過去の恋愛が教えてくれた、もう一度自分を好きになるまでの物語丨#02 幸せだった日々
幸せだった記憶は、不思議なくらい細かいところまで覚えている。
特別な出来事より、何でもない時間のほうが、いつまでも心に残ることがある。
幸せだった記憶をたどると、いつも浮かぶのは何気ない時間だった。
付き合い始めてから、特別なことをたくさんしたわけじゃない。
高級なレストランに行ったわけでもないし、毎週旅行に行くようなカップルでもなかった。
でも、一緒に過ごす時間が好きだった。
何をするかより、誰といるか。
それだけで十分だった。
彼は照れ屋だった。
だから「好き」という言葉を何度も口にするタイプではない。
でも、その代わりに不器用な優しさをたくさん見せてくれた。
私が落ち込んでいるときは、何も言わず隣にいてくれる。
車を運転しながら、たわいもない話をして笑い合う。
そんな時間が心地よかった。
私は、少しずつ彼といることが当たり前になっていった。
今でも思い出すのは、初めてのデートの日。
待ち合わせ場所に現れた彼は、いつもより少しだけおしゃれをしていた。
普段はラフな格好しかしない人なのに、その日だけは襟のあるシャツを着ていた。
髪も少し整えている。
「頑張ったんだろうな。」
そう思うと、なんだか可愛くて笑ってしまった。
そんな私を見て、
「なんだよ。」
と少し照れくさそうに笑う彼。
そんなやり取りさえ、愛おしかった。
私は、強引なところのある彼に惹かれていた。
自分の意見をはっきり言うところ。
迷わず決めるところ。
今振り返れば少し自分勝手だったのかもしれない。
でも、当時の私は、そんな彼を頼もしく感じていた。
自分では決められないことも、
彼が「こっちにしよう」と言ってくれると安心した。
あの頃の私は、それが「好き」という気持ちなんだと思っていた。
特別な記念日じゃなくても、帰り道のドライブが好きだった。
音楽を流して、たわいもない話をする。
沈黙があっても気まずくない。
そんな時間が心地よかった。
「この時間がずっと続けばいいのに。」
何度そう思ったか分からない。
未来のことなんて考えていなかった。
ただ、その日、その時間が幸せだった。
それだけで十分だった。
だから私は、疑いもしなかった。
この幸せは、明日も続くものだと。
次回へ続く。
幸せだった記憶が、忘れられない理由になることがある
私が手放せなかったのは、彼だけではありませんでした。
一緒に笑った時間、安心できた居場所、そして恋をしていた頃の自分。
有料note 『10年忘れられなかった私が気づいた、元彼を忘れられない本当の理由』では、別れによって本当は何を失ったのかを、一つずつ整理しています。
幸せだった記憶を否定せず、過去に預けていた自分の心を取り戻したい方へ。
