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ケアと共感のビジネスモデル〜共生社会の新経済圏〜(後編)|オリンピア2025

馬場拓也 近内悠太 依田真美 小山龍介

ケアと共感のビジネスモデル〜共生社会の新経済圏〜(前編)のつづきです。


自己変容とケア

小山 マサエさんとケイタくんの話にもう一度戻ると、あのタイミングで、あれがケアかどうかはわからない。ところがのちのちのマサエさんの変容ぶりを見ると、マサエさんは自己変容をしても良いと思って関わってる。というか、あそこで関わることは引きこもっていたマサエさんからしても、自己変容の結果できたことじゃないかと思うんですよね。

ところがいまの毒親の話だと、自分の信念を強固に持って、それでもって律しようとする。これは自己変容を否定してるわけですよね。 なので、自己変容に開かれて自分も変わりつつ相手に関わるときに多分、極めてケア的な効果が期待できる。一方で自分の信念でやろうとしたときには、自分が変容する可能性はゼロなので、ケアになりづらい、と言えそうですね。

近内 そうですね。確率が高まるか下がるかというと、思い込みによって関わるのは、それがケアとして花開く可能性をそうとう下げるでしょうね、きっと。  そうとう、分の悪い賭けになると思いますね。

小山 ビジネスの話で言うと、会社が壁のなかにいて、自分の既存事業にどっぷり信念を持って取り組むっていうパターンが大いにありうるわけです。 それが成功してるときにはめちゃくちゃ効率よく稼げるわけですよね。 ところがそれがもしかしたら自己変容を否定し、変わっていく機会を失ってしまうことになるんじゃないか。「自己変容」がキーワードかなと思うのは、個人の自己変容と組織にとっての自己変容の機会として、ケアや利他がきっかけになるんじゃないかと思いますが、いかがですか。

近内 自己変容できない組織は滅びてしまうんじゃないでしょうか。富士フィルムは偉いですよね。あれ、これ肌と同じメカニズムじゃんって気づいて、業態を変えた。カネボウももともと紡績会社でしたし。あれはまさに組織の自己変容ですよね。

心底うんざりする

近内 人が勇気を持って動くときって、心底うんざりすることが大事だと僕は思うんですよ。先鋭化し続けている人はまだうんざりしていないんですよね。うんざりする手前にいる。ということは、まだその状況からなにかしら利益を得てるはずで、それが損益分岐超えて、「もう本当にやだ! どうなってもいい!」と思ったら、勇気もなにも、もうそっちしか飛ぶ場所がない。

固執しないことが大事だと思います。富士フイルムは固執しなかったんですよね。たぶん内部で反対もあったんでしょうけど。

小山 依田さんもうんざりした経験ありますか?(笑)

依田 うんざりした経験っていうのはそんなにはないですけど、だけど人が変わるときのひとつのきっかけとして、「リアルに触れる」っていうことがあるかもしれないな、と思っています。私はもともと金融の出身なんです。 きれいなオフィスのなかでパソコンの前でエクセル叩くのが仕事でしたし、もちろんときどき外にも、大人の社会見学みたいな感じで出ては行くんですけれど、外ではみんなに大切にされるんですよ。こちらは金融的インパクトを与えられるので。

そういう守られた社会のなかで生きていたあとに、人口1万人以下の地域のサポートがしたいと思って現場に出ていったんですね。そこでリアルに生きてる人や、動物植物にふれることになる。自分で言うのもちょっと恥ずかしいんですけど、金融の世界で働いてるときには、天候が理由でスケジュールが変わるってことなかったんですよ。日本人だったら下手したら地震が起きてもアポ守ったりするじゃないですか。

だけど、初めて地方に出て行ったときに、稲刈りをすることになって、でもその日、雨降ったので、予定していた稲刈りができなかった。子どものころの運動会と遠足を除いたら、雨で予定を変更させられるなんて、人生で初めての経験だったんです。なんというか、自分が他のものに左右されるという経験をしたときに、自分がいかに勘違いした世界で生きていたのかと思いました。ちょっと浅いですねって思われるかもしれないんですけど、でも私にとってはそれはすごい深い経験だったんですよ。

小山 やっぱりうんざりしてたんじゃ?(笑)

依田 うんざりはしてなかったです(笑)うんざりはしてなかったんだけど、でも新しいなにかを求めてたかもしれないですよね。

振り幅が生んだ気づき

小山 ある意味、依田さんも壁のなかにいたんですね。

依田 はい。壁のなかにいたことを外に出て初めて感じました。さきほど馬場さんが、家業に戻ったときに生々しい現場に接したとおっしゃっていたんですが、そういうふうに、数字とか、表層的なものだけじゃないものに触れることが人を動かすきっかけになるんですかね。

馬場 それはあると思いますね。 自分がもといたところを偶像の世界だったとは言いたくはないんですが、 僕が表参道にいたのは、2000年から2010年ぐらいまでで、ライブドア事件があったりヒルズ族が流行ってたころです。EXILEが5人、6人から14人ぐらいに増えたときです。

近内 わかります! あのころですね!

馬場 ITバブルもありましたけど、いろんなものが動いているときでしたよね。お店に来るお客様はランボルギーニとかフェラーリとかで店に横づけして、それだけで華やかに見えましたよ。

その後、僕が家業に戻ったときに、ある入居者のおじいちゃん、イノウエさんという方がいました。イノウエさんは脳梗塞の後遺症で失語症だったんですが、挨拶しても表情が変わらなくて、なんというか、怖かったんですよね。パートさんが僕をイノウエさんに紹介してくれるんですよ。「イノウエさん、ご長男さんが帰ってきたのよ」とかって言って、僕も「よろしくお願いします」って挨拶するんだけど、イノウエさんはぜんぜん動かない。不機嫌に見えて感情がないように見えたんです。 そしたら、急にイノウエさんが、泣き始めたんです、僕を見て。なんだろうと思ったら、パートさんが「イノウエさん、好きだもんね」って言うので、ふと後ろを振り返ったらテレビで水戸黄門が流れてたんですよ。「お菊、元気でやるんだぞ。達者でな」っていう別れのシーンだったの。 それを見てイノウエさんは泣いた。

そのときに僕は、なんでかわからないけど、二つのことを思いました。ひとつは「ちゃんと感情があるし、それを表出することもできるんだ」っていうこと。もうひとつは、「あのときキラキラ見えたフェラーリに乗ってきたあの人もいつかはこういう状態になるんだ。そのときに高級ブランドはなんの役割を果たしてくれるだろうか」みたいなこと。この振り幅が、僕に「福祉の仕事は本物を追求できる仕事だ」と思わせたんだと思います。

依田 たしかに振り幅ってありますよね。私の場合も、天気関係ない世界からめちゃめちゃ関係あるところにいきましたし、その土地に根づいてる、そこで生えているものを相手にするとか、名前がわかり合っている関係性とか。

金融ってすべてを無名にしていくじゃないですか。 それと、固有の人との付き合いであるという違いは、すごく大きな振り幅ですね。金融だと、すべてをお金に還元する作業がどうしても必要なんですよね。 投資で儲かるか、お金が返ってくるか。ありとあらゆる条件をすべて数値換算して判断しなきゃいけない世界と、数値ではまったく表現できない世界という振り幅も私にはあったなと思います。

壁の外へ! D・I・Y(出ろ、行け、やれ)

小山 金融の世界では、壁を通じて会社を見ていて、壁を通った瞬間に「金額」になってこっちには見えてくる。養護施設の壁も、世間からは警戒されるような施設なんだと見えている。本当はそうじゃないのに、壁があることによって本当の姿が見えない。生で触れ合ったらそうじゃないし、お互いに感情もあるのに、それがわからない。大きなリアルな情報が遮断されている。馬場さんがご遺体に触れたあの瞬間は、壁をそっとすり抜けて向こう側の世界に生身に触れたっていうことだと思うんですよね。

ビジネスの世界には、DIYという言葉がありまして(会場笑)。一般によく知られるDIYじゃないんですけど。コニカミノルタの新規事業開発のリーダー[編集注:宮木俊明 BMIA代表理事]が言っている言葉で、D・I・Y、出ろ、行け、やれ、の頭文字をとってDIYです。このDIYは、まさに壁に守られてる場合じゃない。壁から出ろ、行け、そしてやれと。リアルに接することによって、ある信念のもとに収束していきがちな企業の論理を、そこでようやく破ることができるんだっていう、ある種の哲学的な含意のある非常に重要なキーワードのように思います。

近内 竹端寛さんという研究者の方が、「ケアというのは、『ままならないものに巻き込まれること』です。」と言われてますね。[編集注:出展:竹端 寛 准教授(福祉社会学)「ケアしケアされ、生きていく」/ 哲学者 永井玲衣さんと刊行記念対談

まさにいまおふたりがおっしゃった、天候とか生々しいものは、ままならないわけですよね。コントロールできないし。そういうものに巻き込まれるために、出て、行って、やるんでしょうね。きっとそのリアルなものに巻き込まれてしまうから。そこになにかがあるよっていうことですよね。

小山 巻き込まれた結果、自己変容が起こる、と。

近内 そうです。そんなつもりで来たんじゃないけど、巻き込まれてしまったからこれもご縁なので抗わずに粛々とそこに巻き込まれていこうか、みたいな。

信頼か警戒か

馬場 近内さんの講演で、不確実性の話をされていましたよね。僕らで言えば壁を取ったことによって不確実性が増したんですよ。不確実性=リスクだとしたら、リスクが増していく、大きくなっていくということでもある。 このとき、地域を信頼しようと考えていくか、地域を不審に思うか。僕らは常に問われているんですよ。 

オープンにすればするほど、刃物が入ってるバッグを持ったおじさんが入ってくる可能性が高まるかもしれない。だけれども、そのおじさんをまずは信頼の軸で見ていこうということをやっていかないと。保安検査場みたいに全部ベルトコンベアに乗せて、X線でチェックしなきゃならないわけじゃないですか。さきほど、信頼と安心のお話がありましたが、安心を求めれば求めるほど不確実性を減らすことができる。 リスクも減らすことができる。どんどんどんどんプロテクトしていくようになっていく。これは壁の話とか安全面の話とかじゃなくてビジネスに置き換えられると思うんです。さっきの変容の話もそうですけど。いまいろんな話をしていますが、1本の線の上にいるんだなと改めて感じています。

近内 信頼に関することで言うと、『安心社会から信頼社会へ:日本型システムの行方』(山岸俊男著、中央公論新社、1999年)という本があります。日本は、安心社会から信頼社会へ移行するべきだという内容なんです。なぜかというと、安心社会は、無駄なコストがめちゃくちゃかかるから。著者の方が大学の先生なんですが、大学側の事務が、教授を信じていないから「出張行ったら全部領収書を出す」「研究費はすべて領収書が必要」という仕組みになる。教授を信頼してない大学側が安心するためですね。教授側も事務側もすごいコストですよね。

でも「この人が言ってるからそうなんだろう」と信頼できれば、「◯◯円お願いします」で終わる話ですよね。つまり安心を用意すればしようとすればするほど、どんどんどんどん無駄なコストが増えていく。そういう無駄なコストをなくすために信頼を基軸に置いた社会を考えるべきだっていうことなんです。

まさに、壁をつくればつくるほど、経済的なコストもかかる。そのうえ、僕らにとっては、信頼するトレーニングができなくなっていくんですよ。

馬場 そうですね。

近内 すべてが保安検査場になったら、ディストピアですね。ビジネス以前の大前提としても、とんでもないやばい社会だと思います。いったい、なんのために安心したかったんだっけっていう話ですよね。だれかとともに生きていくために安心が欲しかっただけであって、だれとも一緒に生きていけないレベルまで壁が出来上がってるって、本末転倒な気はしますね。

壁を壊す ー 信頼社会への第一歩

小山 安心をめざすと、遊びとか挑戦ができなくなるわけですよね。何が起こるかわからないから。 イノベーションもやらないほうが安心だ、と。一方で、もちろんコンプライアンスは重要で、今回フジテレビの件もコンプライアンスがこれだけ高まったからこそ出てきたものです。

企業って、社員のことぜんぜん信用してないですよね。なにをするにも書類が必要で、つねに疑いの目で見られている。当然、そのコストが上がってくるんですけど、いちばんのコストは、そういう会社のなかでは挑戦ができない、遊びができないってことですよね。 イノベーションを起こそう、挑戦しようとしても、それが禁止されているとか、疑いの目をかけられて石橋を叩いて壊してしまうという状態が起こっている。

一方で、「自由にやらせたらお前らはなにをしでかすかわからない」というマネジメント側の気持ちもわかるんです。何百万ときには何千万、億単位の事業費をつけて失敗したときに、結局、経営者が責任を取るんだから少しは安心させろよっていう気持ちもよくわかります。

じゃあどんな解決策があるかというと、経営者と従業員という一対一じゃなくて、会社の壁をなくして、外から見えるようにして、社員が外からの審判を受ける。 さっきのDIYですよね。 外に出て、お客さんが欲しいって言ってくれたらお金をつけよう。それについては信用できる。というように、コミュニティが関与しないと、信頼社会は成り立たない。一対一では成り立たないのかなっていう気がしました。

依田 当たり前の答えで申し訳ないんですけど、ビジネスの場合はバランスが大事ですよね。ある部分ではしっかり守って安心を確保しなければならない。けれども、それだけだとやっぱりつまらないわけですよね。 ただ守ってるだけではつまらないし発展もしない。

いま、新入社員が三年で三割辞める時代ですから、みんながここで働いててよかったなって思える、わくわくするようななにかがないといけないわけです。そのためには信頼されて、なにかにチャレンジできるような場の設定もしなきゃいけない。

業種や会社ごとに違うとは思うんですが、信頼を取る場と、安心を優先させる場のバランスを経営層が自覚しなくてはならないですよね。

小山 今日、馬場さんのところの職員の方も会場に来ていただいているんですが、馬場さんがどんなマネジメントされているのか気になります。

馬場 僕のマネジメントは、どうなんでしょうね。ちょっと聞いてみましょうか。

職員 私はちょっと立場が変わったっていう、経緯もあるんですが。

馬場 最初はコロッケ揚げてたんだけど、いまは、春日台センターセンターのセンター長です。

センター長 いちばん感じるのは「信頼」です。信頼できるし、信頼もしていただいてるんだなって感じていて、他の職員のことを話すときも彼らのことを信頼しているのを感じます。ともすれば現場にいるとついつい批判的になっちゃうことがあるんですが、でも理事長はなにかを信じようとするんだなっていうのをすごく感じます。 

馬場 なんかいい話になってしまった……(笑)。その隣りにいるのが、僕の弟で、春日台センターセンターのグループホーム、認知症の高齢者施設の管理者をしています。

馬場(弟) 巻き込むということで言うと、このイベントもそうです。「一緒に行こう」「はい」みたいな。 その巻き込み力というのがすごい強い。 でもそれは嫌な感じではないんですよね。

馬場 これ(弟と公衆の面前でマイクを通じて話す)恥ずかしいものですね(笑) あ、でも、よかった。

馬場(弟) グイグイ巻き込んでくタイプの人間だと思っています。

馬場 巻き込むって、よく言われるんですよね。 僕は巻き込んでる意識がまったくないんですよ。 なんでだろうなって考えたことがあるんですけど、たぶん、自分ひとりの力じゃたかが知れてるっていう感覚に近くて。俺がいくらやってもできないのを最初からわかっちゃってるというか、ある種のポジティブな諦めなんですよ。「俺がやってやる」みたいな意識が強いように外から見えるらしいんだけど、どっちかというとそうじゃなくて、「ちょっと一緒に来てくれない?」とか、「(今日のことも)近内さんの話、絶対聞いた方がいいと思うよ」とか、匂わせるっていうんですかね、それは昔からです。 僕は自信があるようで自信がないのかもわからないし、自分をちょっと疑ってるところもある。 ネガティブに疑うというよりポジティブに疑ってて「それって本当か?」とか「これって単なる俺の好みじゃない?」とか。やっぱりみんなに相談したいというスタンスが強いかもしれないですね。 その結果、巻き込んでるっていう形になるのかな。左折するときに巻き込み確認しないで、気づいたらドーンとぶつかってるっていう状態はけっこう多いと思う。 私はそんなつもりなくただ曲がってるだけなのに、「ドーン」ってぶつかって、なんだなんだ、じゃあ一緒に行こうか、みたいな(笑)

近内 今日は、馬場さんの具体例の講演が先で、僕がその後にトークできてよかったです。あれも僕は巻き込まれたんですね?(笑) 馬場さんのスライドの話に合わせるように僕の話をカスタマイズできるっていうふうに、巻き込んでいただいた。

馬場 僕は近内さんの最初の本(『世界は贈与でできている』)は読了して、これ(『利他・ケア・傷の倫理学』)はまだ全部読み切れてないんですけど、すごくシンパシーを勝手に感じる人がいっぱいいると思うんです。僕もそのひとりで、本当にすべてのテーマがここに凝縮されてるなと思いました。マルセル・モースも読みましたし(理解不能な部分もあったりしましたが)、そんななかで出てきた本が『世界は贈与でできている』だったんですよ。

今日のこの話も、依田さんから最初にオファーをもらったとき、

依田 「近内さん、わかります?」って聞いたら、即答で「わかります!」って。

近内 僕のあずかり知らぬところで僕がめちゃくちゃモテモテだったんですね。

依田 そうです、そうです。

馬場 最初、順番が逆のほうがいいんじゃないかって話もあったんですよね。最初に近内さんの話を聞いてから僕の実際の絵をはめていくようなやり方だとオーディエンス側が楽しいんじゃないかなと思ったり。 でも、僕が絵を見せて、その後に近内さんがテキストで中身を解説していったっていうことで、今日はやっぱり参加して良かったと思いますよ、みなさん、持ち帰るもの大きいですよ。

近内 このコラボレーションがこの順番で聞けたのは大きかったですよね。

小山 馬場さんが、自分を疑っているというのは、つまり自己変容に開かれているということなんですよね。「変わってOK」って思ってる。「これであいつを変えてやろう」じゃなくて、「一緒に変わりに行こう」という関わりが巻き込むときの前提条件なのかなと思いました。 そうじゃない巻き込みは事故になる。開かれて自分も変わるっていうのがケアになる。 そこが事故とケアのわかれ道なのかなっていう感じがしました。

では、時間もきましたので、最後に一言ずついただきたいと思います。

重要情報とまとめ

依田 絶対的に今日この話ができてすごく良かったなと思ってます。 安全と信頼をどうミックスするか、たとえば企業のなかで信頼への第一歩をどんなふうにつくっていったらいいのか、職員さんと馬場さんのやり取りを見ながら見えてきたような気もしています。「巻き込む」それは自分を預けるということでもあるし、同時に「巻き込まれる」、声をかけられるのは、自分の可能性を信じてくれていることにもなる。さきほど馬場さんの弟さんもおっしゃってましたけど、うれしいことなんですよね。

日々の忙しい業務のなかで、巻き込み、巻き込まれが起こるような、余力というのか、余白というのか、そういうものがなくなっているなかで、「一緒にやっていかないか」って声をかけてもらえることは、新しい舞台を用意してもらえるということで、そのことは声をかけられた人にとってもうれしいことで、人は巻き込まれたがっているんだと思うんですよ。

小さいことかもしれないけど、そこから始められる、と思いました。これが今日私が受け取ったギフトだと思っています。

そして最後にすごく重要な情報を。春日台センターセンターのコロッケ、めちゃくちゃおいしいんですよ!(笑)

馬場 ありがとうございます!

依田 座れる縁側もありますし、ビールも飲めますし、すごく素敵なところなので、ぜひみなさんチャンスがあったらセンターセンターに行ってください。

馬場 私も重要情報から(笑)。3月22日に3周年記念イベントが開催されます。 11時から16時まで。私と大阪の木村石鹸の木村さん、高円寺の小杉湯の平松くん、建築家の金野千恵とトークがあったり、千尋さんという私も大ファンで、すごい綺麗な歌声の人のライブをやったりします。じいちゃんばあちゃんと、障害のある人たちと地域の人たちと一緒にやるイベントです。マルシェもあります。ぜひよろしくお願いします。

ビジネスとケアの親和性でいうと、近内さんもおっしゃってましたが、だれもがケアなくしては生きられない生命体になってしまった、ということを実際に働き始めて、本当にそうだと自信を持って言えます。 広義でいうと、環境にケアされてたりもしますよね。雨の日はなんかつまらなかったり、晴れの日は気持ち良かったり。僕らは外的なものに、それこそアフォーダンスされているんだと思います。

ちょっと関係なくなっちゃうかもしれないけど、さっき毒親の話もありましたが、僕、保育士によく言うんです。「保育士の理想とする子どもには育ちませんよ。ただし、保育所のようにはなるよ」って。保護者会でも言うんですよ。「保護者の理想とする子どもには育ちません。だけど、ママのようにはなるよ」って。それが何年か続いて、あるときふと、”保護者”を”経営者”に置き換えてみたんです。「 経営者の理想とする社員には育ちませんよ。 ただし、経営者のようにはなるよ」っていう言葉が天から降ってきたんですよ。僕は保育者のことを言っていたようで、結局は僕がどうあるかということで、職員たちがどういう視点を獲得できるのかが決まってくるんだろうなって感じました。これは、ビジネスの場面でもチームをどうつくるのかということにつながるような気がしています。

そんな感じでうちの社会福祉法人愛川舜寿会をやっております。ぜひ揚げたてのコロッケを食べに来てください。ゆっくりそのあたりのお話をできるのを楽しみにしております。 今日はありがとうございました。

近内 Slidoでいただいた質問に最後に答えたいと思います。「日本には社会がないのだとすると、企業が社会課題に着目しがちなことに違和感を持ちます」というコメントをいただきました。エンタープライズは西洋由来のものだと思うので、われわれ日本人の身体とはずれています。株主総会でも日本人は空気を読んで、全会一致のためにグダグダすり合わせが必要なのは、もともと稲作をしていたからだという説があるらしいです。田んぼの水路って、みんなの共有財産ですよね。だから稲作をするときに、水の分配からなにからみんなで合意しないとやっていけなかった。だから、擦り合わせとかっていうウェットなベタとした共同体になったという話があります。

日本の企業のトップも、寄付やチャリティーで社会課題に取り組んでる“風”に、企業“然”とするために、エンタープライズ“然”とするために必要だというだけであって、おそらくわれわれのマインドとしては「いかに身内にいいことが起こるか」のほうをどうしても大事にしてしまっていると思います。

今日のお話は「明日から使える」という話ではありませんが、僕は、感覚的に5年後ぐらいには、ケアや利他は、ビジネスの前提としてのキーワードになると感じています。そこにしかビジネスがまともに機能する道が残ってない感覚があります。5年後、10年後に今日の話が”当たり前”になって、そういうひとたちが日の目を見る、ちゃんと花開く。そういうことがまもなく始まると思います。 ぜひみなさんも、5年後に咲けばいいなと思いながら種を植えていっていただけたらと思います。今日は僕自身非常に楽しかったです。

小山 ありがとうございました。(完)


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