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素晴らしき「チャールズ&レイ・イームズの世界」

2000年代初頭、
あの熱狂的な「ミッドセンチュリーモダン」のブームを覚えているでしょうか。

街にはラウンジミュージックが流れ、お洒落なインテリアカフェやダイニングレストランが次々とオープンし、
僕たちの手元には分厚い『1000 Chairs』の書籍がありました。

あの頃、家具やデザインが持つ
「未来へのワクワク感」に胸を躍らせた方もきっと多いはずです。
(この頃は自動車のインテリアにも、北欧デザインなどが多く取り入れられましたねー)

例外なく僕も、その煌く文化に魅了され、
特にチャールズ&レイ・イームズの家具を愛用してきた一人です。

私のお店には、アームシェルとサイドシェルチェア(DSW)の他、ヴィトラのHALチェアもいます


時を経た今だからこそーー
もう一度あの色褪せないロマンと、彼らが遺した素晴らしきプロダクトを、
皆さんに手渡すように語ってみたいと思います。


1. ミッドセンチュリーモダンという、美しき「時代の記憶」

ミッドセンチュリーモダンとはーー
「20世紀半ば(1940〜50年代)」にアメリカを中心に発展したモダンデザインのこと。

生まれた背景には、第二次世界大戦という大きな歴史のうねりがありました。

戦時中に軍事用で開発された、新しいテクノロジー(合板、プラスチック、アルミ、軽量スチールなど)や大量生産の技術を、終戦後に
「平和な市民の生活を豊かにするために使おう」と、
多くのデザイナーたちが立ち上がったのです。

特徴は、
無駄を削ぎ落とした「機能性」でありながら、
どこか有機的で温かみのある「美しい曲線」、
そして重厚な木製家具にはなかった
「明るいポップな色彩」にあります。

ジョージ・ネルソン、エーロ・サーリネン、イサム・ノグチといった巨匠たちが時代を彩る中、その中心にいたのが、
「チャールズ&レイ・イームズ夫妻」でした。

Charles & Ray Eames

建築を学んだ夫のチャールズと、抽象画家だった妻のレイ。

二人の才能が奇跡的なマリアージュ(結婚)を果たしたことで、
彼らのデザインは単なる工業製品を超え、
一つの「アート」へと昇華していきました。

彼らにとって家具、建築、映像、おもちゃはすべて地続きであり、
生活を豊かにするための冒険だったのです。


2. 空間に命を吹き込む、イームズのインテリア家具

イームズ夫妻が掲げたあまりにも有名な哲学があります。

「最高に良いものを、最良の形で、最大多数の人々へ(The best for the most for the least)」


それまでの家具は、重厚で、ステータスを示すための特権階級のものでした。

しかし彼らは、成型合板(プライウッド)やFRP(ガラス繊維強化プラスチック)、スチールワイヤーといった当時の新素材を軽やかに使いこなし、
誰のライフスタイルにも寄り添う名作を次々と世に送り出しました。

ここで、彼らのインテリアの歴史を形作った
代表作をいくつかご紹介しましょう。

── 時代を作った、イームズ・ファニチャーの傑作たち

◆シェルチェア

Eames Shell Chair

2000年代のカフェブームを牽引した、言わずと知れたミッドセンチュリーのアイコン。

背もたれと座面が一体になった美しい貝殻(シェル)型の椅子です。

当時は最先端だったプラスチック(FRP)を用い、誰もが手の届く量産椅子としてデザインされました。

Eames Arm Shell Rocking Chair(RAR)

エッフェル塔を思わせる軽快なスチール脚(DSR)や“キャッツ・クレイドル”、温かみのある木製脚(DSW)、ロッキングチェア用のロッカー(RAR)など、
シェルと脚の組み合わせの妙も魅力です。

◆ プライウッドチェア

Eames LCW(Lounge Chair Wood)

第二次世界大戦中に培った合板の成型技術を応用し、木材を三次元の美しい曲面へと変貌させた傑作。

中でも「LCW(Lounge Chair Wood)」は、
タイム誌によって「20世紀最高のデザイン」に選ばれました。

座った瞬間に、木製とは思えないほど優しく身体にフィットする感覚に驚かされます。

◆ラウンジチェア&オットマン

Eames Lounge Chair and Ottoman

チャールズが友人であった映画監督のビリー・ワイルダーへの誕生日プレゼントとして、1956年に開発したとされています。

「使い込まれた一塁手のミットのように、座る人を温かく受け止める椅子」を目指して作られた、まさにイームズ・デザインの到達点。

最高級のレザーと美しい成型合板のシェルが織りなす圧倒的な佇まいは、今も大人の憧れの象徴です。

◆ラ・シェーズ

Eames “La Chaise”

1948年にMoMA(ニューヨーク近代美術館)で開催された「ローコスト家具デザイン国際コンペ」のために設計された、究極の彫刻的ラウンジチェア。

彫刻家ガストン・ラシェーズの作品『フローティング・フィギュア(浮遊する体)』からインスピレーションを得て生まれたその姿はーー

まるでダリの絵画のように流麗で神秘的な、
バイオモルフィック(有機的)デザインです。

画家としてのバックグラウンドを持つ妻レイの自由な感性が最も色濃く反映されたーー
「座れるアート」ですが、
当時はあまりに製造コストが高く、夫妻の存命中に量産化されることはありませんでした。

のちにヴィトラ社によって奇跡的な復刻を遂げ、今なお特別な輝きを放ち続けています。

◆イームズ・ストレージユニット(ESU) / デスク(EDU)

Eames “ESU”
Eames “EDU”

工業用のスチール支柱、合板、そしてカラフルなドローイングパネルを組み合わせた、
まるでパズルのような収納システムとデスク。

建築的な美しさをそのままミニチュアにしたような引き算のデザインで、部屋にあるだけで空間がパッと明るくなります。
(まるで、小さなケーススタディハウス!)


── リプロダクト品と、受け継がれる「本物」の灯火

これほどの名作たちだからこそ、今や街のカフェやネット通販には安価な「リプロダクト品(コピー品)」が溢れています。

それがイームズのデザインを身近にした側面は否定できませんが…
やはり「本物」が持つ独特の佇まいや、時を経ても衰えない耐久性、そしてデザイナーの思想への敬意はまったくの別物です。

現在、イームズデザインの正規製造・販売ライセンスを持っているのは、
日本を含む北米市場においてはハーマンミラー(Herman Miller)社
欧州・中東市場においてはヴィトラ(Vitra)社のみ。

もし皆さんがこれからイームズデザインを部屋に迎えるなら、是非この2社の刻印が刻まれた「本物の灯火」にも触れてみてください。
(チェアはひっくり返すと座面の裏側に刻印があります)


3. 青空と光を切り取る、イームズの建築デザイン

イームズ夫妻の才能は、立体的な家具だけに留まりませんでした。

戦後の住宅不足を解消するために、
雑誌『アーツ&アーキテクチャ』が企画した革新的なモダン住宅の実験プロジェクト
「ケーススタディハウス」ーー。

その中でも最高傑作と称されるのが、彼らが自ら設計し、生涯を過ごした
「ケーススタディハウスNo.8(イームズハウス)」です。

The Eames House (Case Study House No.8)
Designed by Charles and Ray Eames in 1949

この建築の特徴は、
その驚くべき工法にあります。

The Eames House Interior

伝統的なレンガや木造ではなく、工場で生産された標準的な工業用スチール部品(トラスやサッシなど)を、パズルのように現場で組み立てる「プレハブ工法」を採用しました。

工業製品をそのまま露出させながらも、
カリフォルニアのサンタモニカに生い茂るユーカリの木々、差し込む青空と光、
そしてカラフルなパネルが見事に調和したその空間ーー。

この「インダストリアルでありながら温かい」という手法は、のちの建築デザインや、現代のインダストリアルインテリアの源流となり、
今も世界中の建築家に影響を与え続けています。

(余談だが、丸ビルの中にあった山本宇一プロデュースのカフェ「SO TIRED」が、何となくケーススタディ感があって好きでした)

4. 視点を変えれば、世界が変わる「映像作品」

2000年代初頭のブームの際、家具と並んで僕たちを驚かせたのが彼らの「映像作品」でした。

中でも不朽の名作とされるのが、
ドキュメンタリー映画『Powers of Ten(パワーズ・オブ・テン)』です。

シカゴの海岸でピクニックをする男性の姿からスタートし、10秒ごとに視点が10の累乗(10倍ずつ)でズームアウト。

地球を飛び出し、銀河の果てまで広がったかと思えば、今度は一気に逆回転。

男性の皮膚へ、細胞へ、そして原子のミクロの世界へとズームインしていきます。

映画監督としてのイームズ夫妻がこの映像を通して伝えたかったのは、単なる科学の知識ではありません。

宇宙の広大さと、私たちのミクロの体内は、同じ法則でつながっているということ。

「私たちが生きる世界の愛おしさと、すべての物事のつながり」を、映像という詩的なアプローチで教えてくれたのです。


5. 日常に遊び心を散りばめる「玩具・テキスタイル」

「おもちゃは、大真面目につくられるべきだ」

そう語ったイームズ夫妻は、子供の目線を生涯忘れない「遊びの天才」でもありました。

三角形のカードを組み立てて大きな秘密基地を作る『The Toy』や、
美しいグラフィックが描かれたカードを噛み合わせて遊ぶ『ハウス・オブ・カード』、

そして今も愛される『イームズ・エレファント』など、子供の創造力を刺激する名作を多く遺しています。

Eames“Elephant”

また、妻のレイ・イームズが手掛けたファブリックなどの「テキスタイル」も見事です。

Ray Eames

幾何学模様でありながら、どこか手描きの温もりが残る『ドットパターン』などの布たちは、スチールやプラスチックといった家具や建築の「硬さ」を、いつも優しく包み込んでいました。


6. おわりに:あなたの暮らしに、小さじ一杯のイームズを

素晴らしいチャールズ&レイ・イームズの世界、いかがでしたでしょうか。

彼らの魅力を知ったからといって、
大きなラウンジチェアをいきなり部屋に迎える必要はありません。

例えば、デスクの上に『ハウス・オブ・カード』をそっと飾ってみる。

お気に入りのマグカップを置くコースターに、
レイのテキスタイル柄を選んでみる。

あるいは、週末の夜に少し照明を落として、
YouTubeで『Powers of Ten』を観てみる。

それだけで、2000年代に僕たちが憧れた、
あの心地よくて、どこか未来を信じられたミッドセンチュリーのモダンな空気がーー

あなたの部屋にふわりと流れ込みます。

デザインとは、高価なモノを所有することではなく、日常を愛おしむ「視点」そのもの。

ぜひ、小さなところから…
彼らのロマン溢れる世界をあなたの生活に招き入れてみませんか?


フォロワーさんの素敵なミッドセンチュリーモダンなお話もご紹介。心トキメキますよー!


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