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「止まれないのは、弱さじゃない|テクノ封建制が設計した現代の焦り」

「なぜ、止まれないんだろう」

そう感じたことがある人と、
一緒に考えてみたい話がある。

     ◇ ◇ ◇

最近、ある言葉に引っかかっている。

「テクノ封建制」。

ギリシャの経済学者、
ヤニス・バルファキスが、
今の世界をこう呼んでいる。

巨大テック企業は、
もはや「会社」ではなく、
デジタル空間の「領主」になっている。

そして、その下で暮らす私たちは、
「クラウド農奴」と呼ばれている。

     ◇ ◇ ◇

最初に読んだとき、
冗談だと思った。

でも、仕組みを追っていくと、
少し笑えなくなってくる。

例えば、App Store。

アプリ開発者がどれだけ売り上げても、
Appleは一定割合を自動で引いていく。

これは労働の対価ではない。

「そこを使わせてもらうための地代」だ。

中世の農民が領主に納めていた年貢と、
構造はよく似ている。

Amazonも、YouTubeも、Instagramも、
基本は同じだ。

場所を持つ側が、
そこを使う人から取り続ける。

     ◇ ◇ ◇

そして、もう一つの側面がある。

私たちは、お金を払うだけじゃない。

毎日、無償で働いている。

投稿した文章。
押した「いいね」。
検索したキーワード。
スクロールで止まった秒数。

これらすべてがデータとして集められ、
企業の価値に変わっていく。

朝起きて、
通知も来ていないのにアプリを開く。

その動きも、
ちゃんと回収されている。

     ◇ ◇ ◇

ここで、見方を変えたい。

「AIに乗り遅れたら終わり」
「副業で稼がないと終わり」
「発信しないと埋もれる」

最近よく聞く、こういう焦り。

この焦りは、
本当にあなたの中から出てきたものだろうか。

     ◇ ◇ ◇

アルゴリズムは、
人の感情を動かすように設計されている。

焦り、不安、嫉妬、承認欲求。

これらを刺激すると、
人はスマホを開く。

スマホを開けば、
データが集まり、
広告が流れ、
プラットフォームに価値が積み上がる。

つまり、

あなたの焦りは、
誰かの売上になっている。

焦っている状態そのものが、
商品になっている。

だから、

「あなたが弱いから焦る」のではない。

焦らせた方が得をする構造の中にいるから、
あなたは焦る。

     ◇ ◇ ◇

この視点を持つと、
少しだけ息ができる。

動けないのは、
怠けているからじゃない。

情報が多すぎて、
焦りを刺激する設計の中にいて、
疲れているだけだ。

SNSを開けば、

誰かが成功している。
誰かが稼いでいる。
誰かが先に進んでいる。

その景色を毎日見せられて、
「自分は遅れている」と感じない方が難しい。

     ◇ ◇ ◇

テクノ封建制の怖さは、
強制されないことだ。

剣も罰もない。

ただ、便利で、無料で、楽しい。

その三つが揃っているから、
疑う理由がない。

その中で、
時間と注意と感情を、
少しずつ差し出していく。

気づかないまま、
自分を追い立てる側に回ってしまう。

     ◇ ◇ ◇

ここから先、どうするか。

全部やめる必要はない。

ただ、一度だけ立ち止まる。

「この焦りは、誰のためのものか」

そう問いかけてみる。

たぶん、その中には、
自分のものじゃない焦りが混ざっている。

     ◇ ◇ ◇

走っている人を見て焦るとき、
走らせている側の存在を思い出す。

止まっている自分を責めそうになるとき、
止まれないように設計された場所にいると気づく。

それだけで、
焦りの一部は、
自分の手元に戻ってくる。

     ◇ ◇ ◇

止まっていたのは、
弱さじゃない。

奪われていたものが、
多すぎただけかもしれない。

その時間の中で、
まだ差し出していなかったもの。

自分の言葉で考える時間。

それが、

この構造の中で、
一番価値のあるものなのかもしれない。

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