飛行機が嫌いなポンコツ夫婦
モメていた。
それは二年前、長男の東京での暮らしを整えに行く前の、私と夫の物語だ。
夫は会社員時代に出張で何度も飛行機に乗っていたはずなのに、飛行機が苦手、いや、嫌いだったのだ。
高所恐怖症なら、私もそうだ。高い所は苦手である。
しかし、夫は私の何倍も嫌いで、
「落ちる」
と信じて疑わないタイプの人間だった。
「なんでよ、あんなに出張で一人で飛行機に乗ってたじゃん?」
「あれは、仕事だからな」
今は普通に乗れるが、私だって飛行機は苦手だった。長男の手前、控えめに怖がっていた。
両親そろって、
「飛行機こわーい。高い所苦手ー。絶対落ちるー」
なんて構図は、見たくなかっただろう……。
一人で東京暮らしが始まる長男にとっては、それどころじゃないはずだ。
「どうしても一緒に行かないといけないのかー?」
「なんで今年から寮がなくなるのさっ」
全く、大人げないポンコツな両親を持った長男が可哀そうすぎる。
「もう、一人で行って、一人であれこれしなさいよ。成人してるんだし」
「そーだそーだ」
長男も、あまりにもポンコツぶりを発揮する両親に業を煮やし、
「わかった」
とポツリ。
いやいや待て待て待て。嘘だよ、嘘ではないが嘘だよ。
「いやいや冗談だよー。一緒に行くに決まってるじゃないか」
そうして、夫は強制的に、私はありったけの母性を絞り出して、長男に付き添うことを決めたのだった。
これが、自立前にできる最後の子ども孝行になるんだろうし……。
そう決めてからの私たち夫婦は、十年ぶりの東京に少し浮足立ち、DEAN & DELUCAのトートを買ったり、L.L.BeanのTシャツをネットでポチッたりしていた。
あとは黙々と、長男の引越の荷物を箱に詰める日々を過ごした。
少し寂しかった。
このお話の続きはこちらです。
そういえば、TALESでショートショートの創作にも挑戦してみました。
まだ誰にも読まれていません(笑)。
よかったら、ちょこっと覗いてみてください。
