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「エロ広告規制法案」の条文の曖昧さは解消されたか――「準ずる情報」を民間プラットフォームに委ねる危険


伊藤孝恵議員の反論でも、規制対象の拡張を止める基準と誤判定の救済は示されていない

国民民主党の伊藤孝恵参議院議員から、いわゆる「エロ広告規制法案」への批判を受け、二つの説明が示された。

一つ目の投稿では、法案提出時に用いた「エロ広告に特化した内容」という説明は誤りであり、「エロ広告を念頭に置いた内容」が正確だと訂正した。また、現行法上の「青少年有害情報」は表現の自由に配慮した抑制的な定義であり、それに「準ずる程度」の情報を加えても、対象が無限定に広がるものではないという趣旨の説明をしている。[1]

二つ目の投稿では、政府や主務官庁が個別情報を判定する制度ではなく、実際の判断と具体的基準の策定は関係事業者や保護者などの民間主体に委ねられていると説明した。さらに、法案第30条第6号の第三者評価団体が評価する対象には、第23条の7の「準ずる情報」は含まれないという趣旨も示している。[2]

では、この説明によって、私が前稿「『エロ広告規制法案』の条文の曖昧さが招く危険性」で示した疑問は、どこまで払拭されたのか。[3]

結論から言えば、いくつかの事実関係は明確になった。しかし、前稿の核心である次の疑問は解消していない。

既存の「青少年有害情報」だけでなく、それに「準ずる情報」まで対象に加え、具体的な線引きを民間プラットフォームへ委ねる制度で、運用上の対象拡張を何が止めるのか。

今回の説明によって明らかになったのは、この懸念が誤解だったということではない。むしろ、法律が具体的な境界を示さず、民間主体が自主基準によって対象を具体化する制度であることが、改めて確認された。

1.この記事は、公開質問への「回答義務」を論じるものではない

最初に、検証の前提を明確にしておきたい。

伊藤議員には、私が前稿で掲載した公開質問へ個別に回答する義務があるわけではない。今回の二つの投稿も、私の記事への正式な回答書として発表されたものとは確認できない。

そのため、「何問中何問に答えたか」という採点は行わない。投稿で触れられなかった事項について、「意図的に隠した」「回答を拒否した」と動機を推測することもしない。

確認するのは、次の一点である。

今回の説明によって、前稿で公開情報からは確認できなかった法案の対象、基準、運用、救済、立法過程が、どの程度明らかになったのか。

評価の対象は、伊藤議員の回答姿勢ではなく、法案をめぐる不確実性がどれだけ減ったかである。

2.前稿の中心は、最初から「準ずる情報」と民間判断だった

前稿は、冒頭で法案の構造を次のように整理していた。

  • 法案には「エロ広告」という定義がない。

  • 入口となるのは、性的情報だけに限定されない既存法上の「青少年有害情報」である。

  • さらに「青少年有害情報に準ずる程度に、青少年の健全な成長を著しく阻害するおそれが大きいと認められる情報」まで、同様の対応対象に加える。

  • 実際の線引きを行うのは行政ではなく、広告流通を握るプラットフォームである。

  • 一方で、誤判定された広告主や表現者への理由説明、再審査、復旧は法案に書かれていない。

つまり、前稿が問題にしたのは「政府が個別広告を審査するのではないか」という疑問ではない。

問題にしたのは、既存の定義よりさらに外側へ対応対象を広げる第23条の7を設けながら、その具体化を民間の自主基準へ委ねることである。[3]

前回の改稿では、「政府ではなく民間が判断することは前稿の前提である」という点を強調しすぎた。その結果、「準ずる情報」という追加的な拡張条項を、記事全体の中心ではなく一つの論点として扱ってしまった。

これは構成上の誤りだった。

「準ずる情報」は脇の論点ではない。前稿の危険性評価を支える中心的な条文である。

3.第23条の7は、既存の定義を狭める条文ではなく、対応対象を追加する条文である

改正案第23条の4から第23条の6は、大規模デジタルプラットフォーム提供者に対し、特定広告に「青少年有害情報」が含まれる場合について、次の措置を義務付けている。

  • 青少年閲覧防止措置の実施要領を定め、公表すること。

  • 国民からの連絡を受け付ける体制を整備すること。

  • 措置の実施状況と連絡受付状況を毎年公表すること。

そのうえで第23条の7は、次の情報についても、前3条と同様の措置を講じるよう努めなければならないと定める。

青少年有害情報に準ずる程度に、青少年の健全な成長を著しく阻害するおそれが大きいと認められる情報

これは「青少年有害情報」の範囲を狭く確認する条文ではない。

青少年有害情報そのものとして処理されない情報であっても、同程度の危険性があるとプラットフォームが認めれば、実施要領、通報受付、実施状況の公表と同様の措置を取る対象にできる追加規定である。[4]

「準ずる情報」への対応は努力義務であり、広告内容の誤判定それ自体に刑事罰が科されるわけではない。この点は正確に区別する必要がある。

しかし、努力義務であることは、運用への影響がないことを意味しない。

法定の実施要領、国民からの通報受付、年次公表と同じ枠組みへ接続される以上、プラットフォームは自社の規約や広告審査基準の中で、「準ずる情報」を具体化することになる。

その基準がどの範囲まで広がるのかを定める具体的な歯止めは、条文に置かれていない。

4.基準となる「青少年有害情報」自体が、具体的な境界を示す定義ではない

伊藤議員は、現行法第2条第3項の「青少年有害情報」は、表現の自由に配慮した抑制的な定義であり、それに「準ずる程度」と付けても無限定には広がらないという趣旨を説明している。[1]

確かに、現行法には「著しく」「直接的かつ明示的」「わいせつな」「陰惨な」などの限定語が置かれている。単に犯罪、性、暴力を描けば、直ちにすべてが青少年有害情報になるわけではない。[5]

しかし、現行法の政府解説は同時に、次のことを明記している。

  • 政府や主務官庁は、個別情報の該当性を判断しない。

  • 具体的に何が青少年有害情報に当たるかを判断するのは、関係事業者や保護者などの民間主体である。

  • 法律上の定義は、規制対象の具体的な範囲を画定する基準を示すものではない。

  • 具体的基準の策定は、民間主体の自主的・自律的な取組に委ねられる。

つまり、伊藤議員が根拠として示した公的解説自体が、基準となる「青少年有害情報」には、法律上の確定的な境界がないと説明している。[5]

そのような概念に対して「準ずる程度」と書いても、比較の物差しが自動的に明確になるわけではない。

「何と同程度なら準ずるのか」を判断するには、先に基準側の具体的な境界が必要である。しかし、その境界は法律ではなく、各民間主体の自主基準に委ねられている。

したがって、「準ずる程度だから無限定には広がらない」という説明だけでは、次の疑問は解けない。

  • 何を比較対象として「同程度」と判断するのか。

  • 該当する具体例と、該当しない具体例は何か。

  • 広告画像だけでなく、文言、リンク先、作品全体の文脈を考慮するのか。

  • 一般サイト、子ども向けサイト、成人向けサービスで同じ基準を使うのか。

  • 想定年齢や配信先を制御できる場合でも、広告自体を拒否するのか。

  • 一度追加された対象を、誰が、どの手続で見直すのか。

限定語が存在することと、実務上の規制範囲が予測可能であることは同じではない。

5.正確には、「民間団体」ではなく民間プラットフォームが個別判断する

ここでは、判断主体を正確に区別する必要がある。

改正案第23条の7によって、「準ずる情報」に該当するかを実務上判断し、実施要領、連絡受付、公表に反映する主体は、大規模デジタルプラットフォーム提供者である。

第30条第6号に追加される民間の第三者評価団体には、個別広告を削除する法的権限も、「準ずる情報」の法的範囲を決定する権限も与えられていない。

また、条文上、第30条第6号の評価対象は第23条の4の青少年閲覧防止措置であり、伊藤議員も「準ずる情報」は第三者評価の対象に含まれないという趣旨を説明している。[2][4]

この点は、前稿の懸念を精密化するうえで重要である。

したがって、問題を次のように表現するのは正確ではない。

第三者評価団体が「準ずる情報」を決め、直接規制範囲を広げる。

より正確な制度構造は、次のとおりである。

法律が抽象的な「準ずる情報」を追加する。
大規模プラットフォームが、自主基準によってその対象を具体化する。
国民からの通報と対応状況の公表が、広めに措置を取る誘因になり得る。
第三者評価団体は、少なくとも第23条の4の措置について外部評価を行い、プラットフォームの規約運用に間接的な影響を与え得る。

つまり、直接の判断主体は「民間団体一般」ではなく、広告流通を管理する民間プラットフォームである。

一方、通報、公表、外部評価が、プラットフォームの判断を安全側へ押す圧力になり得るという懸念は残る。

6.広がるのは法律の文字ではなく、実務上の広告拒否範囲である

「民間が法律の規制範囲を勝手に変更する」と表現すると、厳密には正確でない。

民間プラットフォームが法律の条文そのものを書き換えるわけではなく、法的な意味での適用範囲は、最終的には法解釈によって定まる。

しかし、広告主や表現者にとって直接影響するのは、裁判所が何年も後に示す抽象的な法解釈より、日々の広告審査である。

プラットフォームが自主基準を更新し、次のような表現を「準ずる情報」として扱えば、法律改正がなくても、実務上の広告拒否範囲は拡大する。

  • 肌の露出や身体の強調を含むイラスト。

  • 恋愛、妊娠、授乳、性教育、医療を扱う広告。

  • ホラー、戦闘、犯罪、社会問題を扱う作品広告。

  • 画像単体では刺激が強く見えるが、作品全体では別の文脈を持つ表現。

  • 成人向けではないが、苦情が集中しやすいジャンルや作風。

これらが実際に対象になると断定するものではない。

問題は、対象に含めないことを保障する条文、具体例、審査手続、異議申立てがないため、各社が安全側へ広げる余地が残ることである。

さらに、広告配信市場では、一社の厳しい基準が他社の基準や広告代理店の入稿基準へ波及し、事実上の業界標準になることがある。

したがって、前稿の懸念は、法律上のカテゴリーが毎日自動的に増殖するという意味ではない。

法律改正を経なくても、各プラットフォームの自主基準改定、通報対応、炎上回避、広告ネットワークの共通運用によって、実務上排除される表現の範囲が拡張し続けるおそれを問題にしている。

7.「準ずる情報」が第三者評価の対象外でも、中心的な問題は残る

伊藤議員が、第30条第6号の第三者評価には「準ずる情報」が含まれないと説明したことは、一つの疑問を狭める情報である。

少なくとも、法案が第三者評価団体に「準ずる情報」の個別判定権を与える、という理解は修正すべきである。

しかし、それによって第23条の7の問題がなくなるわけではない。

第23条の7は、大規模プラットフォーム自身に対して、「準ずる情報」にも前3条と同様の措置を講じるよう求めている。

すなわち、第三者評価の正式な対象から外れていても、プラットフォームは次の対応を自主基準へ組み込める。

  • 「準ずる情報」を含む広告への閲覧防止措置。

  • その実施要領の作成と公表。

  • 国民からの連絡受付。

  • 対応状況の公表。

したがって、第三者評価団体が直接決めないことは、民間プラットフォームによる対象拡張の歯止めにはならない。

むしろ必要なのは、第23条の7について、対象の具体例、非該当例、考慮要素、審査手続、見直し手続、救済方法を条文または拘束力ある基準に書くことである。

8.通報と公表は、透明性にも過剰規制の誘因にもなり得る

通報窓口と実施状況の公表には、明確な利点がある。

悪質な広告を利用者が知らせる経路ができ、各社がどの程度対応しているかを外部から確認できる。基準を公開しないまま広告を止めるより、実施要領を公表させる方が透明性を高める可能性もある。

一方、公表される指標が片側だけであれば、過剰規制を促す。

例えば、次の数値だけが評価される場合である。

  • 通報件数。

  • 削除・停止件数。

  • 対応速度。

  • 見逃したと批判された広告の数。

これに対し、次の数値が公表されなければ、適法な広告を誤って止めた損失は見えない。

  • 誤判定件数。

  • 異議申立て件数。

  • 再審査で判断が覆った割合。

  • 広告やアカウントが復旧するまでの時間。

  • 苦情があっても非該当と判断した件数と理由。

見逃しだけが批判され、誤停止が測定されなければ、プラットフォームにとって合理的なのは「迷ったら止める」運用になる。

「準ずる情報」のような抽象的概念に、この非対称な評価構造が重なることが問題である。

9.誤判定の救済については、今回も何も新しく示されていない

前稿は、法案に次の仕組みが書かれていないことを問題にした。

  • 広告拒否、配信停止、アカウント制限の具体的理由の通知。

  • 適用した基準と証拠の提示。

  • 人による再審査を含む異議申立て。

  • 審査回答と復旧の期限。

  • 誤判定された広告やアカウントの違反記録の取消し。

  • 一件の広告判断をアカウント全体の停止へ安易に波及させない仕組み。

  • 大量通報、嫌がらせ通報、競争相手による通報濫用への対策。

今回の二つの投稿には、これらに関する新しい説明は含まれていない。

政府が個別判断しないのであれば、民間判断の誤りを訂正する手続は、さらに重要になる。

行政による直接審査ではないことは、手続保障を不要にする理由ではない。

10.「政府ではなく民間が判断する」は、疑問の解決ではなく制度構造の確認である

伊藤議員の説明どおり、現行法は政府や主務官庁が個別情報を判定する制度ではない。

しかし、この点は前稿ですでに明記していた。

前稿は、行政による事前検閲ではなく、法律上の圧力を受けたプラットフォームによる広告拒否、配信停止、アカウント停止という間接的な影響を問題にしている。[3]

したがって、「判断するのは民間である」という説明によって、前稿の疑問が払拭されたとはいえない。

むしろ、次の制度構造が確認された。

法律は具体的な規制境界を示さない。
具体的な基準は民間主体が作る。
改正案は、既存の定義に加えて「準ずる情報」を対象にする。
その判断に誤りがあった場合の法定救済は置かれていない。

これは前稿が危険性として指摘した構造そのものである。

11.「エロ広告に特化」の訂正は、対象範囲の広さを確認した

伊藤議員が「エロ広告に特化した内容」という説明を誤りだったと認め、訂正したことは評価すべきである。

この訂正によって明確になったのは、法案が法的には性的広告だけを対象としていないという事実である。

党の公式説明でも、通称は「エロ広告規制法案」だが、実際の措置対象は「デジタル広告に含まれる青少年有害情報」とされている。現行法の青少年有害情報は、性的情報だけでなく、犯罪・自殺誘引、著しく残虐な情報も含む。[6][5]

さらに第23条の7は、それらに「準ずる情報」まで同様の対応対象にする。

したがって、訂正によって解けたのは、「本当にエロ広告だけを法的対象としているのか」という事実上の疑問である。

答えは「限定していない」だった。

しかし、これは対象範囲への懸念を反証したのではない。

なぜ性的広告への対応を掲げながら、より広い青少年有害情報全体と、その外側の「準ずる情報」まで対象にしたのかという疑問を、より明確にした。

12.ヒアリング先と立法事実についての不確実性も変わっていない

前稿の公開質問では、法案作成に当たり、誰から説明、資料提供、要望を受けたのかを確認した。

具体的には、広告業界団体、広告主、広告代理店、広告配信事業者、大規模プラットフォーム、出版社、電子書店、漫画家、イラストレーター、ゲーム事業者、個人クリエイター、小規模広告主、広告停止を経験した事業者、法律・子どもの権利の専門家、子ども本人と保護者などから意見を聴いたかを尋ねている。

また、外部団体の調査、アンケート、相談記録、署名、事例集を立法事実として利用したのか、それが第23条の7や第30条へどのように反映されたのかも質問した。[3]

今回の投稿には、ヒアリング先、使用資料、立法事実、外部提言の条文への反映過程について、新しい情報は含まれていない。

このことから、ヒアリングをしていない、または特定団体との関係を隠していると結論付けることはできない。

正確な評価は、前稿で示した不確実性が今回の説明によっては減らなかった、ということである。

第23条の7のような抽象的な拡張規定を設けるのであれば、誰のどのような事例を根拠に必要と判断したのか、規制の影響を受ける側からも意見を聴いたのかを示す必要がある。

13.既存の自主規制では何が不足するのかも、なお不明である

国民民主党の法案提出時の公式発表には、伊藤議員の発言として、ネット広告には自主規制がなく、業界団体も存在しないという趣旨の説明が掲載されている。[6]

しかし、JIAAはインターネット広告の業界団体として、広告掲載・配信の実務指針となるガイドラインや自主ルールを設けている。JAROも広告への意見・苦情を受け付け、広告主へ自主的な改善を促している。[7][8]

もちろん、団体や自主ルールが存在することと、現在の仕組みが十分であることは別問題である。

非加盟事業者、海外事業者、悪質広告主の再出稿、複雑な広告流通経路など、既存制度に限界がある可能性はある。

だからこそ必要なのは、「存在しない」という説明ではなく、次の具体的な検証である。

  • 既存の自主規制が届かない事業者は誰か。

  • 現行の通報制度で解決できなかった事例は何件あるか。

  • 既存基準では対処できない広告の具体例は何か。

  • なぜ「青少年有害情報」だけでは足りず、「準ずる情報」が必要なのか。

  • 対象を性的広告へ限定する、配信先を制御するなど、より制限の小さい方法ではなぜ不十分なのか。

今回の反論では、この立法必要性の核心も明らかになっていない。

14.今回の反論で払拭されたこと、されなかったこと

明確になったこと

  • 「エロ広告に特化した内容」という説明は誤りで、法的対象はより広いこと。

  • 政府や主務官庁ではなく、民間主体が具体的な判断基準を作る制度であること。

  • 第30条第6号の第三者評価団体は、「準ずる情報」を直接評価する制度ではないこと。

しかし、疑問を解消しなかったこと

  • 政府ではなく民間が判断する点は、前稿が最初から置いていた前提である。

  • 第三者評価団体が直接判断しなくても、第23条の7によりプラットフォーム自身が「準ずる情報」を具体化する。

  • 「準ずる程度だから無限定には広がらない」という説明だけでは、具体的な境界を示していない。

  • 通報、公表、炎上回避、自主基準改定による運用上の対象拡張を止める仕組みがない。

  • 理由通知、異議申立て、人による再審査、復旧期限がない。

  • ヒアリング先、立法事実、外部提言の反映過程は明らかになっていない。

したがって、今回の説明を踏まえた評価は次のとおりである。

第三者評価団体が「準ずる情報」を直接決めるという理解は修正すべきである。
しかし、より根本的な問題
――法律が「準ずる情報」という追加的な対象を設け、その具体的な線引きを民間プラットフォームへ委ね、運用上の拡張を止める基準と誤判定救済を置いていないことは、何も解消していない。

15.疑問を払拭するために必要な修正と説明

第23条の7を残すのであれば、少なくとも次の安全装置が必要である。

  • 「準ずる情報」の該当例と非該当例を限定的に示すこと。

  • 広告の内容だけでなく、表示先、想定年齢、リンク先、作品全体の文脈を考慮させること。

  • 全面拒否より、年齢別配信や表示先制御によるゾーニングを優先すること。

  • 判断理由、適用基準、根拠を広告主へ通知すること。

  • 人による再審査、回答期限、復旧期限を保障すること。

  • 誤判定率、取消率、復旧時間を年次公表の対象に含めること。

  • 大量通報や嫌がらせ通報を識別し、件数だけで措置しないこと。

  • 第30条第6号の第三者評価対象に第23条の7を含めないことを、解釈ではなく明確に示すこと。

  • ヒアリング先の類型、主な意見、使用資料、条文への反映状況を公開すること。

より根本的には、「エロ広告」を問題にするのであれば、第23条の7を削除し、対象を性的広告と未成年者への不適切な配信に絞る方法も検討すべきである。

新しい手口への対応が必要であるとしても、対象拡張を各社の自主基準だけに委ねるのではなく、公開された事例、専門家審査、国会審議を経て法律を改正する方が、民主的な統制と予測可能性を確保できる。

おわりに――「準ずる情報」を民間判断へ委ねる危険は残った

伊藤議員が「エロ広告に特化」という誤った説明を訂正したこと、第三者評価団体の正式な評価対象に「準ずる情報」が含まれないと説明したことは、事実関係を整理するうえで意味がある。

しかし、前稿の中心的な懸念は、第三者評価団体が個別広告を直接削除することではなかった。

問題は、次の制度構造である。

法律上の「青少年有害情報」は、具体的な規制境界を示す定義ではない。
その外側に「準ずる情報」を追加する。
具体的な対象は、大規模プラットフォームが自主基準で決める。
通報と公表が、安全側へ対象を広げる誘因になり得る。
それにもかかわらず、誤判定された広告主や表現者の救済は定めない。

「政府が判断しない」という説明は、この問題への反論ではない。

「準ずる程度だから無限定には広がらない」という説明も、比較基準、具体例、非該当例、見直し手続を示さない限り、運用上の歯止めにはならない。

法律の文字が自動的に広がるのではない。

しかし、法律が曖昧な追加カテゴリーを置き、その具体化を市場の入口を握るプラットフォームへ委ねれば、法改正を経ずに、実務上排除される表現の範囲が広がり続けるおそれがある。

今回の反論によって明確になったのは、条文の曖昧さが解消されたことではない。

「準ずる情報」を民間プラットフォームの自主判断へ委ねながら、対象拡張を止める基準と、誤判定から表現者を救う手続を置いていないという、前稿が問題にした危険がそのまま残っていることである。

参考資料

  1. 伊藤たかえ議員のX投稿(法案の趣旨、「特化」の訂正、「準ずる程度」に関する説明)

  2. 伊藤たかえ議員のX投稿(民間主体による判断、第三者評価の対象に関する説明)

  3. 前稿:「エロ広告規制法案」の条文の曖昧さが招く危険性

  4. 参議院:青少年インターネット環境整備法改正案・提出法律案

  5. こども家庭庁:青少年インターネット環境整備法関係法令条文解説

  6. 国民民主党:議員立法「エロ広告規制法案」を提出

  7. JIAA:広告掲載基準の策定及び運用に関するガイドライン

  8. JARO:活動概要


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