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永遠平和のために


この21世紀の世界でも、まだあちらこちらで戦争や軍事衝突が継続している。ウクライナ戦争、イランをめぐる軍事衝突、イスラエルとパレスチナをめぐる戦争など。だが、人類はこの歴史のなかで、平和への道を考えなかったわけではない。

欧州国際政治の古典的な原理であり、イギリスが伝統的に重視してきた外交手法のひとつに、力の均衡という概念がある。ナポレオンの登場によってフランスが力を持った時は、反フランスの同盟を結成し、力の均衡を保とうとした。ヒトラーが登場した際も、当初こそ宥和政策を取ったものの、最終的にはイギリスを含む連合国が、ドイツによる欧州支配を阻止するために戦った。

これは、戦争自体の廃止はそもそも無理なため、せめてひとつの勢力が欧州を征服しないように、バランスを保つという極めて現実的な戦略である。これを英語では、Balance of Powerという。

ところが、世界大戦が勃発するような時代に入ると、もっと壮大な平和の手段が求められるようになってきた。もちろん、国際平和の構想はそれ以前から存在していた。だが、第一次世界大戦によって疲弊した世界で、それは単なる理想論ではなく、より現実的な政治課題として浮上したのである。

ロシアのレーニンは、戦争の根源を資本主義と帝国主義に見ていた。そして、社会主義革命が世界的に進み、最終的に階級対立や国家間の対立が克服されれば、戦争も消滅すると考えた。現在の世界観からはちょっと想像できないが、その当時はその思想に共鳴する人々や国家も多く、のちの中国やベトナムなどの共産化にも影響を与えていく考え方である。

その一方で、大国の道を歩み始めたアメリカでは、ウィルソン大統領が、十四か条(Fourteen Points)という考え方を世界に向けて発表した。秘密外交の廃止、公海航行の自由、軍備縮小、民族自決に通じる考え方などを掲げ、その最後の柱として、世界の主要国を中心とした集団的な安全保障体制、すなわち国際的な平和機構の設立を提唱したのである。要するに、国際連盟の基礎となる考え方を世界に向けて発表したのである。

そして、このウィルソン大統領の構想には、さまざまな思想的背景があるが、その重要な源流の一つとして、実はプロイセンの哲学者であるカントの『永遠平和のために』を挙げることができる。わずか数十ページ程度のこの小さな本に、国際連盟、そして今日の国際連合につながる国際平和機構の思想的原型の一つが記されている。

いまでも、普通に本屋や古本屋に行けば、買い求めることができるこの本であるが、私は誰かがこの本を読んでいるのを見たことがない。ほぼどこの図書館にも置いてあるので、一度手に取られてみてはいかがだろうか。

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