夢想堂新企画:一行の宝物 しおりプロジェクト④ 生きるために足掻いてみるか
皆さん、素敵な午後をお迎えになっていますでしょうか?
本日は、本屋カフェ「夢想堂」の企画: #一行のしおり に
素敵なお客様が来店してくださいました。
sanngoさんは、桐野夏生の『天使に見捨てられた夜』の中の一文を一行の宝物として教えてくださいました。
今から30年以上も前の作品だからこその渋さがあります。
現在も生きづらい世の中ではありますが、桐野夏生作品における「愛」は、母と子、女と女、男女、男と男。あるいは社会に翻弄される弱者同士など、常に「歪み」や「暗さ」をはらんでいます。
過酷な状況の中でこそ立ち上がる矛盾や痛みを伴った「愛」。
裏切りや犯罪、暴力の果てに残るただ一片の「愛」。
社会の常識や倫理を逸脱してもなお、失えない結ぶつき。そうした破滅と紙一重の愛を「崇高」という皮肉めいた言葉で突き付けてくる。

「隣人愛ね」
「世の中で一番崇高な愛だ」
血や泥や孤独にまみれながら、それでも最後に残る「救いの断片」のような「愛」なんではないだろうか。
人はしばしば、愛を男女の関係や性愛に結びつけがちです。けれど、物語の中で示された「隣人愛」という言葉は、その外側に広がる静かな地平を指し示していました。ラベルや境界を軽やかに越えていく人間同士の結びつきは、時に寂しく、しかしどこまでも誠実です。
友部秋彦、通称トモさんという「隣人」が言う「隣人愛」は新約聖書のマタイ福音書に通じるものがあります。
「汝、隣人を愛せ」
困っている人を助ける。
意見が違う人とも尊重し合う。
そのような意味合いが強いのではないかと思います。
主人公の女探偵、村野ミロがお隣さんのゲイであるトモさんをどんなに愛しても、精神的繋がりは持てる。けれど、肉体的な繋がりは望めない。
『天使に見捨てられた夜』は、男たちの欲望に抑圧された女性たちが時代を生き抜こうとした熱い物語だと思います。
この宝ものの一文を栞に挟んだ瞬間、読書は単なる物語の消費から、人生そのものの省察へと変わっていく。読み終えて本を閉じても、その言葉はなお静かに胸の奥で灯り続けて欲しいと願います。
読み終える速度が遅くなるということは、時間が奪われているのではなく、むしろ時間を取り戻しているようにも思えます。
小学生の頃の「一日一冊」の読書が疾走感や勢いの中にあったとすれば、今の読書は「立ち止まり、見つめ、咀嚼する」営みに変わった。作品と向き合う深さが増すほど、数の上では減っても、心に残る厚みは増していくのかもしれません。
桐野夏生の小説は、sanngoさんにとって、その「立ち止まる」読書にふさわしいもの。都会の闇を描きながら、その奥にある人間の脆さとしなやかさを掬い上げる。
『天使に見捨てられた夜』に描かれた「愛」は、まさにその象徴のように感じます。
人生は短く、読める本の数は限られている。だからこそ、こうした一冊に出会い、言葉の奥に潜む静かな真実を手のひらで確かめる時間こそが、最上の贅沢なのだと思います。


sanngoさん、ご来店ありがとうございました またのお越しをお待ちしております。
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無職で色無し状態だニャ~ン😭
