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伝統芸能の粋に、センチュリオンが連れて行ってくれた夜 ― 野村萬斎 特別狂言会の記録


2015年12月2日、水曜日。

その日、私は能楽堂にいた。

野村萬斎の特別狂言会。カード会員限定の貸切公演。チケットを手に入れようとすれば、例年すぐに売り切れる人気公演と同日に、センチュリオン・カード会員だけのための舞台が、静かに設えられていた。


野村萬斎という存在

野村萬斎。

能楽師、狂言方和泉流の人間国宝の家に生まれ、狂言師として国内外で高い評価を得る存在だ。舞台だけでなく、映画や演劇でも活躍するが、その根底にあるのは常に古典芸能への深い造詣だ。

彼の公演は、チケットが発売と同時に埋まる。一般のルートで席を確保することは、容易ではない。

その舞台を、カード会員限定の貸切で見る。これが、センチュリオン・カードが用意した、2015年12月の体験だった。

「貸切」に近い演出

この公演が特別だったのは、舞台の内容だけではない。

「貸切」に近い形式そのものが、体験の質を変えた。

通常の公演では、様々な動機で集まった観客が席を埋める。だが貸切公演では、同じカードを持つ会員たちが、その夜のために集まっている。場の空気が、違う。舞台と客席の間に、独特の緊張感と親密さが同時に生まれる。

野村萬斎という表現者にとっても、貸切公演は特別な緊張感があると思う。その空気の中で見る狂言は、舞台のクオリティだけでなく、「あの場にいた」という記憶として、深く残る。

料亭「数寄屋 金田中」という、もう一つの舞台

この日の体験は、舞台だけではなかった。

案内には、能楽堂に隣接する料亭「数寄屋 金田中」での昼食と鑑賞のセットが記されていた。

数寄屋 金田中。日本料理の名店として知られるその名前は、食を大切にする人間なら聞き覚えがあるはずだ。舞台の前に、その場所で食事をする。あるいは鑑賞の後に、余韻を持って食卓につく。

伝統芸能と日本料理。どちらも、日本が世界に誇る「本物」だ。その二つを一日の中に収める設計が、この日の体験の豊かさを作っていた。

金田中での食事が終わると、食事が片付けられ襖が開かれ、その目の前が能楽堂の舞台になっている。野村萬斎が能の世界を直に説明してくださり、絶対に上がることの不可能な能楽堂の舞台に私は上がった。特別に野村萬斎直筆サイン入りの足袋がプレゼントされ、その足袋を履きながら舞台へ上がる。事前に能を説明していただいたお陰で、その舞台を楽しめた。

センチュリオンが届けるもの

このような体験を振り返るたびに、思うことがある。

センチュリオン・カードが届けるのは、チケットでも食事でもない。「その場にいた」という記憶と体験だ。

お金を出せばチケットは買える。お金を出せば料亭にも行ける。だが、カード会員限定の特別な体験は、お金だけでは手に入らない。センチュリオンという関係性があって初めて、その扉が開く。

案内状に書かれていた言葉が、今も記憶に残っている。「伝統芸能の粋に出会う、心豊かなひととき」。

言葉として読む時と、実際にその夜を経験した後に振り返る時では、この言葉の重みがまるで違う。体験は、言葉を変える。

狂言初心者への配慮

この公演のもう一つの特徴として、案内に記されていたことがある。


野村萬斎 特別狂言会 for CENTURION

「上演演目はいずれも、狂言初心者の方にもおすすめの作品です」という一言だ。

古典芸能に馴染みのないセンチュリオン会員も多い。そういった人たちが、初めて能楽堂の空気に触れる機会になるよう、演目が配慮されていた。

ラグジュアリーな体験は、知識があってこそ楽しめる、というわけではない。初めての人が、初めてその世界に触れる瞬間を、どれだけ豊かに設計できるか。それが、本物のホスピタリティだと、私は思っている。

2015年という、一枚の記録

手元に残るこの案内状は、2015年という年の、ある夜の記録だ。

センチュリオン・カードと共に歩んできた24年の中で、こうした体験が積み重なっている。どれも、カードがなければ辿り着けなかった場所であり、記憶だ。

「Centurion Living」という言葉が使われるようになる以前から、センチュリオンはこういう夜を会員のために用意し続けてきた。その継続性に、このカードの本質がある。確かに最近はこの手のイベントは少なくなった。以前は舞台終了後俳優さんとアフターパーティー付きのセンチュリオン会員用のチケットや特別なイベントを楽しめる企画が多かったのも事実だ。

本物の体験は、その場にいた者だけのものだ。チケットは消えるが、あの夜の空気は、24年後の今も、確かに残っている。

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