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医学の知識ゼロで医学情報の嘘を見抜く最強メソッド!【032】ようやく医療が科学を採り入れ始めた

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「医療は科学ではない」

以前の医療では、医師の豊富な実践経験に基づいた「勘」によって治療法が決定されるということが、しばしばありました(今でも、熟練の医師の「勘」の重要性は変わらないでしょう)。
そのような優れた勘というのは、すべての医師がもてるわけではありません。
ですから医師によって、治療法に大きなバラツキがあったのです。
時に、適切でない治療が行われたこともあったことでしょう。

また、臨床医学界の重鎮だとか、権威の高い者の言うことが医療の標準となることもありました。
医学部内や病院内でも、「教授の言うことだから、正しいに違いない」、「院長の言うことに、異を唱えることはできない」といった具合です。

科学においては、間違っていることは「間違っている」と言わなければならない、正しいことは「正しい」と認めなければならない。
それができないのなら、それは科学などではない。
1980年代以前の臨床医学には、科学とはほど遠い側面が確かにありました。

1990年代初頭、「これではいけない」と声をあげる者が現れました。
カナダの医学者が初めて、「Evidence-based Medicine」(EBM)の概念と、その重要性について提唱したのです。
日本語では「根拠に基づく医療」と言います。
EBMは文字通り、経験や勘に頼るのではなく、ましてや権威者の言うことに盲従するのではなく、「科学的根拠に基づいて信頼性の高い医療を実施しましょう」ということです。
現在では、文献データベースや種々の医療情報データベースが構築され、医療関係者が誰でも、膨大な情報にアクセスすることができる体制が整えられています。

医療に科学的根拠を求める。
今では当たり前のように思えるEBMの考え方が、医療の世界に速やかに浸透したわけではありません。
比較的早くEBMが実践されたのは、がん治療の領域でしょう。
科学的根拠に基づき、「多数」に対して、もっとも効果が期待できる「標準治療」と、「個」に対して最善の医療を施す「がんゲノム医療」(精密医療)が2000年代以降に顕著な進歩を見せました。
一方で、2010年代の初頭に至ってもなお、食物アレルギーを予防するには、特定の食物を「除去すべし」という科学的根拠に基づかない考え方が診療ガイドラインに記載されていたのです。

医師たちが医療に科学的根拠を求めるようになったのは意外にも、つい最近なのです。
いまだに「ワクチンは打つな」などという根拠のない主張を行う医師がいても、それは仕方のないことなのかもしれません。
ですから、あなた自身で見抜く必要があります。

出所が不明な健康・医学情報が氾濫する現代において、「情報の質を『批判的に』検証する」というEBMの基本的な精神は、医療関係者のみならず一般市民の「リテラシー」としても重要であると認識すべきです。
つまり、EBMにおいてもやはり、「疑う」という姿勢が重要だということです。
そして、そのリテラシーを高めるのに、必ずしも医学の専門知識は必要ないのだということが、私が本書でお伝えしたいことなのです。

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