277話 ケムルの崩壊 The Collapse of Kemul【エジプト編】波打際スケッチ Sketches of the Shoreline ~AIと創る青春物語~
その後もケムル王国 国内は混乱が続いていた。
王宮の密室で、ラガシュカイネルは
ついに、弟王子の舅だった、老大臣ゼルガリアを排除する決断を下した。

ゼルガリアは、父王アシュルカイネル時代からの重臣であり、
弟王子の後見人として王位継承決定の有力者だった男。
ラガシュカイネルにとっては、
自分の王位を脅かす邪魔な存在だった。
王命による粛清が密かに実行される。
王は近衛兵に命じ、ゼルガリアを拘束しようとする。

しかし――
ゼルガリアはすでに動いていた
彼の派閥の官僚がゼルガリアに密告
近衛兵の一部がゼルガリア側に寝返り
ゼルガリアはその夜のうちに王宮を脱出し、
自らの領地 ルガル領へと戻ってしまった。

翌朝、王宮の大広間には、一人の大臣も姿を見せない。
それどころか、王宮の官僚や兵士の姿までない。

王は初めて悟る。
自分は王宮の中でさえ孤立している・・・
・・・一人の大臣も、いや官僚までもいないとは・・・
態勢を立て直し、アメンラー王国に反撃するつもりだったが、
それどころではなく、ケムル王国すら分裂していた。
ケムル王国は、4つの領国と、父王が攻略した2つの属国がある。
そのすべてがラガシュカイネルに敵対したのだ・・・

●ハルガン領
鉄鉱山と鍛冶を独占しており鉄の武器、戦車などの
生産の中心地
「ケムル王国への武器供給停止」を宣言。
実質的な独立。
●ザルバン領
山岳兵を集め、ケムルの軍兵士はここの出身者が多く
「北方防衛連合」を名乗り始める。
王都の命令は無視。
●メルタ領
商人ギルドがアメンラー王国と貿易を開始。
経済的にケムルから離脱。
●ルガル領 ゼルガリアの領地
ゼルガリアが巫女たちと結びつき、
「新しい王の到来」を予言。
旧土着の宗教を中心に据えて宗教的独立を行っていく。

●サルカ領(属国)
穀倉地帯をもつサルカ領は、王都への食糧供給を減らし、
王都を飢えさせる作戦をとった。
●バルシャ領(属国)
商人の力が強く、経済活動の中心であったバルシャ領は、
独自通貨を発行し、
ケムル王国の財政を崩壊させていく。
ケムルの通貨は商人らが受け取らないため、
経済は混乱、価格高騰が続くことになる。

誰もいない宮廷から、自分の部屋に戻ったラガシュカイネルは、
自分についていた女官が一人もいないことに気が付いた・・・
いつも目をかけていたし、いつも優しい笑顔を見せていた女官が・・・
ひとりも・・・・

さすがのラガシュカイネルの目にも涙が光った。
声を殺して泣いた・・・・

そこまで・・・信頼されていなかったのか・・・・
父王には及ばないにせよ・・・・王の責務ははたしてきたはず・・・・
確かに・・・負けたのは事実だ・・・・

が、もう一度、再起の機会をくれてもよいではないか・・・・
ラガシュカイネルは、涙のまま剣を引き寄せた。
「もはや・・・これまでか・・・」

「父上には、お詫びせねばなるまいな・・・」
父上が大きく育てた国を・・・・崩壊させてしまった・・・・・
「父上・・・死してお詫び申し上げます・・・・」

首筋に剣を当てたまま、ふと思った・・・
「この儂を、ここまで追い詰めるとは・・・・アメンラー王国よ見事!」
「そういえば、ティルサと援軍交渉したやつがいたな・・・」
「ネフェル・・・・、ネフェル・・・何だったかな・・・」

「王妃自ら交渉に行くなど、言語道断だ・・・」
「だが・・・・」
「敵ながらあっぱれである!」
「儂をここまで追い詰めるとは・・・あっぱれである!」

「ネフェル何とか・・・・一度、お会いしたかったな・・・」
手が震え、剣が下に落ちた。

その後ろ姿を、
たった一人の官僚が見つめていた。
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