医学の知識ゼロで医学情報の嘘を見抜く最強メソッド!【036】科学的根拠がない「トクホ」の典型例
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データのグラフを一目見れば「変だ」と気づくことはよくある
この論文の試験では、被験飲料群と対照飲料群の二群について、飲み始める直前と8週後、12週後にCTスキャンでお腹の脂肪の断面積を測定しました。
さて、その結果はどうだったのでしょうか。
論文に掲載された「腹部全脂肪断面積」の数値データをグラフにしたのが下の図です。
8週後から、被験飲料群の人たちの平均の全脂肪断面積が、対照飲料群に対して明らかに低くなっています。
これを見て、あなたは「確かに効果がある!」と思われるでしょうか
何か「変だな」とは思われませんか?

「薬理と治療」2013年、第40巻、第6号、495-503.より筆者作成
被験飲料群では8週後には腹部脂肪断面積は5平方センチ以上も減少し、12週後も維持しています。
これはケルセチンの効果なのでしょうか?
それを判断するには、対照群と比較しなければ確からしいことは言えません。
果たして、対照飲料群を見てみると、8週後には、腹部脂肪断面積が5平方センチほども上昇し、12週後まで同じ程度の脂肪量を維持しているではありませんか!
毒にも薬にもならないはずのプラセボ飲料を飲まされ、普段と変わらない生活を送っていたはずの90人近くもの人々に、なぜ、このような腹部脂肪断面積の急激な上昇が起こり、その後4週間も戻ることなく継続したのか?
これは、「本物を飲んでいる」という暗示の力で数値が良化するプラセボ効果とは逆の現象です。
何か内臓脂肪が増える薬でも盛られたのではないか?と疑うほどです(そんなこと、あるはずありませんが・・・・)。
臨床試験の実施期間中は、すべての被験者には努めて普段通りの生活をしてもらわなければなりません。
突然、ウォーキングとか食事制限とか、お腹の脂肪が減りそうなことを始められては、本当にケルセチンの効果なのかどうかが判別できません。
逆に暴飲暴食など、脂肪が増えるような悪いことをされると、被験飲料の効果が相殺されてしまうかもしれません。
このように食事の影響を受けそうな試験を行う際には、たとえば年末年始をはさむ時期や、食欲の減退する真夏を避けるなど、試験の実施時期なども慎重に検討する必要があります。
臨床試験の実施に当たっては、そこまで気を回さなければならないのです。
明らかな失敗実験
話を戻します。
普段通りの生活をしている90人近くもの人の平均値として、5平方センチ以上も脂肪が増加しているというのは、これはもう尋常な増え方ではありません。
そりゃあ、試験期間中に脂肪が大きく増えたり減ったりする人が何人かはいるかもしれません。
でも、そういう一部の人たちの多少の増減では、平均値としては、これほど大きく変動することは考えにくいのです。
これは極めて不自然な現象です。
対照飲料群の多くの人たちが何らかの要因、すなわち、「交絡因子」の影響を受けていることが非常に強く疑われます。
論文の著者らは、このことに関して、「季節変動によるものと推察」と述べています。
なぜかというと、この試験は初秋から冬にかけて実施されたのですが、過去に同じ時季に実施された他者の臨床試験(カテキンの効果の検証)において、「対照群に同様の変動が認められたという報告があるからだ」と論文に記述しています。
では、その秋冬に特有の因子とは何なのか?
そして、私が最も知りたいことは、対照群のみならず、被験飲料群の人たちも同様に、この季節性の謎の要因の影響を受けていると考えられるのか?ということ。
それらについて、著者らは何も述べていません。
「でも、被験飲料群で明らかに脂肪が減ってるんだから、それでいいじゃないか」ですって?
いいえ、ぜんぜん良くありません。
このように説明不能な交絡因子の影響を強く受けていることが疑われる時点で、この臨床試験は科学実験としては「失敗」なのです。
失敗実験であるからには、このデータをもって「科学的根拠」と呼ぶことは間違いなのです。
このような、とても科学的とは認められないデータでもって「トクホ」を許可されている製品は他にもあります。
国が許可する「トクホ」とは、実にこの程度のいい加減なものなのです。
次回以降、もっと切り込みます!
一部のトクホに科学的根拠がないことなど、まだましな方です。
もっと罪深く、救いようのない「機能性表示食品」にメスを入れていきます。
【次回予告】
まったくデタラメ
企業のやりたい放題「機能性表示食品」
というお話です。
ぜひ、お読みくださいね。
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