【書評】 講談・英語の歴史
高校2年生まで、私は国語の授業が
あまり好きではなかった。
今でこそ小説や古典の面白さや
その意義を理解できるが、
当時は日本人が日本語を学ぶ意味が
(漢字や語彙を習得する以外では)
分からなかったのだ。
いわんや古文など学んだところで
今後使う場面があるとも思えず、
まるで身に入らなかった。
そんな中で高校3年生になり、
教科書に載っていた
森鴎外の「舞姫」を読んで
初めて国語の教科書に真剣に向き合う。
あれは今思えばモテない思春期男子の
拗らせでしかなかったが、
エリスに恋愛とも憐憫とも
分からぬ感情を抱いて
本気で彼女のことを
考え続ける日々が続いた。
時は過ぎて私は大学に進んだのだが、
そこで第二外国語の履修を求められる。
私はあの舞姫の舞台への憧れから、
迷うことなくドイツ語を選択した。
社会人となってから
活かす場面は訪れず、
あのとき中国語を学んでいたら
もう少し実生活に役立ったであろう。
だが、時を経て
当時学んだドイツ語の基礎知識が
学びを楽しむために活きてくるのだから、
人生何がどうなるか分からぬものである。
英語は嫌い 歴史は好き
日本語は母国語として
物心つく前から使っているから
好きも嫌いもない。
ドイツ語については、
好きな作品に思いを馳せたことで
興味を持った。
しかしながら英語に関していえば、
学校の授業以外で
必要としたことがなかったし、
取り立てて興味を持つ
キッカケがなかった。
正直 リアルなコミュニケーションなら
うろ覚えの語彙とボディーランゲージで
最低限凌ぐ自信はあるからと
学びを後回しにしていたら、
いつの間にかスマホとAIで
何とでもなる時代になってしまった。
相変わらず英語そのものには
興味がなかったのだが、
一方で学生時分から
歴史を学ぶのが好きだったこともあり、
たまたま この本を見つけて
読むに至ったわけである。
大和言葉のエモさ
現代英語もままならない私だが、
一方で世界史好きが高じて
ラテン語を齧ったことがあるから
歴史的なつながりから
古い英語というものには
些か興味があった。
現代の日本語が若者たちの影響を受けて
だんだん簡略化されつつあるように、
現代英語も原初に比べると
言語的には随分と
シンプルになったらしい。
定冠詞や格変化の特徴をして
「古英語はドイツ語の1つの方言」
という著者の話は、
昔 大学でドイツ語を齧った人間としては
とても理解しやすい話である。
(肝心のドイツ語は
すっかり忘れてしまったが)
高校までは英語が
えらく難しく感じていたのに、
ドイツ語を学ぶと
いかに英語がイージーだったかと
いうことを実感したものであるが、
まさしく その感覚が蘇ってきた。
古英語は とりわけ日本人にとっては
馴染みのないものであるが、
「英語の大和言葉」という比喩を聞くと
何となく距離が近くなる気がする。
現代日本語を話す私たちにとって
大和言葉は半分以上分からない
言葉のように思えるが、
端々になんとなくニュアンスくらいは
汲み取れるような言葉が垣間見える
あの感覚だ。
同様に本書の解説を読みながら
古英語の語を見ると、
現代英語を知っていれば どことなく
分からないでもない気がしてくる。
(現代英語をさほど
マスターしてない私ですら)
そこに千年以上の時を超えて
変化してきた言葉の歴史を
感じられることが、何よりも私を
ワクワクさせてくれるのだ。
理解に苦しむ発音も
英語を学んでいて
頭を抱える要因のひとつのは、
同じ綴りでも
全く違う発音をすることだろう。
英語には
「Ghoti と書いて fish と読む」
というジョークがあるほど、
綴りに対して
発音のバリエーションが豊富である。
大抵は「こういうものだ」と
頭ごなしに押し付けられるだけで
全くもって理解ができない
(から暗記する他ない)のだが、
本書を通じて
英語が経てきた変遷をたどると
苛立ちもなくなって
納得できるというものである。
(習得できるとは言っていない)
英語学習のお供に
本書はテーマ的に、
主にノルマン・コンクエストからの
英仏史を学ぶ助けにもなる。
世界史の教科書で
表面的な出来事を学ぶよりも、
英語の歴史的エピソードを通じて
時代を追う方が理解も深まるもの。
最終章の現代の問題提起は
さすがに四半世紀近く前なので
今読むとアンマッチな部分もあるし、
筆者の思想に対しての賛否も
分かれそうではある。
だが全体を通してみれば、大変に面白く
学び多き本であることは間違いない。
特に英語学習に疲れたとき、
息抜きで読むにはピッタリだろう。
こんな人にオススメ!
・英語の歴史や語源を知りたい人
・英語学習の息抜きをしたい人
・中世の英仏史を復習したい人
こんな人には合わないかも…
・英語にも歴史にも関心がない人
お読みいただき、
ありがとうございました。
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