見出し画像

『時空郵便局 第一便』やりたいことが見つからないあなたへ——坂本龍馬からの手紙

ーーこの物語(あらすじ)についてーー

ここは、時を超えた手紙が届く場所「時空郵便局」。
迷いを抱えた者だけが辿り着き、
歴史の向こう側で筆を置いた者たちから、
人生の岐路に向けた書簡を受け取る。

あなたは今、自らの迷いを「切手」として選び、
その答えとなる一通を手にすることになる。

これは、歴史上の人物たちの言葉を通して、
現代に生きるあなたの内面に変化をもたらす
“体験型書簡シリーズ”である。


「動けんのは、志がないからじゃない。重すぎるだけぜよ。」

現代の迷い子へ贈る、龍馬の書簡



おんし、息災か。


やりたいことが見つからん」と、
まるで風の止まった海の上で途方に暮れちゅうようやな。


世の中の小利口な連中は「志を持て」などと軽々しく口にするが、わしに言わせれば、
おんしが今動けんのは、志がないからじゃない。

おんしの心の「」が重すぎて、
船が沈みかけちゅうだけぜよ。


おんしの頭の中を覗いてみれば、
そこには「世間の目」やら「誰かが決めた成功」という名の、重たいだけの砂利がぎっしり詰まっちゅう。

それはおんしの荷物じゃない、
他人の荷物だ。


そんなものを積んだまま、おんし自身の「真実の風」を捕らえられるわけがないろう。



まずはおんしの船から、
その余計な砂利を海へ叩き込め

何かしなくては」と焦る必要はない。

ただ、他人の物差しを捨て、
自分を縛る古い「藩(しきたり)」から脱藩せよ。


心が空っぽになれば、
自ずと新しい潮の流れが見えてくる。
やりたいことなんざ、後から付いてくるもんだ。


まずは、誰にも邪魔されずに世界を渡り歩けるだけの「航海術」を磨き、
己の腕一本で食っていける「強さ」を蓄えることだ。


わしが算盤を弾き、異国の銃を買い、
軍艦を操ったのは、
それが「生き残るために最も理に適っていた」からに他ならん。



おんし、死ぬこと以外はかすり傷ぜよ

自分という船を、他人の港に繋ぎ止めておくな。
まずは己を自由にせよ。

世界を広げよ。


そうして曇りなき眼で水平線を眺めたとき、
おんしが命を懸けて漕ぎ出すべき「」は、
向こうから光り輝いて現れるはずぜよ。


日本を、いや、おんし自身の人生を、今一度洗濯し候。


坂本龍馬





「……と、格好をつけたが、これでおんしの震えが止まるとは思えん。酒の勢いで、腹の底をもう少々さらけ出させてもらうぜよ。」




世間じゃ「志を持て」などと綺麗事を並べるが、
笑わせるな。
志なんて、そんな高尚で美しいもんじゃない。


わしが脱藩し、闇の中を走り回っていた頃、
何に突き動かされていたか知っちゅうか。


それは「自由」なんてキラキラしたもんじゃない。
「このまま終わってたまるか」という、
内側から燃え上がるような飢えと、
いつ背後から斬られるか分からんという、
泥臭い死の恐怖ぜよ。



わしだって、夜になれば手が震えることもあった。独り酒を煽りながら、
暗闇に刺客の影を見ては、己の小ささに吐き気がした夜は一度や二度じゃない。

おんしと同じように、「自分は何者にもなれんのではないか」と震える心を持った、
ただの人間ぜよ。


だがな、だからこそ、わしは船を漕ぎ出した。
おんしの頭の中にある「砂利」——他人の目、世間の評判、失敗への怯え。
そんなもんを抱えたまま死ぬのは、
わしに言わせれば、
生きながら腐っていくのと同じだ。

いいか、おんし。


今ここで、一つだけでいい。
おんしが後生大事に抱えちゅうその「砂利」のうち、一番重くて醜いものを、
今すぐこの海へ叩き捨ててみろ。


何から捨てる? 安定か? 見栄か?
それとも、誰かに愛されたいという甘えか?


今の世は「命を大事にせよ」と誰もが言うが、
わしに言わせれば、
志のない生など死んどるも同然ぜよ。


死を恐れるな。


むしろ、何もなさぬまま時だけが過ぎていく、
その「生」をこそ恐れよ。


わしは先に往く。

おんしの船が、砂利を捨てて軽くなり、
血の通った「狂気」を宿して波を蹴立てるのを、
水平線の向こうで待っちゅうき。



二度と、迷い子のようなツラで海を見るな。


坂本龍馬

「——水平線の向こうで待っちゅうき。」




いいなと思ったら応援しよう!