大江山連峰👹「赤赤トレイル」2日間縦走|暑さ・道迷い・マダニに苦しんだ26kmテント泊記
5月の大江山連峰「赤赤トレイル」を、2日かけて歩いた。
最高峰は832m。
数字だけ見れば穏やかに見えるけれど、実際は初夏の日差しと長い稜線、そして判断力を削る暑さに試される縦走だった。
これは、景色を楽しむ山旅が、途中で“世界が目印だけになる”ほど過酷になり、そこからもう一度色を取り戻すまでの記録です。

赤石ヶ岳へ|赤赤トレイルで最も美しい草原の尾根


鬼嶽稲荷神社から酒呑童子の慰霊碑へ寄り道し、その裏手から縦走路の尾根へ取りつく。


加悦双峰公園上の分岐手前で、突然視界が開けた。
笹原の向こうに、一本の道が草原の尾根をまっすぐ伸びている。
道は赤石ヶ岳へ吸い込まれるように続いていた。

引き寄せられるように、足が前へ出ていた。
けれど分岐を越えて登りが始まると、その余裕は急速に削られた。赤い岩がごろごろ転がり、足の置き場が安定しない。暑さが身体に溜まっていく。楽しいという感覚が消え、「まだ着かないのか」だけが残る。

山頂へ着いた瞬間、来た道を戻らなければならない現実が待っていた。鬼嶽稲荷神社分岐までの登り返し。景色は変わらない。身体の状態だけが、見える世界を変えていた。


千丈ヶ嶽〜鍋塚|日陰の少ない稜線で暑さに耐える

鬼嶽稲荷神社分岐から千丈ヶ嶽までは、拍子抜けするほど穏やか。山頂からの展望は素晴らしかった。ただ、日陰がほとんどない。座っていても、身体がじりじり焼かれていく。


救われたのは、湿気の少なさだった。木陰へ入るたびに、さらりと風が抜けていく。去年の同じころ、無風の稜線で熱気に包まれながら歩いた悪夢が蘇り、あれよりはましだと思い直した。その小さな安堵が、足を前へ運んでくれた。

千丈ヶ嶽から鳩ヶ峰、鍋塚へ向かう道は、何度も大きく下っては登り返す。ピークへ着くたびに展望は良くなる。鳩ヶ峰の山頂に立つと、手前に鍋塚、その奥に航空管制塔らしき構造物まで見えた。今日のゴールが、遠すぎた。そのたびに、気持ちが少しずつ削られていく。



鍋塚への登りに日陰はなく、初夏の日差しが容赦なく炙り続けた。

それでも、鍋塚の丸みを帯びた稜線が空へ浮かび上がるのを見て、足が止まった。苦しいのに、見惚れてしまう。山には、そういう力がある。


大笠山テント泊|鬼の岩屋と静かすぎる夜


鍋塚から鬼の岩屋を経て、大笠山へ。酒呑童子の住処と伝わる鬼の岩屋は、思っていた以上に静かな場所。その奥の展望台に、航空管制塔が現れる。山の中で見るには、不思議すぎる光景だった。



大笠山でテントを張ると、身体にまとわりついていた熱がゆっくり抜けていった。


風はほとんどない。梟と鹿の声だけが聞こえる。静かすぎた。あまりにも静かすぎると、違和感になる。神隠しに遭いそうな気配が、暗闇の中にあった。

浅い眠りを何度か繰り返した。疲れは取れていた。でも、不思議な夜。
普甲山〜茶屋ヶ成|山の隙間に見えた天橋立


車でこれるのね。
大笠山を出ると、空気がまだ朝の湿度を含んでいた。普甲峠へ下る道から、トレイルの質が少し怪しくなってくる。落ち葉、枝、草に道筋が埋もれかける。歩く人が少ないのだろう。



普甲山へは閉鎖されたスキー場のゲレンデを直登した。傾斜は緩く、視界が開けていて気持ちよく歩けた。悪くない出だし。



茶屋ヶ成に着いたとき、木のベンチと東屋が草地に並んでいた。

その奥に山の重なりがあって、その先に、海があった。天橋立だった。主役を張るような見え方じゃない。山の隙間に、さりげなくいる。
「見えた」と思った。それだけだった。まだ余裕があった。
杉山核心部|道迷いとマダニで景色を見る余裕が消えた


杉山へ入ったところから、空気が変わった。
尾根が広くなり、道が溶けていく。落枝が散乱し、ピンクテープが木の陰に隠れる。少し角度を変えないと見えない。見つけるたびに、また次を探す。

そしてマダニだ。草をかき分けるたびに、靴や脚へ這い上がってくる。立ち止まって払い、また歩く。実際、杉山を抜けたあと、靴に一匹ついていた。

いつの間にか、自分の呼吸音が耳に届くようになっていた。うるさいくらいに、聞こえる。足を一歩踏み出すたびに、躊躇する。足裏が地面の凹凸を、妙に細かく拾っていた。
世界が、目印だけになった。
景色を見ていなかった。写真も撮らなかった。視界の中にあるのは、次のテープの色と、足元の草だけ。茶屋ヶ成から見えていた天橋立のことも、もう考えていなかった。

杉山の山頂標柱が、木々の間に現れた。長かった。ようやく、核心部を抜けた。あとは後半戦だ。

宇野ヶ岳|ルートが明瞭になり、ようやく景色を楽しめた

宇野ヶ岳へ入った瞬間、ルートが戻ってきた。
道が読める。森が穏やかになる。大木が静かに立ち並び、深い緑の中に呼吸できる空間があった。杉山で張り詰めていた何かが、少しずつほぐれていく。
山頂からは正面に、天橋立と宮津の街並みが広がっていた。


茶屋ヶ成で一度見た景色だった。でも今回は違う。岩に腰を下ろして、しばらく眺めた。ここまで来れた。残りは赤岩山、一座だけだ。
あと一踏ん張りでゴールできる。その感覚が、身体にすっと入ってきた。同じ山の中なのに、世界の色がまるで違っていた。
赤岩山|ゴールが見えた瞬間に戻ってきた余裕
宇野ヶ岳から赤岩山へは、いったん鞍部まで下って登り返す。疲れは抜け切っていない。足が重い。それでも、あとは下山するだけという事実が、身体を前へ動かしてくれた。
山頂は岩場だった。標柱の上に、水色に塗られた小さな石が乗っている。


誰かが描いて、置いていったものだろう。石には山の稜線と、文字が刻んであった。

杉山では写真を撮る気力もなかった。それなのに今、この小さな石を見て、顔がほぐれていた。
世界に色が戻るというのは、こういうことなのかもしれない。
小鹿と、空になった水

赤岩山を往復し、ダイラ道から喜多駅へ下る。踏まれた形跡の薄い下山道は、落ち葉や枝に埋もれかけていた。


途中、登山道のど真ん中に、小鹿が伏せるようにしていた。周囲に完全に同化していて、最初は気づかなかった。こちらを警戒しながら、じっと動かない。目線を合わせようと少ししゃがんだ瞬間、足をガクガクさせながら斜面を駆け下りていった。
不審者から逃げ惑う子供のよう。少し複雑な気持ちになった。

喜多駅へ着いたとき、水がちょうど空になっていた。判断が少しずれていたら、危なかったかもしれない。電車は一時間半後だった。思わず笑ってしまった。


大江山連峰・赤赤縦走路、2日間の旅を終えて。

疲れと、暑さと、何度もなくした余裕。
2日目、ザックが軽かった。水と食料がほぼ空になっていたからだ。それだけで、身体がこんなに自由になるのかと思った。
もう少し荷を減らせば、もっと遠くへ行ける。
あの草原の一本道を、今度はもっと軽い荷物で歩いてみたい。

💡2日間の行程データ(サマリー)
ルート:
【1日目】2026/5/30
大江駅🚃 〜 🚕(鬼タク利用) 〜 鬼嶽稲荷神社 〜 赤石ヶ岳 〜 千丈ヶ嶽 〜 鳩ヶ峰 〜 鍋塚 〜大笠山(泊)
【2日目】2026/5/31
大笠山〜 普甲峠 〜 普甲山 〜 茶屋ヶ成 ~ 杉山 〜 宇野ヶ岳 〜 赤岩山 〜 ダイラ道分岐 〜 喜多駅
・歩行距離: 26.6km
・所要時間: 11時間40分(休憩含む)
・歩数:歩
・累計高度:登り1,743m、降り2,365m

💡 トレイルTips
登山口への交通の便が悪いため、鬼タクを活用すると便利。詳細は福知山市役所ホームページを参照
稜線に水場がないため、多く飲用水を持参した方が良い。
赤岩ヶ岳から赤石山方面へ抜けた方が歩きやすい。
赤赤トレイルで最も注意したい区間:茶屋ヶ成〜杉山〜宇野ヶ岳手前でした。理由は、道が薄い・尾根が広い・ピンクテープを見失いやすい・マダニが多いからです。GPS確認頻度はかなり高めでした。
茶屋ヶ成から杉山への登りは道筋がわかりずらいため、目印をしっかりと確認してから進むといいです。必ず近くに次の目印があります。
京都丹後鉄道は、本数が少ないため時刻表を確認しておくことをお勧めします。
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