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「今日は見るだけです」で、商談を終わらせていませんか?

「今日は見るだけなので」

来店されたお客様からこう言われると、少しほっとする営業がいます。

無理に話しかけなくていい。
押し売りと思われずに済む。
断られて気まずくなることもない。

そこで、

「かしこまりました。ごゆっくりご覧ください。何かあればお声がけください」

と伝え、その場を離れる。

丁寧な対応です。私も新人の頃、同じようにしていました。

ただ、そのあとお客様が店内を一周し、誰とも話さず帰っていく姿を何度も見ました。

お客様が商談を断ったのではありません。

営業側が、「見るだけ」という一言を聞いて、会話を終わらせていたのです。

「見るだけ」は、買わないという意味とは限らない

「今日は見るだけです」には、いろいろな気持ちが含まれています。

本当は興味があるけれど、強く勧められたくない。
まだ知識がなく、何を聞けばよいか分からない。
ほかのお店も見たいので、その場で決断を迫られたくない。
過去に強引な営業を受けて、最初は少し距離を置きたい。
まずは自分のペースで商品を見たい。

つまり、「買う気がない」という答えではなく、

「まだ安心して話せるか分からない」

という入口かもしれません。

言葉を無視して話し続ける必要はありません。

でも、営業側の不安だけで「買わないお客様」と決めるのも違います。

配慮と撤退は違う

営業は、お客様の時間と気持ちを尊重する仕事です。

だから、ずっと後ろをついて歩いたり、質問を続けたりする必要はありません。

一方で、

「何かあれば声をかけてください」

という言葉が、営業自身を守るために出ていることもあります。

嫌われたくない。
断られて傷つきたくない。
会話が続かなかったら恥ずかしい。

そうした気持ちは、私にもありました。

お客様への配慮と、自分が傷つかないための撤退は、よく似ています。

違いは一つです。

お客様の反応を見て距離を取ったのか。
反応を見る前に、営業側が結論を出したのか。

まず受け止めて、きっかけを一つ聞く

「見るだけです」と言われたあと、商品説明を始める必要はありません。

まず受け止め、そのうえで短い質問を一つ置きます。

お客様:
「今日は見るだけなので」

営業:
「もちろんです。ゆっくりご覧ください。差し支えなければ、今日はどんなきっかけで見に来てくださったんですか」

大切なのは、最初の「もちろんです」です。

見るだけという希望を否定せず、会話を続けてよいか確かめています。

質問も、

「何をお探しですか」
「ご予算はいくらですか」

ではなく、きっかけを聞きます。

まだ商品も予算も決めていないお客様に、答えを急いで作っていただかなくて済むからです。

「今の車が古くなってきて」
「子どもが生まれたので」
「ほかのお店も見ているところです」
「近くを通ったので、少し気になって」

どの答えでも構いません。

答えが返ってきた時点で、お客様の背景を知る入口が一つできています。

質問したあと、少し待つ

新人の頃は、質問した直後の沈黙が怖くなります。

営業:
「今日は、どんなきっかけで来られたんですか。買い替えですか。車検が近いんですか。それとも価格を見に……」

自分で選択肢を足し続けると、お客様は営業が用意した答えから選ぶしかなくなります。

質問したら、数秒待ってみてください。

沈黙は、会話の失敗ではありません。

お客様が「どこまで話そうか」「何から話そうか」と考えている時間です。

返ってきた言葉を、すぐ商品説明へつなげなくても構いません。

お客様:
「今の車が古くなってきたので」

営業:
「古くなったと感じるのは、どんな場面ですか」

一段だけ背景を聞くと、故障、維持費、家族構成、安全性など、本当に考えていることが見えてきます。

反応が薄ければ、一度引けばいい

質問すれば、必ず会話が続くわけではありません。

お客様:
「特にないです。本当に見るだけなので」

表情や声からも会話を望んでいないと感じたら、一度引きます。

営業:
「承知しました。私はあちらにおりますので、気になることが出てきたらいつでもお声がけください」

ここで距離を取るのは、失敗ではありません。

お客様の反応を見たうえで決めた、丁寧な対応です。

最初から勝手に諦めることと、相手を見て一度引くことは違います。

営業は、押すか引くかを最初に決める仕事ではありません。

相手の反応を見ながら、心地よい距離を探す仕事です。

この無料記事で持ち帰れること

「今日は見るだけです」は、商談終了の合図とは限りません。

次に同じ場面が来たら、商品説明ではなく、この一言を試してみてください。

「もちろんです。差し支えなければ、今日はどんなきっかけで見に来てくださったんですか」

受け止める。
一つ聞く。
少し待つ。
反応が薄ければ一度引く。

この四つだけでも、営業側が思い込みで会話を終わらせることは減ります。

お客様にとっても、「売り込まれる時間」ではなく、「自分のペースを尊重してもらいながら相談できる時間」になります。

まだ残っている課題

実際の初回接客では、言葉だけでなく、視線、同行者、話す速さ、表情の変化を見る必要があります。

最初の答えを、どの言葉でもう一段聞くのか。
営業側の思い込みが入っていないか。
接客後に何を振り返るのか。

ここまで身につけるには、会話の一言だけでなく、観察と振り返りの型が必要です。

有料記事を読むと変わること

次の記事では、初回接客の最初の3分に絞り、

  • 最初に見る4つのポイント

  • 会話を始める最初の質問

  • 答えをもう一段深く聞く方法

  • 観察と決めつけの違い

  • 接客後に使う8項目の振り返り

  • 新人を育てるマネージャーの確認ポイント

を、会話例と一緒にまとめています。

読後に目指すのは、説明のうまさで押す営業ではありません。

「この人なら、まだ整理できていないことも話してよさそうだ」と感じていただける営業です。

営業は、商品を説明する前に、目の前の人を見る仕事です。

そして、お客様と向き合うたびに、自分の思い込みに気づき、人を見る力を磨ける仕事でもあります。

初回接客を、感覚ではなく実践できる形にしたい方は、こちらを続けてお読みください。


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