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医学の知識ゼロで医学情報の嘘を見抜く最強メソッド!【049】ビタミンCがガンに効く?――古すぎる論文は科学的根拠にならない!

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前近代的な古い論文は科学的根拠にならない!



著者のN医師はまた、高容量ビタミンCの抗がん作用についても論じています。
その根拠として、過去の研究報告をいくつか列挙していますが、大半は古いもの(1970年代~1990年代初頭)で、最新の論文でも2006年です。

古い臨床試験、具体的には1990年代前半以前、そして、より特定的には1970年代以前の臨床研究報告の信頼性は疑ってかかった方がよいでしょう。
もう、50年も前となると、臨床試験の手法も臨床統計学の考え方も未発達で、現在の臨床試験から得られたエビデンスに比べると、その信頼性についてはかなり疑ってかかるべきです。
著者は、そのような研究手法の未熟だった時代の研究結果をもって、「根拠」としているのです。
実際のところ、ビタミンCの抗がん作用については、否定的な報告が多くあります。
つまり、第三者による再現性の担保がなされておらず、専門家の間でコンセンサスが得られていないのです。

医学的な主張の根拠として論文が引用されている場合には、その発表年がいつであるのかを気にしてください。
何十年も前の論文しか示されていないのであれば、冷静にこのように自問してください。
「なぜ、こんな古い論文しかないのか?」と。
古い論文しかないのは、誰にも関心をもたれず、検証されなかったか、検証されても再現性が確認されず、支持もされなかったのだと考えることができます。

科学的な思考方法を知らない人たちのなかには、たとえそれが、時代遅れでカビの生えたデータであったとしても、自分の主張に沿う都合のよい内容であれば、ことさらに「エビデンス」としてとりあげ、反証的な研究結果には目を向けない者がいます。
自分の信念や仮説を支持する情報ばかりをことさらに集め、否定的な情報にはあえて目を向けない、あるいは無意識のうちに無視する。
このような人間の行動傾向は認知バイアスの一種であり、特に「確証バイアス」と呼びます。
確証バイアスの一因としては、自分の信念や仮説と矛盾する情報を検証することは、その人にとって認知的な負担になる(つまり、頭と心がしんどい)ためだとのことです。
無意識に反証を遠ざける。このような傾向のある人は、科学には向かないでしょう。

オレンジジュースで頭が良くなる?



また著者のN医師は、血中のビタミンC濃度が高い人は知能指数(IQ)が高いという研究報告があることに言及されています。
そこで、血中ビタミンC濃度が低い被験者に6ヶ月間、オレンジジュースを飲ませたところ、IQが平均で3.54も増加したという研究報告があると言います。
そして、「これは統計学的に有意な数字」なのだと。
また、本研究は1960年に行われたものなので、試験に使用されたオレンジジュースは、「ちゃんとしたオレンジジュースだったろう」と推測しています。
「ちゃんとした」とは、現代のスーパーで売っているような濃縮還元などのまがい物ではない、「本物の」ジュースで、「ビタミンCもちゃんと含まれていたはず」だと推測しているようなのです。
著者には、ちゃんとした本物のジュースの定義は何か、ビタミンCの含有量はいくらだったのか、それらの情報が「論文に書かれていたのか?」と問いたいところです。
「だっただろう」だとか、「はず」だとか、「そう言っていた」などというのは何の根拠にもなりません。

1960年(私ですら、まだ生まれていない)の研究報告のみでもって、オレンジジュースで頭が良くなると述べられているわけですね。
その後、その説は他の研究者によって検証されたのでしょうか?
本当にオレンジジュースで頭が良くなるのなら、著者の言うとおり、オレンジジュースは「凄い」ではありませんか!
だったら、オレンジジュースに含まれる何の成分(ビタミンCとは限らない)が、脳細胞のどこにどう働いて頭が良くなるのか、その点に興味を抱いて、メカニズムを解明しようとする研究者が現れて、詳しく調べられてもいいはずです。

著者は、このオレンジジュースで頭が良くなるという根拠とした1960年の論文を具体的に示していません。
ここでもまた読者には、この説の信ぴょう性を確認しようがないのです。
代わりに、20世紀でもっとも偉大な化学者と言われ、「オーソモレキュラー」という言葉を創出したことでも知られるライナス・ポーリング(1954年ノーベル化学賞、1962年ノーベル平和賞受賞)の『How to Live Longer and Feel Better』を参考図書として挙げています。
ポーリングのような大人物の著書をことさらにとりあげたところで、オレンジジュースで頭が良くなることを立証できるものではありません。
それどころか、ポーリングの「高容量ビタミンCが感染症とがんに効く」というオーソモレキュラー療法の始まりとなった説ですら、現在に至るまで客観的に再現性が確認されていませんし、その作用メカニズム(ビタミンCが、どの細胞の何にどのように作用した結果、感染症やがんに対する効果を示すのか)に至ってはまったく不明です

Linus Pauling(1901~1994)


たとえ歴史に名を刻んだ大科学者が主張することであっても、再現性もメカニズムも示されていないのでは、それは科学とは呼べないものです。

怪しい主張の根拠としている論文。
その論文の発表年がいつなのかを気にすることを習慣にするとよいでしょう。

 ビタミンCの抗酸化作用が正常細胞に影響を与えず、がん細胞にのみ傷害的に働くとする説があるが、仮説に過ぎず、いまだ立証されていない。

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