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恋しいあなたを待つ時間|EASTEIN piano

気付けばいつも、彼のことを考えている。

つぎ会うときは、何の曲について語り合おう?
どんなふうに触れよう?

考えながら、すこし日焼けした彼の姿を思い浮かべる。

これはもう、
明らかに「恋」



世界遺産の法隆寺がある斑鳩のまちで、夏の始めに彼と出会った。

かすかに愁いを帯びた優しい声色
触れた指先に吸い付くような質感

何もかもがわたし好みで、この彼となら理想的なパートナーシップが築けるかもしれない、そう思った。

彼の名前は、


EASTEIN Model.B

(イースタイン モデルB)


知る人ぞ知る、幻の純国産アップライトピアノ。
そう、ピアノ!

もうすぐピアノがやってくるのです。





ことの発端は、奈良に越して間もない春のはじめ。

たまたま見つけた近所の古民家カフェで、気さくな女性店主さんとあれやこれとお話をするなかで、ふと、自分の重大ミッションに関わる質問をしてみました。

「この辺りにピアノが弾ける場所はありますか? 街角ピアノではなく、腰を据えて練習できるようなところ・・」

残念ながら、こたえは”否”でした。
しかしその後、はなしは思わぬ方向に進みます。


「そういえばここのお店、以前はピアノが置いてあったみたいですよ」

現在の店主さんはこちらでお店を始めて2年。その前のオーナーさん、更には元々ここに住まわれていた方もピアノをお持ちだったそう。言われてみればたしかに、アップライトピアノがすっぽりと納まるちょうど良いスペースがあります。

ここにピアノがあったら。
そうしたらすぐに弾きにこられる。練習できる。


「ここに、ピアノ置きませんか?」


考えるより先に、言葉が出ました。

よくよく考えるとずうずうしいにも程がありますが。不思議とその提案に賛同してくださり、それからピアノ探しが始まりました。





新品は論外として、中古ピアノで状態の良いものに出会えたら。

曲がりなりにもピアノの専門家(調律師)として働いていたことがあるわたし。普段はのほほんとしていますが、ことピアノ選びとなると妥協できません。


  • 外装の美しさに惑わされてはいけない

  • 値段の安さに踊らされてはいけない

  • 内部もくまなくチェックする!


この3つを主軸に、でも最後の決め手は「自分と相性の良い音かどうか」だろうなと予想していました。


そして、運命の出会いはあっさりと訪れました。


google検索からヒットした斑鳩のピアノ工房。ホームページを拝見すると、取り扱いピアノ一台ごとに特徴が細かく書かれています。言葉の端々からピアノへの愛情があふれる説明文を読んで、ここで手入れされたピアノなら間違いなさそう!と、すぐに見学を申し入れました。


約束当日、親切丁寧な調律師さんに元同業者であることを告げたうえで話を伺いながら、目当てのピアノ数台を端から弾きくらべます。

内部アクションに絶対的な安心感があるYAMAHA、柔らかな音に定評のあるKAWAI。


う~ん、音で選ぶならKAWAIかな~。

えっと、最後のこのピアノは「EASTEIN」?


EASTEIN、聞いたことのないブランド。さては、ピアノメーカー乱立時代に作られた、名前はそれっぽいけど音も内部もいまひとつの二流ピアノか?(←失礼!)


まったく違いました。
音も内部も一流でした。
そして、これだ!と一目ぼれしたのです。


EASTEINピアノの製造元は、東京ピアノ工業株式会社(1949年創業ー1973年倒産)生産拠点は栃木県宇都宮市。倒産後も元社員が有志でピアノ生産を再開するも、1990年廃業。

YAMAHAなどの工場量産品と違い一台一台手作りのため、そもそも生産台数が少ないそう。そんな希少品が中古市場に、しかも関西にあるなんてそれこそ奇跡!

出会うときには、出会ってしまうものなんですね・・


彼はいまごろ斑鳩の工房で、婿入りに備えて綿密な身体調査と調整をされているところでしょう。

9月下旬の再会を楽しみに、今日も楽譜を眺めながらイメージを膨らませています。


ーーピアノを弾く自分


ひょんなことから拓けた道。
またひとつ、わたしは夢を叶えます。



夢へとつづく




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