でした。
すでに歴史の人・坂本龍一

3年半の闘病の末ガンで2023年3月、この世を去った当世稀代の音楽家・坂本龍一。
人生のタイムリミットを告げられてからの闘病中は、独自の死生観を生むことになったようです。
その苦悩や葛藤の日々の中で、音楽というものをさらに深く考え抜いたのでしょう。
だから、雨音、流雲、月の満ち欠けなどの自然界の法則を見つめる事で、自らの「死」を冷静に見つめ直したのかと、その全ては見終えた後に合点がいくものとなり、彼の遺したものはあまりにも大きかったとつくづく思い知らされたものとなりました。
私は古い人間なので、むしろYMO時代の坂本龍一の印象が強く、お化粧をして、シンセサイザーやコンピューターを駆使した奇抜で新しい音楽を披露する彼らの登場に「未来」を強く感じたものでした。
彼らが「テクノ」や「ニューミュージック」という新しいジャンルを生んで一世を風靡したのは周知のとおりです。
今思えば、サザンのデビューとほぼ同時期なのもあり、この頃は日本の音楽界の大変な変革期でもありました。
そんな坂本龍一は気付けば世界的な音楽家となって、知らない間に遠い存在となってしまっていたのです。
しかし今回の展示で、それどころか、彼は確実に足跡を遺した「歴史の中の一人」なのだと、納得できる手応えを感じました。
最後に、会場の様子や坂本愛用ピアノによる自動演奏も含む動画にまとめました。
実際よりかなりカットして4分41秒の縮小版ですが、お時間のある時にどうぞ。
つきふねさんには感謝です!
私のアンテナではひっかからない展示会であり、おそらく気付く事もなかったでしょう。
おかげさまで新しい世界が広がりとても有意義な時間を過ごす事ができ、確実に私の脳内のシナプスは増えたと思います(笑)
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