ターゲティングとは『選ぶ勇気』のことである
マーケティング概論2
ターゲティングとは『選ぶ勇気』のことである
前回はブランディングが「約束」であることを説明した。
その約束を誰に対して行うかが、マーケティングの次のステップ、「ターゲティング」である。マーケティングにおいてターゲティングほど誤解されやすく、そして企業がためらいを感じる分野も珍しい。
多くの経営者が、「ターゲットを絞りすぎると市場が狭くなる」と考えがちだ。たしかに市場規模だけを見れば、広ければ広いほど良さそうに感じる。だが、実際はそう単純な話ではない。なぜなら、誰にでも受け入れられる商品というのは、大抵の場合、「誰にとっても特別ではない商品」になるからだ。
企業が本当に成功したければ、「選ぶ勇気」が必要になる。
つまり、「自分たちの顧客は誰なのか」を明確にし、それ以外の市場を思い切って捨てる覚悟を持つことだ。この勇気こそが、マーケティング戦略の成功を左右する。
アップルを見てみれば分かりやすい。iPhoneという製品は、当初からすべての人に向けられていたわけではない。アップルはテクノロジーに敏感で、新しいライフスタイルを求める一部の人々にターゲットを絞り、その人々が熱狂的なファンになることによって、結果的に大衆にも浸透した。
ターゲティングのもう一つの誤解は、「年齢」や「性別」など単純な属性だけでターゲットを絞り込もうとすることだ。だが現実の消費者はもっと複雑で、「価値観」や「ライフスタイル」に基づいて選択を行っている。たとえば、自動車を選ぶ際、多くの人々が単純に年齢や収入で選ぶわけではなく、「自分がどう見られたいか」「どんな人生を送りたいか」という欲求に基づいて選ぶのと同じだ。
こうした価値観やライフスタイルを深く理解することが重要だ。自社の商品やサービスがターゲットの人生にどのような影響を与えるのか、その文脈を考えることで初めて、顧客の心に届くメッセージをつくることができる。
ターゲティングはリスクを伴うが、だからこそ競争優位性が生まれる。誰もが手を出しやすい無難な市場にはすでに多くの競合がいる。だが、自分たちが真に理解できる市場を見つけ、深く入り込むことができれば、そこで圧倒的な存在感を発揮することが可能になる。
マーケティングにおける「ターゲティング」とは、単に市場を選ぶことではない。それは、「自分たちが誰とともに生きるのか」を選択する、企業の生き様そのものなのだ。
次回は、この選んだターゲットにどのようにコミュニケーションを取るべきか、その具体的な方法を掘り下げていきたい。
※本稿のマーケティン概論は、REACH REACH『Bootcamp』での講義の一部を再編したものです。
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