「第二新卒」はもう例外じゃない(働きはじめ)
〜第二新卒の転職市場の変化を数字で追う〜
最近「第二新卒」に関連する話題に触れることがありましたので、その市場動向についてあらためて確認してみました。
わたしが若いころには「第二新卒」という言葉には、どこか肩身の狭いイメージがつきまとってきました。「新卒で入った会社を数年で辞めた人」「『石の上にも三年』を守れなかった人」——そんな見方をされた時代が、確かにあったと思います。
けれど、いま企業の採用データを見ていくと、その空気は静かに変わりつつあるようです。第二新卒採用に踏み切る企業の割合は、この数年で新卒一括採用を上回るところまで来ました。一方で、転職市場に出てくる若手人材のプール自体は、実は縮小傾向にあります。「第二新卒を欲しがる企業は増えているのに、第二新卒そのものは減っている」——このねじれこそが、いまの市場を理解する一言だと言えそうです。
この記事では、市場規模の推移、企業側の採用姿勢の変化、人材紹介市場の動き、現在の市場の特徴、そして今後の見通しという流れで、公的統計や企業調査のデータをもとに整理していきます。
①市場規模・人材プールの推移——「転職したい人」は増え、「若手人材」自体は減っている
まず土台となる数字から見ていきます。厚生労働省の「新規学卒就職者の離職状況」によると、令和4年3月卒業者の3年以内離職率は大卒33.8%・高卒37.9%でした。前年度(令和3年3月卒業者)は大卒34.9%・高卒38.4%と、ここ15年で最も高い水準だったことを踏まえると、直近ではわずかに落ち着きを見せていることになります(出典)。とはいえ、3人に1人以上が3年以内に離職する状況自体は、依然として大きくは変わっていません。
ここで、離職率にまつわる有名な通説にも触れておきたいと思います。「7・5・3現象」という言葉を聞いたことがある方も多いのではないでしょうか。「中卒者の7割・高卒者の5割・大卒者の3割が、就職後3年以内に離職する」という、新卒の早期離職を語るときによく引き合いに出される慣用句で、デジタル大辞泉にも項目として採録されています(出典)。誰が最初に言い出したのかについては、経済広報センターのアンケートが発端という説や、内閣府の青少年白書で広まったという説など複数の説が伝わっており、はっきりとした提唱者・初出は特定できませんでした。
この「7・5・3」という数値は現状とどれくらい合っているのでしょうか。先ほどの厚労省データを学歴別に見直すと、令和4年3月卒業者の3年以内離職率は、中学卒54.1%(前年度比+3.6ポイント)・高校卒37.9%(同▲0.5ポイント)・短大等卒44.5%(同▲0.1ポイント)・大学卒33.8%(同▲1.1ポイント)でした(出典)。通説の「70%・50%・30%」と並べてみると、大卒は33.8%とほぼ「3割」の水準に収まっている一方、中卒(54.1%)は通説より約16ポイント、高卒(37.9%)は約12ポイント、それぞれ低いことが分かります。つまり現在は「7・5・3」というより、感覚的には「概ね5・4・3」に近い状態です。
では「7・5・3」はまったくの誤りなのかというと、そうとも言い切れません。厚労省が公表している学歴別離職率の38年分の推移データを見ると、中卒66〜73%・高卒47〜50%という「7・5・3」に近い水準だったのは、平成7年〜18年頃(1995〜2006年3月卒業者)、いわゆる就職氷河期の時期でした。中卒・高卒・大卒のいずれも離職率のピークは平成12年(2000年)3月卒業者で一致しており(中卒73.0%・高卒50.3%・大卒36.5%)、当時の厳しい採用環境が学歴を問わず早期離職率を押し上げていたことがうかがえます(出典)。つまり「7・5・3現象」は、現在の実態というより、就職氷河期当時の数字に近い通説だと言えそうです。大卒の「3割」水準だけは、当時から今日までほぼ一貫して当てはまっている点も、あわせて押さえておきたいところです。
さらに踏み込んだデータもあります。厚労省「令和5年若年者雇用実態調査」では、転職を希望する若年正社員の割合が31.2%となり、平成30年調査の27.6%から3.6ポイント増加しました。転職理由の上位は「賃金条件がよい会社に変わりたい」(59.9%)、「労働時間・休日条件がよい会社に変わりたい」(50.0%)です(出典)。
一方で、同じ調査で見過ごせないのが、事業所に占める若年労働者(15〜34歳)の割合が23.7%と、前回2018年調査の27.3%から低下している点です。つまり、「転職したい」と考える若手の比率は上がっているのに、そもそも若手人材の絶対数・構成比は縮んでいる。第二新卒という人材プールは、需要が増える一方で供給の土台が細っていく、という構造的な局面に入っていることがうかがえます。
全年齢を対象にした総務省統計局「労働力調査」では、2024年平均の転職者数は331万人で、前年比0.9%増、3年連続の増加でした。ただし「転職等希望者数」(転職したいが実現していない人)は約1,000万人で、前年比0.7%減と8年ぶりに減少しています(出典)。この統計は年齢を問わない全体の数字なので第二新卒層だけを切り出せているわけではありませんが、「転職したい人の一部が、実際に転職できるようになってきた」流れの傍証にはなりそうです。
求人の現場感覚を示す民間データも紹介しておきます。人材業界メディアHRogの集計によると、「第二新卒」を条件に含む正社員求人数は、2020年1月の9,348件から2024年5月には21,483件へと、約4年半で129.8%増加しました。実に2.3倍近い伸びです(出典)。これは政府統計ではなく民間の求人媒体データである点には留意が必要ですが、企業側の「第二新卒を採りたい」という意欲が求人票の数として表れていると見てよさそうです。
②企業側の採用姿勢の変化——「大企業は慎重」という通説は、データではむしろ逆だった
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