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第9話 風をさがして 【後編】

ある時、僕は『湾岸道路』を同じ作家の別の小説の視点で走ってみることにした。
そう、あの日、別れを告げた電話ボックスから。

僕が住む街と湾岸道路は
当時、海岸線に新しくできた道のおかげで
ほぼまっすぐにつながっていた。

走り慣れた道のはずだったが
少し心がざわついていた。

夕陽の沈む海岸通りを過ぎて
湾岸道路に入り、西に向かった。

そう、僕は彼女が住んでいる町に向かった。

工場地帯や、大きなショッピングモール。
過ぎていく景色を見ながら
僕はあの頃のことを考えていた。

もし、あのまま僕が彼女から離れずにいたら
どうなっていただろうかと。

いくら考えても答えなんて出やしない。

しばらく走った後、信号待ちしていると
一台の黒いセダンが僕の隣に止まった。

ふとなにげなく目をやると
助手席には、紛れもない彼女が座っていた。

心臓の鼓動が、身体中に響き始めた。

ヘルメットのスモークシールドのおかげで
向こうからは僕の顔は認識できない。

信号はまだ赤のまま、やけに長く感じた。

彼女を乗せた黒いセダンは
少しフライング気味に青信号を走りだした。

僕は、無意識に追いかけ
運転席側に回った。

そこには、見たことのない少し大人の男性が乗っていた。二人はとても楽しそうに見えた。

気がつくとヘルメットの中で
目の前が滲んで見えた。

『これじゃ、まるでストーカーじゃないか?』

僕はそのままアクセルを開けた。

やっと、あの頃の思いも涙も、
追い越せる気がした。


*「人生はごちゃ混ぜのスープ」は、毎週火曜日・金曜日に新しい一話を公開しています。

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