バーチャルテイスト ―― 人としての食 4Days/Day 3
人としての食
4Days MC: ユウ
──美味しさとは結局のところ、
孤独な脳が夢見る電気信号のバグに過ぎない。
銀色のスプーンを舌に乗せると、ピリッとした微かな刺激とともに、濃厚な塩味と深い旨味が脳の奥底に直接響きました。
でも、私の目の前にあるお皿の上には何も乗っていません。
熱いスープも、柔らかいお肉も、一粒の塩すら存在しない。
私が今口に含んでいるのは、バッテリーが内蔵されたただの金属の棒です。
これが、最新の「電気味覚」のデバイス。
微弱な電流で味蕾をコントロールし、物理的な食材を一切介さずに、脳に直接「美味しい」という錯覚を引き起こすテクノロジーです。
【解説:電気味覚と嗅覚ディスプレイ】
電気味覚(GTS)は、舌に微弱な電流を流すことで味覚を擬似的に再現する技術。
元々は、高血圧などで厳格な塩分制限が必要な患者に対し、「無塩でも美味しく食べられる」ように、健康を維持するための医療目的が出発点である。さらに近年では、数十種類の成分を瞬時に調合して噴射する「嗅覚ディスプレイ」と組み合わせる研究が加速している。
アイさんが語った、生態系から切り離された食材の倫理。
サエコさんが歩いた、効率化されたクリーンな食卓の現実。
それらはすべて、人類が飢えを凌ぎ、命を繋ぐために不可欠な「正解」です。
この電気味覚だって同じ。
元々は、病気や食事制限で食の楽しみを奪われた人を救うための、とても優しくて温かい技術として開発が始まりました。
人類の健康を支えるための、大歓迎すべき手段の一つです。
でも。 もし、味覚を電気で完璧にコントロールできて、さらに匂いまでデジタルで再現できるようになったとしたら。
これとVR(仮想現実)の世界が完全に融合したとき、私たちは一体どうなってしまうのでしょう。
よし。
ちょっと、3年前に設定を合わせて、私の頭の中でダイブしてみます。
──カチ、カチ、カチ。
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