①ケプラー問題ではなぜu=1/rと変換するのか
こんにちは。
万有引力の法則と運動方程式からケプラーの第一法則を導くとき、
理解の少し難しいところは主に3箇所あります。
極座標表示の運動方程式
u=1/rと置いて解きやすい微分方程式に変形する
二階非同次線形微分方程式を解く
(振動のようなものが出てくる)
今回は2について。
なぜ$${u=\frac{1}{r}}$$とするのか?
$${u=\frac{1}{r}}$$と置く理由がいまいちわかりません。
「都合がいいから」ではあります。
その発想がひらめきなのか、考えたら自然に生まれてくるのか。必然性・唯一性が欲しいのです。
そこで、u=1/r(逆数変換と言います)がなぜ重要なのか、他の変換でもうまくいく可能性があるのか、考えていきます。
第一部では、tを消去するとはどのようなことかを説明します。時間に関する情報を消して軌道方程式を作ります。
第二部では、軌道方程式に一般的な変数変換を適用して、その結果をまとめます。
第三部では、”軌道方程式が解きやすい”とはどのようなことか、それを満たす変換は何かを考えていきます。
目的:時間tの消去
皆さんは、媒介変数表示を習ったことはありますか?
xとyが媒介変数tで表されていて、xとyとの直接的な関係を探るときに、tはよく消去されます。
微分が混じってはいますが、やりたいことは同じです。
今、rとθが時間tによって決まっていて、その関係を表す式が与えられています。
私たちが知りたいのは、rとθの直接の関係です。
rをθで表すのが最終目標です。
そのために、すべきことが2つあります。
tの消去
時間微分の消去
これを実際考えるべき式に当てはめて考えていきましょう。
$$
\ddot{r}-r\dot{\theta}^2=-\frac{GM}{r^2},\qquad 2\dot{r}\dot{\theta}+r\ddot{\theta}=0
$$
今回の関係式にtは含まれていませんが、rとθはtの関数です。
軌道の形、つまりrとθの直接の関係を調べるためには、時間微分を含まない形が重要です。
では、時間微分をどうやって消去すればいいのでしょうか。
道具その1:角運動量保存則
2つ目の式に注目しましょう。
両辺にrをかけると、
$$
2r\dot{r}\dot{\theta}+r^2\ddot{\theta}=0\\
\frac{d}{dt}(r^2\dot{\theta})=0
$$
微分すると0になる、つまり
$${r^2\dot{\theta}}$$がtの値によらない一定値をとります。
このことを角運動量保存則と言います。
中心力のみ働くときに保存します。
今回は、これをもう少し変形したものを使います。
$$
r^2\dot{\theta}=h\qquad(h:定数)\quad とすると、\dot{\theta}=\frac{h}{r^2}
$$
$${\theta}$$の時間微分を、時間微分でない形に置き換えられることが重要なのです。
道具その2:連鎖律(チェーンルール)
合成関数の微分みたいなことです。
例えば、yがuの関数でuがxの関数であるとき、
$$
\frac{dy}{dx}=\frac{dy}{du}\frac{du}{dx}
$$
すごくざっくり言うと、
分数の約分のように変数を噛ますことができる
ということです。
今回では、例えば、
$$
\frac{dr}{dt}=\frac{dr}{d\theta}\frac{d\theta}{dt}
$$
のように使っていきます。
方法:角度の時間微分を無理やりつくる
これを組み合わせて、時間微分を消去するにはどうすればいいでしょうか。
重要なことは、
角度の時間微分はdtを含まない形にできる
連鎖律を使ってdtを他の変数に押し付けられる
dtを消したい
→連鎖律を使って角度の時間微分をつくり、それを置き換える
これがよさそうです。
考えるべきは
$$
\ddot{r}-r\dot{\theta}^2=-\frac{GM}{r^2},\qquad 2\dot{r}\dot{\theta}+r\ddot{\theta}=0
$$
なので、
$$
\dot{\theta}=\frac{h}{r^2}
$$
を使って、
$$
\ddot{r}-\frac{h^2}{r^3}=-\frac{GM}{r^2}
$$
とできます。
つまり、対処すべきは$${\ddot{r}}$$だけ、ということです。
実践
rの1階微分
$$
\dot{r}=\frac{dr}{dt}=\frac{dr}{d\theta}\frac{d\theta}{dt}=\frac{dr}{d\theta}\dot{\theta}=\frac{h}{r^2}\frac{dr}{d\theta}
$$
rの2階微分
$$
\ddot{r}=\frac{d}{dt}\dot{r}=\frac{d}{dt}(\frac{h}{r^2}\frac{dr}{d\theta})
$$
連鎖律と積の微分を組み合わせて、
$$
\begin{aligned}
&=-\frac{2h}{r^3}\frac{dr}{dt}\cdot\frac{dr}{d\theta}+\frac{h}{r^2}\cdot\frac{d}{dt}\frac{dr}{d\theta}
\\\space\\
&=-\frac{2h}{r^3}\frac{dr}{d\theta}\frac{d\theta}{dt}\cdot\frac{dr}{d\theta}+\frac{h}{r^2}\cdot\frac{d\theta}{dt}\frac{d}{d\theta}(\frac{dr}{d\theta})
\\\space\\
&=-\frac{2h}{r^3}\frac{dr}{d\theta}\dot{\theta}\cdot\frac{dr}{d\theta}+\frac{h}{r^2}\cdot\frac{d^2r}{d\theta^2}\dot{\theta}
\\\space\\
&=-\frac{2h^2}{r^5}(\frac{dr}{d\theta})^2+\frac{h^2}{r^4}\frac{d^2r}{d\theta^2}
\end{aligned}
$$
代入
分母にrが多い気がしますが、あとはこれを代入していきましょう。
$$
\ddot{r}-\frac{h^2}{r^3}=-\frac{GM}{r^2}\quad に代入して、
\\\space\\
-\frac{2h^2}{r^5}(\frac{dr}{d\theta})^2+\frac{h^2}{r^4}\frac{d^2r}{d\theta^2}-\frac{h^2}{r^3}=-\frac{GM}{r^2}
\\\space\\
\frac{d^2r}{d\theta^2}-\frac{2}{r}(\frac{dr}{d\theta})^2-r=-\frac{GM}{h^2}r^2
$$
とりあえずtを消去することに成功しました。
非線形なので解ける気がしませんが。
まとめ
今回は、時間tの情報を消去して、軌道に関する式を導くことができました。
通常は変数変換もここでまとめて行うのですが、
目的が異なるので混ぜて行うのは危険と判断しました。
結果、tの消去だけに焦点を当てることができました。
ポイント:
連鎖律を使ってdtを角度に押し付け、それをdtのない形に置き換えることで、時間微分を消すことができる。
とはいえ、導かれた関係式は非線形微分方程式なので、
微分方程式の基本では太刀打ちできなさそうです。
具体的には、
非線形項$${-\frac{2}{r}(\frac{dr}{d\theta})^2}$$:ひときわ目立って邪魔
右辺の非線形項$${r^2}$$:通常の微分方程式でも、あったら苦労する
もし線形なら、解きやすい(解ける)のに。
そこで、rを別の変数に変換することで非線形をうまく消せるかもしれない。
それを考えるのが次回です。
一般的な変数変換を行い、そのときの軌道方程式がどのような形になるのか探ります。
ここまでご覧いただきありがとうございました。
次回も見ていただけると幸いです。
