医学の知識ゼロで医学情報の嘘を見抜く最強メソッド!【026】古い常識を打ち破るのが西洋医学のポテンシャル
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余命宣告された人たちに「希望の光」
初期の免疫チェックポイント阻害剤(ICI)の治験では、余命宣告を受けた(手の施しようのない)悪性黒色腫(ホクロのがんで、「メラノーマ」ともいう)の患者の数割が著名に延命しました。
延命と言っても、死ぬのが「ちょっと先に伸びた」という程度ではありません。
残された時間を病院のベッドの上で過ごすのではなく、家に帰って、以前と同じような生活に戻れるまでに回復する人が、まだ少ないながらもいたのです。
いつ死ぬかだけが問題だった人たちがです。これは従来の医学の常識を打ち破る、驚くべき成果でした。
しかし、あまり効かない人もたくさんいたことは事実です。
効く人と効かない人との違いは何なのか?
がんには多様性があります。
人の顔がみな違うように、がん細胞の顔もそれぞれに違うのです。
どのようながんに効き、効かないのか? 事前に見分けることはできないのか?
がん細胞の顔の違いは、顕微鏡で見ただけでは分りません。
では、どうやって見分けるのか?
現在では、効く人と効きにくい人を事前の検査(タンパク質や遺伝子の検査)で予測したり、ICI単独では顕著な効果が期待できなくとも、従来の化学療法や放射線療法と組み合わせることで、奏効率を上げられることが判ってきました。
このように、近年の西洋医学では、患者と病気の性質を見極めて治療法を決定する方向にシフトしつつあります。
西洋医学が人間の自然治癒力の重要性に気づいたのは、ほんの20数年ほど前のことであり、まだよく解っていないこともたくさんあります。
今後も、科学的なアプローチによって、自然治癒力をさらにうまく利用することによって、現在では、まだ治療法のない多くの病気も克服されていくことでしょう。
科学は歩を止めることなく前に進み続けます。
過去の常識を打ち破り、未知の扉を開いて、絶望に暮れる人たちに笑顔を取り戻させるのもまた、科学の力なのです。
免疫に関する理解をくつがえした大発見!
2025年のノーベル生理学・医学賞は、坂口志文博士が受賞されました。
坂口博士が発見した自己免疫疾患を抑える「制御性T細胞」。
この発見は、1980年代中頃から1990年代後半にかけての免疫学の常識を覆し、20世紀の古い教科書を大きく書き換える大発見でした。

当時は、「免疫を抑える免疫細胞など存在しない」というのが免疫学者たちの間での常識でした。
免疫学の世界的第一人者と言われる人でさえ、そう信じていたのです。
坂口博士が、「免疫を抑える免疫細胞は存在する」と声高に訴えても、誰も聞いてはくれません。
それどころか、「まだ、そんな胡散臭い研究をしているのか?」と白い目で見られ、誰からも理解されず、理解されないだけではなく、時に強い批判の言葉を浴びせられる始末で、研究費の獲得もままならなかったのです。
そのようななかで坂口博士は、乏しい研究費で、アメリカと日本で研究場所を転々と移しながら、最良の理解者であり研究者でもある妻の教子(のりこ)さんとともに、愚直なまでに免疫を抑える免疫細胞の存在を確信し、信念をもって研究を進めました。
坂口博士が論文で提示した数々のエビデンスは、10年以上にわたって世界中の免疫学者から無視され続けました。
ですが、やがて博士の研究の重要性に気づいた研究者が増えてきて、博士が提唱する「免疫を抑える免疫細胞」の存在を裏付ける研究成果が、他者によって発表され始めたのです。
多くの第三者によって検証され、確認され、ようやく今世紀になってから、制御性T細胞の存在は広く認められることとなました。
これにより、自己免疫疾患をはじめとする、免疫が関与する多くの疾患の成り立ちについて、それまで不明だったことの多くが理解されるようになったのです。
坂口博士の発見によって、がん、自己免疫疾患、アレルギー疾患、移植臓器の拒絶反応の抑制など、これまで副作用の強い薬に頼らざるを得なかった様々な病気に対して、より効果が高く、かつ体に優しい新たな治療法が可能になると期待されています。
重い病気というと、なにも中高年のものだけの問題ではありません。
特に、1型糖尿病や自己免疫性の腸疾患は近年、若い人たちの間で右肩上がりに増えてきており、医療上の重要な問題になっています。
これら、有効な治療法のない病気に苛まれる多くの人たちに、制御性T細胞研究の成果が大いなる福音をもたらす可能性が高まっているのです。
また、本庶博士の免疫チェックポイント阻害剤と組み合わせることによって、より安全で効果の高いがん免疫療法の実現も期待されています。
医療の進歩には、本庶博士や坂口博士が行われたような基礎科学研究が極めて重要です。
それらの研究成果を臨床の現場へ、患者さんのもとに届けるには数十年かかることも珍しくはありません。
それでも、今日は救われない命を、明日は救えるかもしれないと、今この時も、多くの人たちが研究に身を捧げているのです。
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