ダブルバインドと矛盾を泳ぐ生き物

ミノカサゴがゆったりと漂うように泳いでいます。
赤褐色と乳白色の縞模様が全身に走り、胸びれは幾筋もの長い鰭条が放射状に広がって、まるで薄絹を幾重にも重ねた扇。
扇は美しく見せるためだけの飾りではありません。
自分を守るため、相手への警告、獲物を囲い込み、逃げ道をふさぐための大切な道具なのです。
獲物が近づくと、一瞬で吸い込むように捕らえてしまいます。
普段の静かな姿からは想像できないような、驚くほど素早い動き。
安心が突然崩される。
緊張が高まり、危機感へと変わります。
ミノカサゴに悪気はありません。
相手が遠ければ扇の舞をを見せ、必要であれば捕食する。
生きるためにそのような習性を身に着けたのであって、そこには「嘘をつこう」「騙してやろう」とする考えはおそらくないでしょう。
このような「一つでは捉えられない感覚」は、人の世界にもあります。
「落ち着いて行動して」と言われながら、「もっと早く決めて」と急かされることがあります。
矛盾した要求を同時に受けるいわゆるダブルバインド。
安心して良いのか悪いのか、どちらを選んでも正解が見えない苦しみ。
ミノカサゴを眺めていると、一つのものが複数の意味を持つこと、静けさと力強さの共存など多義性を感じさせてくれます。
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