新しい学部、つくります。……その前にやることが多すぎる。
最近、大学のニュースを見ていると、
「○○学部を新設します」
「既存の学部を再編します」
「デジタル分野の新学科を設置します」
といった話をよく見かけます。
少子化が進む中、大学もこれまでと同じままではいられません。
社会で必要とされる人材も変わっていますし、国もデジタルや理工系などの成長分野への学部再編を支援しています。実際、2027年度開設予定の届出だけを見ても、多くの私立大学が新しい学部・学科の設置を進めています。
大学が時代に合わせて変わっていくこと自体は、とてもいいことだと思います。
これから大学を選ぶ高校生にとっても、選択肢が増えるのはうれしいことです。
ただ、大学で働いていると、新学部のニュースを見るたびに、ちょっと違うことも考えてしまいます。
「これ、つくるの大変だっただろうなあ……」
「新しい学部をつくろう」で始まる長い道のり
新しい学部をつくると決めたからといって、学部名を考えて、先生を集めて、学生募集を始めればいい。
……もちろん、そんな簡単な話ではありません。
まず、
そもそも、この学部に学生は来てくれるのか。
を考えなければいけません。
どんな人材が社会から求められているのか。
高校生は興味を持ってくれるのか。
卒業後の就職先はあるのか。
設置手続きでも、「学生の確保の見通し」を示すための書類が用意されています。
学部をつくったのに学生が来ませんでした、では困るので、当然といえば当然です。
教育の中身を、一から組み立てる
次に必要なのが、
「そこで、何を教えるのか」
です。
学部の目的を決め、カリキュラムを考え、授業科目を配置する。
その授業を担当できる教員を確保する。
教員予定者については、資格審査のための一覧を作成し、経歴などを確認する必要もあります。現在の文科省の手引でも、申請様式とは別に「審査対象教員一覧」が用意されています。
実習を伴う教育なら、大学の中だけでは完結しません。
実習先や連携先を確保し、どんな体制で教育を行うのかも整える必要があります。設置手続きには「連携協力校等」のための書類も用意されています。
そして当然、施設や設備、予算も必要です。
つまり、新しい学部を一つ作るということは、
小さな大学をもう一つ作るくらいのことを考える
と言ったら、少し大げさでしょうか。
でも、それくらい考えることは多いです。
再編なら、さらに「今あるもの」も考える
新設ではなく、既存の学部・学科を再編する場合には、また別の難しさがあります。
新しい組織だけを考えればいいわけではありません。
今いる学生はどうするのか。
既存の教員はどこに所属するのか。
今のカリキュラムとの関係はどうするのか。
募集を停止する学科があれば、在学生が卒業するまで教育を続けなければなりません。
新しいものをつくりながら、今あるものもきちんと守る。
これが再編の難しいところだと思います。
そして、文科省への手続き
計画がまとまったら、文部科学省への手続きがあります。
認可申請になる場合もあれば、内容によって届出で設置できる場合もあります。
その判断自体についても事前相談の仕組みがあり、教育課程などを示した資料を提出して確認することができます。
そして、現在の「大学の設置等に係る提出書類の作成の手引」を見ると、
一般的な注意事項、
200ページ近い記入要領、、、
教員関係の様式、
学生確保に関する書類、
事前相談関係の資料……
と、なかなか壮観です。
見ているだけで、
「これは一人では無理だな」
となります🤣
しかも、通常業務はなくならない
そして大学職員として、一番伝えたいのはここかもしれません。
新しい学部をつくるからといって、
普段の仕事が止まるわけではありません。
会議はあります。
学生対応もあります。
予算も動きます。
研究支援もあります。
毎年やっている仕事も、そのままあります。
その横で、
新しい学部の企画を進め、
教員と調整し、
カリキュラムを確認し、
データを集め、
資料をつくり、
文科省への手続きを進める。
大学の大きな改革は、だいたい通常営業しながら行われます。
これがなかなか大変です。

新しい学部の名前の後ろに
大学にとって、新しい学部や学科をつくることは、とても大きな挑戦です。
少子化が進む中で、
「これからどんな大学になるのか」
を考えることでもあります。
学生にとって魅力的な教育をつくる。
社会に必要な人材を育てる。
地域の未来につなげる。
その挑戦には、大きな意味があると思います。
でも、新しい学部の名前が発表されるまでには、
たくさんの人が調べて、考えて、話し合って、数字を確認して、書類をつくっています。
大学の改革は、華やかな新学部のニュースだけではありません。
そのニュースになる前の、途方もない準備も含めて大学改革なのだと思います。
そして今日も、どこかの大学で。
「この数字、最新のものですか?」
「この先生の担当科目、これで合ってます?」
「この様式、去年と変わってませんか?」
そんなやり取りが続いている……
かもしれません🤣
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