アンファン・テリブルの「白と黒」
少し前に↓が出ました。
トルーマン・カポーティ「草の竪琴」の村上春樹訳です。版元は新潮社で272ページ。お値段は税込2695円です。表題作以外に「最後のドアを閉めろ」「ミリアム」「夜の樹」の短編3作が収められています。
胸が苦しくなるほど瑞々しい「白カポーティ」の長編と己の存在基盤を不意な角度から揺さぶる「黒カポーティ」の短編を同じ本で味わえる。実にありがたい。ここ数年の新潮社さんは、特に名文学の翻訳へ力を入れている印象を受けます。
しかしながら職場には入っていません。申し訳ない。海外文学のエリアが極端に狭いのです。販売データや客層がという理屈はわかる。でもこういう名作が出たら、せめて売ろうという意志は示したい。
↑で試し読みをしたのですが、収録順は「草の竪琴」が最初でした。それでもいいけど、私なら「ミリアム」「夜の樹」「最後のドアを閉めろ」と続けてトリに「草の竪琴」を置きます。昔見ていた「世にも奇妙な物語」みたいに前向きな感じで締めくくりたい。最初の掴みは絶対に「ミリアム」です。
ただ、よくよく考えたら新潮文庫から出ている川本三郎訳の「夜の樹」に、3つの短編がその順番で入っていました。あえて変えたのかもしれません。そちらでは「最後のドアを閉めろ」が「最後の扉を閉めて」になっていて「夜の樹」と「最後の~」の間に「夢を売る女」を挟んでいます。
オススメの収録作をひとつ挙げるなら「銀の壜」でしょうか。「クリスマスの思い出」に劣らぬ「白カポーティ」の最高傑作です。
「草の竪琴」の文庫版も出ています。訳は大沢薫さん。
「興味あるけど2695円は」という方は、まず文庫を。それから春樹訳と読み比べても面白いはず。アンファン・テリブル(恐ろしいほど遠慮がなく、その発言によって両親や他人を困惑させる子ども)と呼ばれた著者の「白と黒」を存分にお楽しみくださいませ。
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