シルクロード交易で得たものは大きかった~国立民族学博物館特別展レポート
サムネイル画像は国立民族学博物館の中庭にあるアステカの巨像群。
向かって一番右が「コアトクリエ」
アステカ神話における大地母神です。「蛇の淑女」や「蛇のスカートをはく者」を意味し、生と死、創造と破壊の二面性を持つ強烈な存在として知られています。
この像の腹部にあるのは切り落とされた首で、そこから血が蛇となって流れています。
こわ~い!!
もう1週間以上も前ですが、初めて「国立民族学博物館」へ行ってきました。
場所は吹田市の千里、1970年の大阪万博の跡地にあります。

太陽の塔を久々に見た!
やっぱ存在感は今も健在。
ミャクミャクはどうみても妖怪にしか見えへん💧
通称「みんぱく」といい、その7年後の、1977(昭和52)年11月に開館しました。
世界最大規模の民族学博物館で、世界中の文化を鑑賞することができ、なんと全世界の民族学・文化人類学の研究の成果を展示する博物館として、世界で唯一だそうです。
ここに遊園地「エキスポランド」があったころ、独身時代はデートで、子どもたちが小さいころは家族で何度も訪れていました。
しかし、その後は足が遠のき、気が付けば20年以上。
今回、変態推し活仲間の岡埜さんに案内していただき、初めて「みんぱく」を訪れることになりました。
とにかく恐ろしいほどの点数なので、最初こそ興味津々で丁寧に鑑賞したものの、2時間も経たないうちに疲れてきて完全に集中力を欠いてしまいました。
昨年の8月に訪れた奈良博「世界探検の旅」の大規模なものだろうと予想はしていたのですが、それどころではない壮大さに覚悟が伴っていませんでした。
ここは一筋縄ではいかない。
行くならどこを鑑賞するかポイントを定めないと、疲れるだけで終わる数です。
冒頭の「怖い展示」は、古代には呪術的な要素が強く、他にも思わず立ち竦んでしまうほどのものもありました。
↓怖かった展示2連発💦

あまりに怖かったせいか、落ち着いて写真が撮れず
ピンボケになってしまった。

足元の男女に気を取られていたら、
上から鳥が監視している⁈
なぜ鳥たちは前を向かず、下を向いているのか💦
※レプリカ展示が多いため、ほんの一部を除いてほぼ全てが撮影可能。
ただし動画撮影は禁止です。
常設展の個々の感想を書いていたらキリがないので、今回は特別展の感想に重心を置きます。
シルクロードの商人語り

サブタイトルの「サマルカンドの遺跡」とか「ユーラシア交流」とか、なんとも興味をそそられる!

サマルカンドはウズベキスタン第2の都市として栄え、シルクロードのオアシスとなった都市です。
ティムール帝国の首都となった14世紀に建てられたイスラム建築群は「サマルカンドブルー」と称され、2001年にユネスコの世界遺産に登録されているほど。
特に廟や広場などの全ての建造物がブルーのタイルでの緻密な幾何学模様が見事で、繊細な青のグラデーションが美しいところだそうです。
【こちらで確認できます】
そんな希少な文化の源流が、どう流通し、現代に遺ったかを知ることができた特別展でした。
※この特別展は6月2日で終了しています。
商人たちの役割は極めて大きかった
中央アジアのシルクロードは、かつて東西の東洋と西洋、南北では農耕民と遊牧民を結ぶ交易と文化交流の大動脈でした。
人やモノの移動から文化の交流が生まれ、特にシルクロードを利用した商人たちは重要な役割を果たしてきました。
彼らがいなかったら、周辺の国々の発展はなく、各地域の歴史や文化も築けなかったかもしれません。
宗教や信仰をはじめ、刺繍や織物の手仕事技術、さらに音楽を奏でる楽器や民族衣装に至るまで、中央アジアに点在した多様な文化は広範囲の交流を経て進化したのだとつくづく感じました。
私たちが当たり前のように享受している文化や技術の多くは、こうした商人たちの往来があったからこそ生まれたのかもしれません。

ザラフシャン川中流域に分布する遺跡からの出土品は、そんな商人たちの功績を後世の私たちに示してくれているかのようです。
キーパーソンは「 ソグド人 」
ソグド人 は、中央アジアのサマルカンド周辺を本拠としたイラン系の人々で、シルクロード全域を集団移動し、シルクロード交易を支えた国際的な商人たちです。
絹・香料・宝石・毛織物・金属製品などを運んだ商いは、結果的に文化の伝承に繋がりました。

上図のザラフシャン川中流域にあるサマルカンドの アフラシアブ遺跡で発見された「使節の間の壁画」。レプリカですが原寸大との事。

これは7世紀後半に栄えたソグド王国の宮殿跡であり、東西南北の壁に国際色豊かな使節団の様子が色鮮やかに描かれています。
唐、チャガニヤン(タジキスタン)、チベット、そして日本の飛鳥時代の遣唐使とみられる人々が、サマルカンドの王へ貢ぎ物をする様子が描かれているのです。

日本にも伝えられた仮面芸能の「伎楽」のお面ですが、ずらりと生首のように並べられた仮面には、彫りの深い顔から平面的な顔立ちまで、実に様々な国籍を感じることができます。
上画像右下は伎楽の演目「酔胡王」の主役で、ソグド人がモデルだと考えられています。
この手の仮面、奈良博など各地の美術館などで目にしますが、なんとこれも現物は奈良正倉院にあるそうです。
展示の目玉は「女神ナナ」
会場に入って一番奥にドド~ンとあったのが、サマルカンドの カフィル・カラ遺跡 から発見された「女神ナナ」の木彫板です。
まず目に飛び込んだのですが、なるべく見ないように我慢して手前の展示から順番に鑑賞しました(笑)
明らかに今回の超目玉です。
ウズベキスタンのサマルカンド近郊のカフィル・カラ遺跡から出土したこちらは、日本とウズベキスタンの共同調査隊により、ソグド王の離宮跡で発掘されたもの。

2017年に発見され、ソグド人による6〜8世紀頃の遺物と考えられています。
大きさは縦114㎝、幅130㎝ほどですが、実際にはもっと大きく感じました。
しかし着目すべきはその作品内容です。
中央にはソグド人が信仰した女神ナナが獅子に乗り、琵琶や箜篌などの楽器を演奏する楽隊の様子や供物を捧げる人々などが細密に彫り込まれているのです。
ソグド人の信仰において重要な位置を占めた女神ナナは、古代メソポタミアに起源を持ち、中央アジアへと伝わった神格とされています。
日本でいうところの「大日如来」か「天照大御神」といったところでしょうか。
さらに楽隊は京都の平等院の雲中供養菩薩や東大寺の「八角灯籠」に見られる音声菩薩にも通じます。
ソグド文化や宗教観を、現代に伝える極めて価値のある遺物なのは間違いなく、かつてルーヴル美術館や大英博物館でも展示された至宝なのです。
だからこそ、国立民族学博物館は日本での公開も強く願い、輸送費などの400万円をクラウドファンディングで募ったところ、目標額を大幅に超えて1千万円以上の資金が集まり、今回の特別展が実現しました。
それだけ価値ある歴史的遺物であり、見たいと思う人が多かったというこですね。
日本にもたらされたもの

本展を鑑賞して思ったことは、古代は現代よりはるかに国際色豊かだったということ。
そしてシルクロードを行き交う商人たちに運ばれた商品により、周辺各国は多大な影響を受け、それを各地で発展させて今に至ったということです。
シルクロードこそが世界をつなぐ大動脈であることは知っていましたが、今回はそれを最大限に利用した商人のソグド人にスポットを当てることで、より詳細を知ることができました。
日本に伝わる宗教や文化、技術などの原型を彼らの文化に見つけることができました。
人々が交流することで生まれた無数の文化こそ、人類が手にした最大の財産だったのかもしれません。
今回は、アジアの総合的な進化と歴史を改めて捉え直すことができた貴重な機会となりました。
◇◇◇
実は、こちらにも「友の会」はあって、同行してくれた岡埜さんはもちろん入会されています。
しかし、私はよくよく考えて断念しました。
その理由は、同じ大阪でも遠く、1時間半はかかってしまうこと。
さらには一回の訪問で消費するエネルギーが大きすぎる。
翌日まで疲れが残ってしまうほどだった。
以上の理由で気軽に頻繁に来れないと判断。
しかも特別展も完全無料ではなく、150円だけ支払うという。
せめて完全無料の出入り自由にしてほしいと願う私はケチなのか。
お隣の奈良県の東大寺や法隆寺の方がよほどお得で通いやすい。
確かに維持するには費用はかかるはず。
そうはいっても、これから年に1,2回は通うと思うので、今後は単発訪問でこちらに貢献したい。
岡埜さんその時には、またよろしくお願いします。
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