第2章 ⑮ 一時帰宅中に「噛みしめた幸せ」と「消えない不安」
しばらくの間は、主人の胃袋を満たしたくて、焼肉やもんじゃ焼き、ステーキ、肉じゃが。
主人の好きなものを、毎日リクエスト通りに作った。
病院食で小さくなってしまった胃では、たくさんは食べられなかった。
それでも、家族3人で囲む食卓が、主人は何より嬉しそうだった。
そして毎日のように
「娘がまだ一緒に食べられないのが残念だな。」
そう言っていた。
私はそのたびに
「そうだね。」
と笑って返す。
それが、私たちのルーティンになっていた。
一時帰宅とはいえ、私の心の中には、たくさんの不安があった。
主人には気づかれないように、静かに抱え込んでいた。
抗がん剤治療で完全にガンが消失するのか。
治療費や生活費に加え家のローン。
今後のお金の事。
1人での子育て。
私に何かあった時、誰に協力して貰うか。
そして、病気について調べれば調べるほど、不安は大きくなる。
だから私は、必要以上に調べないと決めた。
病院の治療方針を信じ、先生を信じるしかなかった。
お金は、傷病手当金と少しの貯蓄で、何とかやりくりできていた。
子育ては自分流でやるしかないと思い
とにかく愛情たっぷりで育てた。
娘は夜泣きもほとんどなく、本当に育てやすい子だった。
まるで主人の病気を理解して
「ママを困らせないように。」
そう思ってくれているかのようだった。
「ありがとう。」
「寂しい思いはさせないからね。」
「パパもママも大丈夫だよ。」
娘を寝かしつける時には不安にならない様に必ず小さな耳元にささやいた。
それから、娘の頬にそっとキスをした。
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